訓練編 / 反省会
次は『赤城改強襲』と言ったな。あれは嘘だ!!
・・・・・あと数話を挟んでお届けする予定です
***** ドイツ航空母艦・グラーフ・ツェッペリン *****
***** 時間は やや遡って・・降伏直後の飛行甲板上 *****
まだかな・・・・・あっ、あたし セセラギよ。
今、ドイツの船の上で トドロキが来るの 待ってんだけどさあ
遅いわね・・・
あーそうそう 最初から説明しないとダメね
拓に『ドイツ空母の負傷者を救護して 艦の応急修理を行って・・・』とか言われて
何事も経験だからと 試しに私が指揮を執ってみろと言われたのよね
で、今 船が左に傾いてるから 傾きを治して・・・要するに私が重りとして
船の右舷側に立ってる訳よ。ドラゴンの姿で。
まだ元気なドイツ軍の兵隊さんが『アワワ・・』てな感じで こっちを見てるわ
お姉さん達が治してあげるから アンタ達は大人しく見てなさいな
んで、私一人の体重じゃ足りなくってさ。どのみち修理もあるんだから
トドロキを呼んでんのよ。
あの子 4人の中で一番大きいのよね。だから重しにもピッタリのはずよ
うん きっとそうよ。
あっ来た来た。もう、遅いわよ
バサッ バサッ・・・
トドロキのヤツの巨体が 艦橋のある右舷側に ゆっくり降りる
バサッ・・・・・ミシッ・・ギギギッ
完全に着地。違った 着艦して 翼を休める
ギーーーッ・ギギギギギギギッ
左に傾いていた艦が 徐々に右に傾き始めた
・・・ギッ、ギッ
あら もう止まっちゃったかしら? もうちょっとなのにね。
そしたら トドロキが
バサッ バサッ バサッ
飛び立つためじゃなくて 下向きに力が掛かるように 羽ばたき始めたのよ
艦内に入り込んだ海水が 徐々に移動を始めたのか 艦の傾斜が再開されたわ
・・・・・そろそろいいわね。
「海よ 凍れっ!!」
ビキッ・・ビキッ・・ビキキキッ
私の魔力で ドイツ艦の真下に 大量の氷を作り始めたの
昔と違って 今の私なら 数十万トン程度の氷なんて 造作も無いのよね
ビキッビキッビキッ・・・
そろそろ いいかな
私は甲板の上を 歩いて 左舷側に行って そこから海面に飛び降りて
巨大な氷塊の上に降り立ったの
うん これで氷塊が造りやすくなったわ
徐々にドイツ艦よりも大きくなってきて
ドイツ艦の艦底部・・・って言うの?
艦底部まで見える状態になって、 もう完全に水上に出たわね
浸水したところから 今は逆に 海水が『ドバーーッ』てな感じで出て来てるわ
「トドロキ。おいで」
「ん」
念話でトドロキを呼ぶ
降りてきたところで
「どてっぱら切っちゃって 人の出入りがしやすいようにしてね」
「ん」
そう言われて 人の姿になって 愛用の剣を 口の中から取り出し
キン キン キン キン・・・・・
傍から見てると 剣で 鉄板を撫でているようにしか見えないけど・・・
キン・・・キン・・・ スチャッ パチン
剣を鞘に戻した瞬間。
ギギギッ・・・ギーー ドシャーーン
綺麗に2メートル四方の鉄板が切り抜かれて
穴が 船体の数カ所に開いたのよ。
トドロキの剣の切れ味、いつ見ても見事よね
鉄板 元の場所に はめ込んだら元通りになりそうなくらい ピッタリはまりそうよね
あっそうそう そんな事考えてる場合じゃないわ
私も 人の姿に戻してっと
ちょっと離れたところに居る 駆逐艦に向かって
「ねーーアンタ達、ケガ人運び出してーーーっ」
聞こえたかな?
ややあって 船の上が 騒がしくなってきたから ちゃんと聞こえたみたいね
今度は赤城改に向かって
「エルフさん達 ケガ人の治療お願いねーーーっ」
こちらは ぽつりぽつりと 浮遊魔法を使って エルフさん達が集まり始める
お次は・・・と
ドイツ艦に向かって
「あんた達も手伝いなさい。逃げたり反抗したりしたら分かってるわよね?」
みな一様に コクコクと頷く。
よろしい。
ポンポン・・・
誰かが私の肩を叩く
「ん? なに トドロキどうしたの?」
「お腹減った」
人間の姿だと 全く太る様子の無いトドロキが お腹を摩りながら言う
「赤城改の食堂に行って食べて来なさい。あっ 自重するのよ」
「ん」
またドラゴンの姿になって 空を飛んで赤城改に向かって飛び始めたわ
途中、浮遊しているエルフさん達に襲い掛かろうと 魔獣が飛び込んで来た
『あっヤバイ』
そう思ったけど
バクッ・・・
喰われたのはエルフさん達じゃなくて魔獣の方
デカイ図体に似合わず すばしっこいのよね。 トドロキは
さて、私もエルフさん達や帝国軍人さん達を守るためにドラゴン化して
私も何匹が食っちゃいましょう
飛行型の魔獣って 身が少なくて あんまり美味しくはないのよねぇ・・・
私も あとで口直しにデザートでも食べに行こうかしら
・・・・・そういや ドイツの連中は?
ドイツ艦の甲板を見ると
ドイツの兵隊さん達が ロープやら縄梯子やら使って降りてくる
なんだか みんな私の方を見て青い顔してるけど どっか悪いのかしら?
***** 赤城改・会議室 *****
「ほう こりゃ凄い」
儂、山本五十六は『もにたー』と呼ばれる額ブチのようなソレが
数個並んでいる部屋で それを見て感心していた
まだ工事中とかで 1台しか使えないが 艦内や艦外、
遠くの景色を映し出す事が出来る機械を 儂は覗き込んで
艦外で作業している ドラゴン達の様子を見ておったのだ
「いやはや便利だね 宇垣君 黒島君」
「はっ」
「はい、しかも方向を変えたり 近くに寄せたりと 言う事がありませんな」
先ほどから黒島君は 机上にある小さな箱にある 小さな突起を
右に左に 上に下にと動かして それに合わせて枠の中の風景が上下左右にズレる様を
楽しんでいるようだ
別の突起を動かすと 景色が近くに寄ったり離れたりと・・・・・
幕僚たちからも『おおっ』と声が上がる
いかんいかん いつまでも見ておる場合じゃない。
「・・・さて、ワシらも仕事に戻るか」
「いやはや つい見惚れてしまいましたな」
「はっはっは 儂も見惚れておったから同罪だな」
そう言って宇垣君の肩を ポンポンと叩いた
「では会議を始めるとしよう・・・・・と、言っても座るところも無いか」
まだ構造材が剥き出しの 電気系の工事が ある程度進んだだけのその部屋は
本来あるはずの調度品が まだ無いのだ
厳密に言えば この赤城改はまだ 艤装中なんだ
それを無理矢理 艤装中の岸壁から離岸させ
強引に公試運転に持って行っている訳だから
本艦は まだ未完成なのだ
魔法やら オーバーテクノロジーがあるとは言え
考えてみれば これで良く勝てたものだと 感心するやら呆れるやらだ
そんな状態であるから この部屋のテーブルも椅子も正式な物はまだ無く
折り畳み式の 長テーブルと 折り畳み式の椅子が 部屋の隅に
艦の傾斜で あちこち動かないように 縛られ、積まれている
「おい 従卒の子らは?」
身の回りの世話を焼いてくれる 従兵の若い子らが見当たらないようだ
宇垣君が声を上げた
「はっ、茶を汲みに行っているようです。」とは 幕僚の一人
「それにしては遅いな」
「はい、なにぶん慣れない艦内で 大和・武蔵よりも広い艦内ですから
最悪 迷子になっておる可能性もあるかと・・・」
さすがは帝国海軍一、いや 世界一大きな巨艦だ
そう思ったら笑いを堪え切れなくなって
「はっはっはっ」
「長官?」
「いや すまんすまん
この艦が いかに巨大で そして未完成であるかという証拠じゃないか。
・・・それよりもだ。その調子では お茶も持ってくる間に
冷めてしまうかもしれんから 儂らでテーブルを作ってしまおう
そうすれば 多少は暖かい茶が飲めるかもしれん」
そう言って 儂が畳んである長テーブルへ近づいて行くと
皆も トボトボと付いてきた
儂が長テーブルの一方に手を掛けると 宇垣君がもう一方を持ち上げるべく手を添える
「長官、なにも長官自ら そのような雑用をなさらなくても良いのでは?」
おやおや 仕事をやり掛けといて そんな事言うのかい
「なーに 儂らはこれから どの部隊から戦力を引き抜いて来るかと言う
難問に挑まなくてはならんのだ。
だから テーブル一つくらいで 時間を浪費しては いかんのだ」
そう言い切って 儂は長テーブルを持ち上げた
「はっ、・・・では 上座にあたる あちらへ置くとしましょうか」
ようやく納得してくれたらしい
先の戦いでの報告を聞く限り、相手の物量・練度とも不足していたから
大した被害も出さずに 勝てたと思った方が良いだろう
これがアメリカ相手に物量で押されようモノなら・・・・
撃沈は されないにしても 相当手を焼くだろう
それではまた講和の道が遠のいてしまう
だから訓練生を補充なんて悠長な事は 言ってられない
最前線からエース級を引き抜いて来る必要がある
当然、反対にも会うだろうし 恨みを買ったりするだろう・・・
下手すると 後ろから刺されるかもしれんな
次は指くらいで済むだろうか?
日本海海戦のおり失った 左手の人差指と中指を見て そんな思いに至った
***** イギリス某所・魔法組合・組合長室 *****
「で? チャーチルの赤ら顔は 儂らにやれと?」
「此度の依頼は 情報部からのようですが
どうやら女王陛下の後押しもあるようです」
「ふむう・・・」
取り合えず 紅茶を飲む
儂は組合長じゃ。何だか久しぶりじゃのう
今、中年男から 依頼事を聞いておったのじゃが
・・・いや 今居る中年男は 先代・中年男性の息子じゃからな。
決して不老不死の類じゃないぞい。
儂か? それはおいおい説明しよう。
話が逸れたの。
中年男の話によるとじゃな
政府の奴らが 儂らに例の巨大空母を調べて来いと 言うのじゃよ
確かに いかに凄腕の諜報員でも 魔法界相手には いささか荷が重いとみえる
それでこちらに お鉢が回ってきたようじゃ
しかしじゃ。儂らは政府お抱えの機関なんかじゃないんじゃよ。
「で、どこまで調べて欲しいと?」
「実戦に耐えうる状態か?
魔法界との親密度?
そもそもそんな大きさなのか?
同じような物は造れそうか?
・・・などなど です」
「・・・簡単に言ってくれる」
儂はまた 紅茶を飲んだ。
「で、報酬は何と?」
「それなんですが、例の物の捜索について助力する・・・と。」
『助力』か。『協力』とかではないな
解釈の仕方では どうとでも 取れそうじゃの
儂は紅茶を飲み干した
「調査内容の結果次第と言ったところか。分かった あの方に協力を仰ぐとしよう」
「御意」
中年男は 先方に伝えるためか 部屋を出て行った
さてと。
儂も出掛けるとしようかの
と言っても 部屋の片隅にある転移陣を使うだけじゃがな
儂は転移陣の中に入り、術式を発動させた
「転移!! 秘密の森」
***** イギリス某所・秘密の森 *****
やれやれ、ここへ来るのも 久しぶりじゃわい
儂が来たのは 人里から 離れた・・・いや、
人が立ちる事を許さない場所にある 誰も知らない・・・一部の者しか知らない
秘密の秘密の森の 巨大な洞窟の前だ
さて、まだちゃんと生きておるかの
「おーーーい 赤いのーーー。まだ生きておるかのーーーう」
返事が無い・・・・・
「まさか 屍になって・・・」
しかし 返事の代わりに
ズシーーン・・・ズシーーン・・・ズシーーン
巨大な何かが 地面を踏み締める音が 響いた
そして大きな影が 洞窟から現れた
「勝手に殺すな。我はまだ生きて居るぞ」
昔は見事な深みのある赤い色だったのにな。
今は だいぶ色が褪せてきた 体表を覆うウロコが
時の流れを感じさせる
「ほう まだ長生きしそうですな。レッドドラゴン殿」
そう 儂の目の前に現れたのは 巨大なドラゴンの一体。レッドドラゴンだ
とはいえ、それなりに高齢だ
「お主もまだまだ お迎えは来そうにないな。靴職人殿」
「はっはっはっ。また懐かしいですな」
儂は 7~800年前くらいの事を ほんの少しだけ思い出していた
当なろう小説は フィクションです。
実在する個人・大体等とは一切関係が御座いません
今後 連載ペースは不安定になるかとは思いますが 今後もご愛読頂ければと思います
次回は『ヴァヴェル・ドラゴン(仮)』の予定です




