プロローグ 1 / 第634航空隊
新参者にございます 立体プリンと申します
なにぶん十分に設定を詰め切れておりませんので途中で書き直しの可能性があります
***** 西暦1942年(昭和17年)秋頃 / 日本・瀬戸内海 *****
「こちら 634航空隊 岡 鹿男少尉、赤城 応答して下さい」
ワイの名前は 岡 鹿男や
岩国海軍航空隊での訓練を終え 634航空隊に就いて日の浅いワイが
今朝突然、空母赤城改での作戦を命じられ
追い出されるように 自分以下9機を従え 岩国飛行場を後にしたんや。
「しっかりしてください 隊長殿っ」
「隊長~ まだでありますか?」
「よっ 新米隊長。期待してますぜぇ~」
無線機から軽口が聞こえる
恐らくは破格の条件なんやろう 今回派遣された全機に搭載されとる。
「やかましいぃっ いま探しとるっ!」
イライラしながらも言い返す
しばし笑い声の後、
「失礼しました 隊長殿・・・クスクス」
「ほら みんな操縦中は ふざけないっ」
ワイはたまたま成績が良かったとの理由だけで隊長を拝命しただけなんやで
実際、他の隊員との年齢差も無いに等しい
そんな新米隊長が 他の8名の操縦者と 乗機が彗星なので後部座席に整備員を乗せて
現在、呉からあまり離れていない 瀬戸内海をウロチョロしとる
「しかし おかしいですなぁ 隊長はん」
後部座席にいる整備員が話しかけてくる
イライラを抑えようと 深呼吸して聞き返す
「なにがだ?」
「どう考えてもおかしいでしょう 貴重な彗星を賜ったり…しかも無線機付きとか」
しばし考える そして離陸時の疑問を口にする
「そういや離陸時 機体が重かったんやが 燃料は満タンか?」
「はい そうです。積めるだけ積んでいけとの命令でした」
「そうか・・・」
ここでまた しばし考え込む
着陸する先は近海を航行しているはずの空母や
いくら俺たちが 新米でも馬鹿にした話やろう。それとも何か意図があるんか?
それだけの判断材料では なんら分かる訳も無く、
しかし適当な事を言う訳にもいかんしな
隊長たるもの隊員の不安を煽ってはならんのや
「分らんが おかしいと言えば
さっきから呼びかけに応答があらへん。なんでやろうな?」
それよりも赤城や。イライラの原因や
何かの手違いで近海に居ないにしても 無線に応答してくれて ええはずや
しかし呼べども叫べども応答があらへん かれこれ1時間にはなるしなぁ
恥を覚悟で 接触できませんでした・・・で 帰投しよかいな
そんな ため息交じりの思考を読んでか後ろの整備員が
「それは隊長さんも悪いんちゃいますか?」
【なんやとおー】という語気を隠し 聞き返す
「でもなぁ 1時間ほど呼んでるぞぉ 何がいかんのや?」
「そりゃ隊長さん、相手の名前は キチンと呼んであげないと」
「ン・・・なんかおかしいか?」
「先ほどから隊長はんは『赤城』言ってますけど『赤城改』ちゃいますか?」
「んん?」
「改修を受けたんか それとも改良型の新造艦か分かりませんが
『赤城改』って言わないかんのでは?」
ここで はたと考え込む。空母なんてそうポンポン造れるやろか?
極秘にしたって噂話くらいは流れてくるやろう
・・・改修したくらいで艦名を変えるか?
黙り込んだ俺に また後ろのヤツが
「隊長はん そこんところ上官に念を押されませんでしたか?」
「・・・あっ」
言われて思い出す
【赤城じゃなくて赤城改だからな、忘れるなよ いいな。】・・・って言われたな
しかし念を押すほどの事なんやろか・・・考えろワイ!!
別に無線封鎖されているわけじゃないんや。それに さっきから無線は使いまくりや
下の者の意見も聞かねば士気が下がると先輩も言うとったなぁ・・・
バカバカしいと思いつつも無線機のトークボタンを押す
「こちら第634航空隊 岡 鹿男少尉、『赤城改』 応答願います」
トークボタンから指を離し 思い切りため息をつく
そしたら後ろのヤツが
「意見具申失礼しました」
振り返るまでもなく風防のガラス越しに整備員が敬礼しているのが分かる
「いやっ おおきにな」
イラついたら負けである。先輩の言葉や
同年代でも こちらが上官に当たる訳だから 整備員も気を使ったんやろ
気持ちを入れ替えるため また深呼吸をする
もう何回目か分からんが 再度無線機のトークボタンを押そうとしたその時
無線機が鳴った
「こちら赤城改 岡さんどうぞ・・・」
ん 女の声?
「あっバカたr」
今度は男の声や
その後『ガチャンガチャン』と音がして 無線が切れた
最初に女の声で聞こえて 最後に罵倒する声が男の声で聞こえたような気がする
何気に後ろを振り返ってみる
しっかり目が見開かれた整備員が居た 驚いたと顔に書いてある
赤城改に無線を傍受されないように送信出力を下げて トークボタンを押す
「今の話聞いたな? 返信する奴は送信出力を最小にするんやで」
要するにヒソヒソ話や。空母の連中に聞かれると気まずいでぇ~
「隊長 今の声オンナでしたよね? 聞き間違いですか?」
「いや自分も聞いた」
「オレもオレも」
女の声で聴いたのは どうやら幻聴ではないらしい
そもそも女が帝国海軍、いや陸軍も含めて居らんはずや
しかし無線が切れる前の男の声は 帝国海軍の口調に思えるしな
う~~ん ますます持って分らん
だが ホントに『赤城』じゃなくて『赤城改』だったんやな
小隊各員の考えを聞いてみようとした その時
「こちら赤城改、第634航空隊 岡少尉殿 応答されたし」
無線機から 今度は帝国軍人らしい 男の声が入ってきた
ようやくかよ~と 胸を撫で下ろす
肩の荷が降りたような気がしてきたが 着艦して機体を降りるまでが仕事や
今一度 気を引き締め 無線機のトークボタンを
・・・っと その前に送信出力を上げてと
「こちら第634航空隊 岡 鹿男少尉、小隊9機 赤城改への着艦を求む」
トークボタンから指を離す
「こちら赤城改 着艦を許可する。迎えを寄越すから 絶対に発砲するな。以上」
こちらは 女性の声の件も聞きたかったのだが
あちらの無線室に誰が居るのか分からない
その件は 着艦後に聞けたら聞いてみることにしよう
今は隊長としての仕事に専念する
「こちら隊長機 岡、命令は聞いたな。発砲を禁止する」
「了解」
「りょうかい」
小隊各機から返信が返ってくる
ひと仕事を終えた気分になり いくつかの疑問を再び考えてみることにする
赤城がこの近海をウロチョロしているとは思えんが
・・・・・
・・・・・・・
ワイはとんでもない自分の間違いに気が付いたんや
そもそも赤城は 昭和17年6月に失われとる
後ろのヤツ、もとい 後ろの整備員に聞いてみよう
「確か 赤城って沈んどるよな?」
「はい 沈んだと聞いてます。今更ですか?」
イラっと来るが そこは大人の対応ってヤツや
「ド忘れってヤツや。お前は疑問に思わなかったんか?」
「おかしいとは思いましたが『改』とか付いてますしね。降りれば分かるかと」
なるほどゴチャゴチャ考えても仕方ないか
難しく考えていた自分に苦笑する
着任先が どんな空母なのか疑問が尽きないが 空母は空母や
晴れて俺らも艦爆乗りとして胸を張れる訳やし
今は その事を誇りに思おう
操縦に専念すべく 操縦桿を握りなおした その瞬間、
バサッ
と 大きな音がして 風圧で機体が大きく揺れた。
「隊長はん 横やーー」
悲鳴にも似た 後ろの整備員の声に釣られて横を見る
あり得ない光景が そこにはあった
二式大艇なみの大きさの ええと ドラゴンとか言うんか?
足だか腕だかに日章旗が はためいとる。
迎えって コレか!
「ワイら 夢でも観とるんか?」
ワイは目の前の光景が信じられんのや
後ろの整備士も ドラゴンに見惚れて 目は釘付けや
・・・て事は やっぱ夢やないんやなぁ・・・
そのドラゴンさんが バッサバッサと羽ばたいて
俺らの前・500メートルくらいまで進む
若干高度が違うんは気流を乱さんためやろなあ
ん? クルッて回って こっち向きよったで
次の瞬間・・・
消えよった!?
目を凝らして よ~~く 見てみる
女の子!?
女の子が空中に浮いとる
そんなアホな!
相対距離があんまり詰まらないところを見ると
あっちも後ろ向きに動いとるようやなぁ
さっきのドラゴンが女の子に化けたんやろか
・・・で、その女の子が翼も無いのに浮いとると
バカバカしいと自嘲するも 目の前の現実は変わらへん
そうこうするうちに女の子が大きくなる
相対距離が縮まっとるようや
よく目を凝らしてみると 女の子の周囲に雲が出来ちょる
ワイの直感がヤバイと言っている
「全機散開 女の子の居る空域には入るなっ 上昇気流があるでぇ」
小隊機が次々に広がっていく。俺も避ける
そしたら後ろから
「隊長、4番機が ほぼ真っすぐ通過してます」
あんの直情バカが・・・
俺は内心 舌打ちする
「しかし隊長はん 我々は あのドラゴンに馬鹿にされてるちゃいますか」
話題を変えたいのか 後ろの整備員がそんな事を言う
「・・・からかっとるんやろなぁ・・・試されとるんかな?」
怒りが沸かんでもないが とりあえずあの機動性は正直羨ましいわ
しかし隊長として整備員に言っておく事がある
「すまんな 整備大変やろうけど 頼むわ」
「はい、あの人 腕は良いんですけどね」
ため息交じりに整備員が肩を落としている
航空機は飛べば どこかしら傷んでくる
これが敵機が おって 仕方ない戦闘機動なら分かるやけど
だがここは敵機のほぼおらん内地や
潤沢な物資がある訳やなし 無駄に機体を傷めて良いわけやない
せやから 心情面でも安全面でも ドラゴンと4番機の行動は問題や
叱るんは あとや
「小隊全機 隊長機に集まれーー」
その頃 下の方では
***** ほぼ同刻・赤城改 艦橋 *****
「タク~ あの子 また遊んでる」
「えっ 勘弁してよ~」
僕の名前は 秋葉尾 拓
21世紀から呼ばれた大学生だ。
あれよあれよと 紆余曲折の末 現在 参謀なんかやっている
現在 帝国海軍のお歴々は 所用で留守にしており
ただいまの最高指揮官は 僕って事になってる
で、僕を【タク~】と呼んだのが エルフ娘の【シル】ちゃんだ
彼女は艦と感覚をリンクさせており 上空だろうが海中だろうが
彼女には手に取るように分かる
その彼女が 困ったね みたいな顔で俺に報告してくる
悪態をツキまくりたいのは やまやまだけど
問題は解決しなければならない
「すいません セセラギさん 行ってくれます?」
「あんたは もうちょっと軍人さんらしく シャキッとしなさいな」
っと言って 行ってきますとばかりに手をヒラヒラと振り
艦橋の外へと繋がる扉へ消えていった
セセラギさん。
彼女は 黒髪で東洋系の顔立ちだが体格のそれは
欧米型の とってもグラマーな女性だ
バサッ バサッ
と 大きな音が聞こえる
そう 彼女もまたドラゴンだ
さて僕達は 航空隊の受け入れ準備に入りましょうか
「士官のみなさん 着艦準備を。シルちゃん 誘導お願いします」
旧・赤城から継続して乗っている乗組員も居るけど
艦の規模から言えば 圧倒的な人手不足だ
初めて着艦する飛行機を迎えるので 念のため応援に回ってもらった。
シルちゃんに直接誘導してもらうのは効率の問題からだ
彼女の知覚能力は現代兵器に当てはめると
イージス艦のSPYレーダーや ドロ-ンなんかで
情報を収集しているようなものだ
無線手を間に挟むより効率が上がるので 今は彼女にやってもらおう。
「それよりも・・・」
俺は心から祈る
まだ長官達が帰ってきませんように・・・
***** 同刻・第634航空隊 隊長機 *****
「小隊全機、あのドラゴンを中心に旋回する 俺に続けぇ」
あの女の子 いやドラゴンは味方なんか知らんが
100パー信用でけへん以上 警戒せなあかん
かと言って 発砲禁止の命令が出とるさかい攻撃もでけへんし
はあ 弱った
ため息をついていた その時、無線機が鳴る
「こちら赤城改・シルです。岡少尉 応答願います」
シルって人の名前かいな? しかも女・・・ちゅうか幼いな
じゃが最初の声と違いよる。最初に出たんは そこに浮いとる娘か?
「こちら岡。赤城改どうぞ」
「うちの ソヨギちゃんが ご迷惑をおかけして ゴメンナサイ」
「いえいえ ご丁寧にどう・・」
ソヨギって言うんか あの子
・・・じゃなくってさぁ!!
お辞儀をしようと 条件反射で上半身を前へ曲げるが
肩がシートベルトに引っ掛かり 我に返る
何やってんだ・・・と 自己嫌悪に陥る
軍隊とは思えん対応や
そこら辺を聞こうと
「そうやのうて・・・」
何から聞いたものかと 思考を整理しようとトークボタンを離す
「今 セセラギさんをソヨギちゃんの迎えに寄越します」
もう一体 別のドラゴン寄越すっちゅー事か
「岡さん達の誘導は私が行いますので指示に従って下さい どうぞ」
***** 同刻・ドラゴン化した セセラギ *****
「もう ソヨギちゃんたら」
やっぱりアレかしら? 参謀殿の言ってた【ツンデレ】ってやつ?
空を飛びながら そんな事を考えてると
「居た居た ソヨギちゃん。」
ドラゴンの姿のまま 人の形態になってるソヨギちゃんに近づく。
人間達から見たら【ドラゴンに可憐な乙女が襲われてる】なんて
ワンシーンなんでしょうけど
そんな絵面なんか 私の知ったこっちゃないわ
「もう おイタしちゃダメッて言ったでしょう」
ドラゴンの姿のまま しゃべってるから 周りはさぞ大騒音でしょうね
でもソロギちゃんは プイッと横を向いて
大音量なんて どこ吹く風みたいに すねている
困ったわねぇ・・・
ため息ばっかり ついてると オバサンになっちゃうかしら
好きな子が居るなら 押し倒すくらいで良いのに・・・
まあ相手も それどころじゃないかしら
そういって私は 4番機と呼ばれている飛行機を見つめた
***** 同刻・岡 隊長機 *****
「 隊長、あのドラゴンこっち睨んでますよ」
後ろの整備員が泣きそうな声で喚いている
俺は操縦と無線に集中せなあかんから 凝視出来んしな
そうそう見れる光景じゃなし・・・
あのドラゴン やっぱ活動写真みたいに火 吹くんやろか?
「岡少尉 聞こえてますか?」
ちっちゃい女の子の声が催促してくる
いかんいかん 仕事に集中せな
「こちら岡 誘導了解」
無線で返事しながら チラッとドラゴンを見ると
空中に浮いてた女の子が ドラゴンに鷲掴みにされて
元来た方向らしい方角に 飛んで行ってた
心配のタネが 一つ減って安堵する
「進路を 西南西へ向けてください、およそ40kmくらいで着きます」
「こちら岡 了解。誘導感謝します」
位置なんぞ どうやって調べるんや? 噂の電探やろか?
方角を確認する。
やっぱドラゴンが飛んでった方角やな
まあ後ろから襲われんやろうから 大丈夫やろ
自分にそう言い聞かせて 無線を近距離に切り替える
「こちら岡 9番機、もうちょっとの辛抱やさかい こらえてぇな」
「はい 隊長 すみません」
9番機・辺田 玲
【ヘタレ】読んだら失礼やでぇ
辺田のヤツは 地上の訓練で ギリギリ合格点やったからなぁ
着陸の難しくなる空母では ゴッツイ技量が必要になるさかい
もうちょっと訓練してからの方が ええんちゃうんかと上に具申したんが
不可解な事に却下されよった。
空母の着艦は 上手い奴から下手な奴で順番に降りる
【逆やろ】と思うとるヤツも多いやろうけど
うっかり事故でも起こされると 後が詰まるんや。
せやから9番機が かわいそうやが最後なんや
まあ配属された以上は 最善を尽くすんがワイの仕事や
「小隊全機 進路・西南西。高度も下げ始めるでぇ」
どんな連中が待っとるんかな
降りたら色々問い詰めたろと想いながら 操縦桿を握りなおした。
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※更新情報 3/12
細切れになっていたプロローグ部分の5話を3話に統合
当初シルちゃんの外見をJK程度に設定していたのを幼女程度に再設定
秋葉尾君の一人称を【俺】から【僕】へ変更
岡小隊長の言い回し調整
岡小隊長の階級が未設定であったので この部分を修正
その他 不要と思われる部分のカット