訓練編 / 信濃
間が空いて申し訳ありませんでした
***** 航空母艦・赤城改 飛行甲板 *****
「総員敬礼」
やあ 秋葉尾 拓だよ
今、主だった面々を飛行甲板に集めて 司令部の面々を迎えている
建造中に何度か見学に来ていたけど やはり航行している状態ともなれば
居てもたっても いられなかったんだろうね
こうして 幕僚のお歴々一同様で 見学・・・と 言ったところか
「秋葉尾君 艦長代理 ご苦労様」
山本長官の開口一番 そう言われてしまった
ええとぉ・・・僕は 設計者の一人で 艤装責任者で
・・・あれ 艦長の要件を満たしてるとか?
それらの疑問は 取り合えず脇に置いておいて
「はっ 恐縮です」
敬礼で返す
本来なら特務大尉程度の身分では 司令部の面々などは雲の上の存在なんだろう
しかし 僕とシルちゃん達の 特殊な立場が 司令部との関係を密接な物にしている
続いて 宇垣参謀長が前に出てきた
ぴしっと 敬礼する
「忙しいだろうけど お邪魔させて貰うよ」
「はい 隅から隅まで ご覧ください」
この人は 情には厚いが 人見知りするタイプだと僕は分析する
差し当り 艦内を気が済むまで見て貰おうかな
次に 黒島先任参謀が
「出来上がったと聞いて 飛んで来たよ。よろしく頼む」
「はい 期待以上の出来栄えを お約束します」
「ははは そいつは 楽しみだ」
そう言って 肩をバンバン叩かれた
結構痛いな。
この人は 頭は良いかもしれないけど 後に特攻兵器に関わっているから
どこまで信用した物か・・・・・
そう考えていると 陸軍の軍服を着た人物が ツカツカと前に出てきた
「ほう 貴様が未来から来たという 少年か」
『少年』は いいとして 何と言うか・・・けんか腰?
この人が誰かと言うのは見当がついているけど
ちょっと カチンと来たので あえて聞いてみた
「失礼ですが どちら様で?」
「ん? そうか 名乗っていなかったな。俺は 辻 正信
陸軍中佐だ」
辻 正信。
大日本帝国陸軍内に置いて フットワークが軽く、
だけど 独断専行や命令改ざんなど それなりに悪名高い人のようだな
ちょっと からかってみようかな
「これは御高名な中佐殿。フィリピンやニューギニアの方は大丈夫なんですか?」
この人は この時期、南の島をウロチョロしている はずなんだけど・・・
「・・・貴様 何故それを。
・・・ほう・・・それが未来からもたらされた情報と言う事か」
意外と頭は柔軟なようだね
辻中佐は顔を近づけて来て
「お・れ・は・な。
貴様のところに預けてある あきつ丸の改装作業の進捗を見に来たのだ
俺は暇ではないのだ さっさと案内しろっ」
あきつ丸
これは大日本帝国陸軍が保有する 空母としての機能と
ドックを有し 揚陸艦としての機能を持った
21世紀で言うところの強襲揚陸艦なんだ
ただ、そのままだと 水中聴音機の故障が多かったり
最高速力が21ノットだったりと ちょっと遅かったりしたりと
もうちょっと改良したいので ドワーフ村のドックに入渠している
これは ドワーフ村の警備を帝国陸軍に担ってもらっているお礼と
海軍にばかり あれやこれやと供出しているので やきもちを焼かないようにと言う
意味もある
それを わざわざ辻中佐がね・・・・
別の狙いでもあるのか?
しかし 中佐の都合ばかりを主張されても こちらも困る訳で
「そちらへは 横須賀へ寄った後に行きますので
1日・2日ほどお待ち頂けませんか」
「俺は陸軍の名代だ。俺の頼みが聞けんと言うのか貴様っ!」
頼みと言う名の命令か?
陸軍の名代と言うのも 職権の乱用っぽいなぁ
「無理な命令は訊きかねます」
「キサマ~」
みかねたのか 山本長官が 割って入ってくる
「二人とも 辞めたまえ。辻中佐、大人げないとは思わんかね」
その言葉に辻中佐は ふてぶてしくも
「小官は 軍司令部の意向で動いているだけであります
その際、迅速に行動できるよう 特務大尉にお願いしているだけであります」
ぬけぬけと・・・僕には 虎の威を借る狐にしか思えないけどね
これには長官も ため息をつく
「仕方ない、おーい あれ持ってきて」
そう言って 幕僚の一人が なにやら軍服を持って来た
袖章を見ると『大佐』だった。もしかして?
「秋葉尾 拓・特務大尉。貴官を現時刻を持って 大日本帝国海軍・大佐に任命し
同時に 航空母艦・赤城改 艦長に 正式に任命する
これは新しい軍服だ。あとで着替えておくように」
「なっ!」
これには辻中佐も 顎が外れんばかりに 口をあんぐりと開いている
ていうか 僕も 口をあんぐりしたい心境・・・
いっぺんに3階級昇進って・・・・・
いや、問題は そこじゃなくて
艦長なり副長なり 探してくれる手筈だったんじゃ・・・・
「なお、貴官から申請のあった 艦長および副長の手配は 残念ながら
なり手が居なかった。
『必ず連れてくる』と豪語した手前 大変心苦しいが
誰に聞いても 艦の規模・装備を聞いた途端、誰も首を縦に振ってくれなかったよ」
宇垣参謀長が補足説明を入れてくる
「既存の設備・装備と かけ離れてくる関係上、やはり適任者は秋葉尾君だけ
・・・という結論に達した。
そして戦艦などの艦長には 大佐が当たる事になっているので 異例ではあるが
急遽 大佐への就任になってしまったのだよ」
次いで また長官が
「戦艦・長門の10倍を超える規模と 辻君のような輩の登場を考えると
いっそ 少将でも良かったんじゃないかと 儂は思うね」
と、中佐の傷をさらにエグる
確かに準備不足とはいえ この艦のポテンシャルを知れば
貴下に加えたいと画策する士官・将官・あるいは政治家も出てくるかもしれない
その際、階級の低さを盾に取られると 色々とマズイよな
辻中佐の方と見てみると
苦虫を噛み潰したような顔をして 視線を逸らしている
邪な考えが おありだったんですね。
「という訳で 近々少将に・・・秋葉尾君 聞いてるかい?」
僕は 降りかかる責任と先行きの困難さを想像して
全身の毛が逆立っていた
***** 翌日/東京から南へ140km 千葉県沖海上・赤城改艦橋 *****
現在、横須賀からさほど離れていない海上で、ある船を待っていた。
しかし 待ち人は なかなか現れないねぇ・・・・・
「水上レーダーの設置・点検が完了しました。作動試験に入ります」
艦橋にブリッジ要員の声が響いた
「そのまま進めて」
僕は指示を出す
僕はシルちゃん達から召喚された際、チート能力・時空転移能力を貰った
だから僕は 21世紀と太平洋戦争真っただ中の 昭和17年との間を
行ったり来たり出来る
そこで、未来から使えそうな民生品を片っ端から買い集めている
資金については 軍から換金できそうな物を持ち込んでもらって
これを現在、調達資金にしている
そして、赤城改のマストには 『FU〇〇NO』と書かれたレーダーが
クルクルと2台回転している
2台あるのは それぞれ近距離と遠距離で使い分けるためなんだよ。
シルちゃんが居れば そんな物は必要無いんだけど
シルちゃんだって疲れもするし 眠くもなる。24時間 艦橋に居る訳じゃないからね
これは魔法の使えない 帝国海軍の軍人さんのために用意した物なんだよね
これなら夜戦も捗るかな?
で、レーダーが作動したのか モニターの周りには人だかりが出来始めていた
「すげえ」
「この絵の中心が本艦で こっちが大島で こっちが房総半島か。便利だな」
「どれどれ 俺にも見せてくれよ」
んー 艦長の僕としては そろそろ注意すべきなんだろうな・・・・・
「ん? この絵 動いてる?
小さな点が4つ 近づいて・・・でも ひとつは小島くらいの大きさなのかな?
かんちょう~何か近づいてます」
うん 使い方が分かってきたようだね。
「見張り員に確認を。ほら そろそろみんな配置に戻って。多分お客さんだよ」
僕の号令の下、みな 配置に戻る
***** 赤城改・舷側見張り台 *****
「味方駆逐艦見ゆ。後方に・・・デカっ。あれ空母か?」
***** 曳航中の空母 信濃 甲板 *****
「なんだあれ? あれも空母か?」
「この信濃もデカイけど あの艦も信じられんデカさだな」
「大きさもだけど あの艦、なんで真っ白なんだ?」
「貴様ら 私語は慎めーっ」
***** 赤城改・艦橋 *****
おお ようやく来たね
横須賀のドックから引っ張り出された 元・大和型戦艦で
空母に改造されるはずの『信濃』
航空母艦・信濃
史実、大戦末期に 建造された横須賀から 戦火を避けるため呉に回航される途中、
米潜水艦の魚雷で 一度も戦場に出る事も無く沈んだ悲運の空母
この不遇の空母をドワーフ村のドックに移して
戦火の及びにくい地で建造を進めて貰おうとなった訳だ
そしてその未完の巨艦を曳航する駆逐艦と護衛の2隻で合計4隻が
ゆっくりゆっくりと 赤城改に向かって前進する
速度が遅いのは 建造中なのを無理やりドックから引きずり出した関係上、
信濃はまだ自力航行が出来ない。それでも信濃の自重は5万トンは超えるはずで
曳航している駆逐艦の ざっと10倍の質量があるはず
これを駆逐艦一隻で引っ張れと言うのも酷な話かもしれないけど
兎にも角にも 赤城改の近くまで来た
お互い目視できる距離まで近づいたところで 護衛の駆逐艦にはお帰り頂いた
以後の護衛は 赤城改が引き受ける
信濃と 曳航している駆逐艦には停船して頂いた
赤城改はバウスラスターとポッド型推進器を駆使し
その巨艦には 似つかわない機動性を発揮し、2艦の横に付ける
そして、シルちゃんの出番となる
この赤城改は 全長800mの艦であると同時に 全長800mの魔法の杖でもある
今、巨大な魔法の杖としての 赤城改の真価が問われる
「転移・ドワーフ村沖」
シルちゃんが呪文を唱えた。その瞬間
赤城改を中心として 巨大な魔法陣が現れる。
直径1kmを超える魔法陣が赤城改と駆逐艦、信濃を その内側にスッポリ収める
僕たちは 千葉県沖から姿を消した
***** この少し前、近海の水面下では *****
***** 米海軍潜水艦・ガトー級・ガードフィッシュ艦橋 *****
「信じられん」
俺はトーマス・ブルトン・クラークリング少佐という
ガードフィッシュ艦長を任されて
今現在は 覗き込んだ潜望鏡の その先に有る光景に驚嘆している
潜望鏡越しにある その艦は 真っ白。純白だ
そして信じられないくらい巨大。いや 呆れるくらいの大きさだ
少なく見積もっても 2000フィート(609メートル)は下らないだろう
船体色が軍用艦とは思えないが これだけのデカさで民間船という事は無いだろう
それに甲板は 全通甲板だ
信じがたい事だが これは航空母艦に違いない
民間船でも撃沈の対象ではあるが これは是が非でも沈めておかねばなるまい
「魚雷発射準備。1番から4番 準備しろ」
そう 号令を下した
次の瞬間
ゴン・・・ゴン・・・ゴン・・・ギギギッ
船体が異様な音を発し始めた
心なしか 船体が前方へ傾斜し始めているように思えた
「艦長、し・・・深度計がっ」
「深度計がどうした?」
言われて深度計を見に行くと 緩やかに深度計の針は その数字を増している
不可解な事に『この船は勝手に潜っている』という事になる
総舵手の方を見ると 両手の掌を天に向け 首を傾げている
海軍軍人として いささか自覚に欠ける仕草とも思えるが
彼が 潜航の操作を行っていない事は疑いようがない
ならば なぜ?
「大変です 魚雷発射管室 浸水し始めましたーーー」
「ダメコンは?」
「浸水速度が早すぎて絶望的だそうです」
「分った 発射管室は放棄。避難しろ」
その後も 艦内のあちこちから 浸水・漏水の被害が相次いだ
本艦が勝手に沈降している原因は定かではないが
このままでは船体が圧壊する恐れがある
敵前で 浮上する事は大きなリスクではあるが この際やむを得ない
「全バラストタンク排水、アップトリム最大、機関最大・全速前進
今は圧壊の危険回避のみをを優先しろ!!」
「メインバラストタンク排水、前後トリムタンク排水」
「アップトリム最大」
「機関 増速中 4ノット・・・5ノット・・・6ノット・・・7ノット・・・」
やれやれ・・・これで当面の危機は回避されたはず。そう思っていた。
「艦長、深度変わりませんっ!!」
「なんだと」
そんな訳ないだろうと思いつつ 深度計を見に行く
そこには圧壊深度ギリギリを示したままの 深度計の針があった
機器の故障か?
船体に深刻な欠陥でもあるのか?
ええいっ 考えるのはあとだ。今は
「総員 ダメコンに全力を上げろ。操船はもういい 君達もだ。」
こうして艦長の俺を含めた全員で 漏水個所の応急処置に全力を上げた
一体 どれくらいの時間が流れただろう?
その時は 突然やってきた
ゴン・・・ゴン・・・ゴゴゴゴッ・・・ギギギッ
「かっ、艦長 浮上を始めました」
「やったー」
「助かったー」
「おお神よ」
永遠のように感じられた ダメコン作業は 突然終わりを告げた
潜望鏡深度まで浮上すると 改めて周囲を確認する
「居ないっ 奴はっ、あの白鯨はどこに行ったーっ」
それほどまでに時間が経っていたのだろうか?
あの時、巨大な白亜の船体を持つ巨艦は 停船していたはずだ
煙も確認してなかったから ボイラーも停止 もしくは かなりの低出力だったはず
再度動き出すにしても・・・・・いや やめよう
あの巨艦は もう居ない。それとも幻だったのか?
その後、修理のため ドックに入渠したが
その船体に 4インチ(10センチメートル)もある丸い模様が 無数に確認された
俺と造船関係者と 海洋学者まで来て 頭を悩ませた
辻氏については 時空間の違う人物として 少々名前をもじってあります。
お知らせ:
事情により長期休載致します
年内再開は難しいとお考え下さい
思えば 展開に盛り上がりに欠けるかと思います
最悪、イチから書き直しも検討しましたが 他にやる事が出来ましたので
一旦 筆を置きたいと思います
これまで お付き合い頂いた方、ありがとう御座いました。
このまま打ち切りの場合は ラストエピソードだけでも載せようかとは考えております
それでは。




