ファーストブリーフィング/造船を始めよう 7/氷山空母誕生!?
10月15日 18:00 前後編を統合しました
LGBTな部分があります 苦手な方は『戻る』か 227行目までお読みください
***** 西暦1906年12月24日(月曜日・クリスマスイブ) *****
***** イギリス・ノーフォーク州・グレートヤーマス *****
ここはロンドンから北東へ170km程にある港町・グレートヤーマス
この日は聖夜という事もあり多くの市民は 我が家へと急ぎ 外は静まり返っていた
が、
しかし、ある少年は事情が違っていた
彼はユダヤ教を信仰する両親の元で育ち、またそれが原因でイジメにも遭っていた
そんな教えを強要する両親と聖夜を過ごす事を良しとしない少年は
何かアテがあるでも無く 雪の降る人気の無い港を散策していた
「ちくしょう・・・・ちくしょう・・・」
道端に落ちている石に八つ当たりしても 彼の心は晴れる事は無い・・・が
その日は ささやかながら 彼の胸が躍る出来事が起きるのである
少年は岸壁に立ち 水平線の向こうへと 視線を向ける。
何がある訳でも無い その真っ暗なハズの海の上に それが現れた
彼の視界を横切ろうとしている ソレは 巨大で平坦な氷。氷山であるが
その氷山は非常に透明度が高く、まるで海に浮かぶ巨大なガラスと言える代物で
どういう原理かは分からないが 赤・青・緑・白などの光を放っており
それはまるで、
「・・・うわあ まるで海に浮かぶクリスマス・ツリーだあ」
少年は 目の前に広がる幻想的な光景に目を奪われ 見入っていた
しかし よくよくその氷山を見てみると その氷の中には生物らしき物が
閉じ込められているようでもあり さながら巨大な冷凍庫だろうか?
そしてその広大な氷山の中央には
「えっ、ドラゴン? 嘘だろ?」
そう、氷山の中央・上面には これまた巨体を露にしたドラゴンが
陣取っており ゆっくりながら動いて・・・いや 生きているようだ
そのドラゴンは ゆっくりと首を動かし 少年と目が合った
喰われる!!
少年は瞬間的に そう思考し 思わず生唾を飲み込む。
しかし当のドラゴンは そんな小物には興味が無いのか、視線を進行方向へ戻し
また いずこかへと氷山ごと暗闇の中へ消えていった。
「はっ・・・ははっ・・・あははははっ」
暗い港で彼は 緊張が解けたのか、笑い出した。
この時、少年の年齢は13歳。いわゆる『中学生病』的な年齢であり
多感な時期でもある。
彼の名は『ジェフリー・ナサニエル・パイク』
のちに氷山空母・ハボクックを提唱する人物であるが、
それはまだ30年以上先の話である
***** 同年12月16日/ドワーフ村・造船所建設予定地? *****
俺、平賀 譲は 激しく後悔している。冗談のつもりで言ったのに。
俺の目の前の海には 巨大な氷山が浮いているが 天然なモノではない
水のドラゴン・せせらぎ君が造った物だ。これが出航・・・いや、
出漁に出るのである
なぜこうなったかと言うと、
***** 同月2日/ドワーフ村 *****
ドラゴン達やドワーフ達の手によって 製鉄の技術が徐々にではあるが
モノになろうとしていた
特筆すべきは 土・雷属性のドラゴン とどろき君の頑張りであろう
彼は ダービー地方での視察以来、魔法での再現に尽力した
このままいけば500トン程度の船ならば 何とか作れるのではないかと
そう思えるレベルまで向上している
だが同時に大量の魔力を消費するので ここら辺が 一つのハードルとも言えるな
大量の魔力を消費する = 大量の食料をドラゴン達が消費する
になる
しかし面白くないのは 女性型ドラゴンの二人
土・雷属性の とどろき君と 炎属性の ゆらめき君は それぞれ仕事があるが
まあ風属性の そよぎ君は 若干仕事があるようだが
完全に仕事が無いのは 水属性の せせらぎ君だ
何か出来る事は無いかと聞かれて
『水が操れるなら 巨大な氷で船を作ってみてはどうだろうか』
と、冗談で言ってみたのだが
「おじ様ありがとう 私たくさん魚捕ってくるわ」
彼女は目をキラキラとさせて 飛び出して行ってしまった
***** 12月09日・日曜日 *****
彼女は どこからか大量の氷を かき集め、全長・200メートルの船体を作り上げた
さすがにイチから これだけの氷を生成するのは 成龍では無いため難しいらしい
流氷を集め これを魔法で結合し 同様に魔法で強化。
天然のままの流氷ならば ほぼ真っ白の船体になるかと思うのだが
ここは彼女のこだわりなのか、全体が ほぼ透明な氷になっており
これまたどこから持って来たの ヒカリゴケの一種と言っていたが
赤や緑に青色と いくつかの色を放つコケを船体に張り付けていて
夜中に見てみると 何とも壮観ではある。
また一部の魚は このヒカリゴケの放つ光に誘われて集まり『一網打尽』となる訳だ。
女性らしく光モノを好むのかとも思ったが
存外良いセンスをしているのかもしれないな。それとも たまたまなんだろうか?
船体の高さは50メートルくらいあるが 元が氷なので大半が海中に没しており
吃水は40メートル代だろう
そのままではマズイだろうと 船倉に当たる部分だけでも空洞にして
船体の軽量化を試みたが 何とか40メートルを切ったというところか
こんな吃水の深い船、魔法世界でも無ければ運用不可能だな
船体幅も30メートルくらいになるように作ってもらって
どうにかこうにか『船に見える』程度には仕上がった
俺がアレヤコレヤと 横槍を挟んでも素直に従うあたり
『名付けの親』として一目置いてくれている証なんだろうな・・・と 感心した
で、船を動かす動力は どうするのかと聞いてみたところ
基本、海流に任せて漂流し 速度が必要な時は魔法で海流を操作し
帰って来る時は転移魔法を使うそうだ
心配するだけヤボと言う物か。
推定排水量・20万トン弱
こうして世にも奇妙な巨大漁船は ちゃくちゃくと出漁の準備を整え
そして いよいよ 出漁の日が来た
***** 12月16日/ドワーフ村・造船所建設予定地 *****
俺、平賀 譲は 気が付けば 日曜日のたびに魔法世界に来ているな
存外 俺も人が良いらしい
そして 今日、せせらぎ君が 完成した巨大漁船で出漁するというので
エルフ族にドワーフ族や 何やら良く知らない種族まで 物珍しさも手伝って
大勢で見送りと相成った
何だか長いようで短く感じられる日々だったな
俺はイギリスに留学する前に 慌ただしく結婚して妻を日本に置いてきた
もしも 俺に子供が出来て 送り出す日が来たら
今日の今のような心境を迎えるのだろうか?
そんな事を考えていたら せせらぎ君が挨拶に来た
「おじ様、行ってまいります」
「あ ああ、気を付けてな」
挨拶を終えた せせらぎ君は 俺や野次馬の集団から50メートル程度離れると
ドラゴンに姿を変え 沖合に停泊している氷山漁船まで飛んで行った
氷山漁船の上空・50メートルで静止し ゆっくり船へと降り立つ。
この光景がまた 何とも神々しい。
そこで俺は ハッ とする
つい最近、アメリカで エンジンを付け 空を飛び回れる飛行機械が造られたと聞く
もしかしたら 船上で運用できる日が来るんだろうか?
ゆっくりと遠ざかる氷山漁船を見送りながら
今『氷で船を・・・』と言った事を
もしかしたら必然だったかもしれないと 思い直す事にした
*** ジージの場合 ***
ワシじゃ、ジージじゃ。
ワシが子供の頃 物好きな爺さんが大きな木造船を作っておってな
・・・おっと この話は すでに話したかの?
当時は山のように大きな船だと子供心に思ったものじゃが
今 ワシが見ておる『アレ』は 爺さんの木造船を嘲笑うかのようなデカさじゃ
試しに シルを乗せてみたところ 揺れが少ないのか
この氷の船を いたく気に入ったようじゃ
まあ船体が氷で出来ておるから 船内は寒いし、走り回れば転びもする
何より生活に必要な物が 何一つ無い
超生物のSレベル・ドラゴンでも無ければ半日も乗ってられんの。
安心して シルを乗せられる訳では無い・・・が
やはり大きな船は正義じゃわい。
どれ、ドワーフオヤジを せっついて 鉄製の船を急いで作って貰わんとな。
*** ドワーフオヤジの場合 ***
あん、オレか?
みんな俺の事を ドワーフオヤジと呼ぶな。
オレが そう呼んで欲しいと頼んだ訳じゃないが
今更変えて貰おうとも思わんしな
だいたい 大した人数も居ない村だから 名前なんて大した問題じゃないさ。
それよりもだ。
エルフんとこのドラゴンが造った船、デケえのなんの。ちょっとした島だな アリャ
ご先祖様の名誉のためにもアレよりデカイ船が造りてぇなぁ
材料の違いなんか問題じゃない、俺達ドワーフ族の誇りのためよ
あん? ニンゲンには分からんか?
そんでよぉ 肝心の鉄だが 今んとこドラゴン共に先を越されて
俺らドワーフ族の面目が丸つぶれだ。ちくしょーめ
そんで試しに ドラゴン共の作った鉄で武器を作ってみた訳よ
そしたら スンゲー 名刀がだな・・・出来たわけよ
悔しいが ドラゴン、特にトドロキのヤツだな。いい腕してやがる
そういや 炭素の量が どうとか 不純物が何とか言ってたが
ありゃニンゲンの入れ知恵か?
おっ、そういや ヒラガのダンナは どこ行った?
ちょっと アーネのヤツを使ってだな・・・・・
*** アーネの場合 ***
シルはオレの嫁だ!!
・・・・えっ、オレなんか おかしい事言ったかな?
みんなオレの事を 女の子って思ってるみたいだけど
まだ『小さい』だけだと思うんだ
父さんは無口だし何考えてるんだか分かんないけど
爺ちゃんは『ドワーフにしては コマけえ事にも気が付くなぁ』って褒めてくれるぞ
それでさぁ・・・・あっ 爺ちゃん どうしたの?
いやそんな 手ぇ引っ張んなくても ついて行くからさぁ・・・・
ヒラガのおっちゃんの所に来て どうすんの?
様々な人たちの想いに見送られ 船は出て行くのであった。
***** その頃、洋上の氷山漁船? *****
何だか大勢に見送られて辟易したわねぇ
ん? あたし、セセラギ。ドラゴンの姿のままで失礼するわね。
しかし この船に私だけって寂しいわね。
ご主人様のシルちゃんを連れて行きたいって ジージ様にお願いしたら
『ダメッ』と、取り付く島も無いわ
まっ、風邪をひくからと言われれば 何も言い返せないわよね
・・・でも 寂しいわね・・・・・
*** 翌日 ***
あらやだ、いつの間にか眠ってたわね。
気持ちを切り替えて お魚さん達を沢山捕まえて帰りましょう
最初のうちは 海中に潜って 律儀に捕まえてたんだけど
そのうち お魚さんの体内と周囲の水分を凍らせれば良い事に気が付いたの
私って偉いかしら?
で、海面に浮かんできたところを掬い上げて・・・・・で、これも後々
凍らせたまま 船と同化させれば良い事に気が付いたの
取り込んだら そのまま船倉に移して そのまま冷蔵・・・・・と
船倉部分を作るように言ってくれた ヒラガおじ様に感謝だわ
*** さらに翌日・2日目 ***
あーーーー 暇ね。
いくらドラゴンが最強でも『退屈』には勝てないわ
退屈してたら 私の魔力を辿って来てくれたのか ソヨギちゃんが遊びに来てくれたわ
うん あんたは いい子 いい子。
この日は ソヨギちゃんと1日中話し込んでたわ
あっ、もちろん話しながら お魚さんは沢山捕まえたわよ。ホントよ。
*** 3日目 ***
あーーーー 今日もソヨギちゃん遊びに来てくれないかしら・・・
そんな事を考えてたら お呼びじゃないのが来たわ
クラーケン
知ってる? イカの ものすごーーーく大きいヤツ
メートルで言うと 20メートルくらいのヤツ?
『あんたなんか美味しくないのよ しっ、しっ』てな感じ
あのヌルヌルした 足だか手だか知らないけど 触手みたいなので触られると
身の毛がよだつわっ!
もうっ 触るのもイヤだから 水のボールを沢山ぶつけてたけど
あんまりシツコイから カチンときて 水の塊を 平たく伸ばして ぶつけたのね
そしたら クラーケンの体が スパスパッて感じで 触手を切りまくったわ
うん 触手ならまた生えてくるでしょ?
そんな事してたら ソヨギちゃんが遊びに来てくれたわ
あんたもやる? クラーケン退治?
でも ソヨギちゃんたら容赦が無いのよ。私は触手で勘弁してあげてるけど
この子は 胴体真っ二つ なんだから・・・あっ 共食いしてるわ。きっもっ
*** そんなこんなで 1週間程度経ち ***
はあ・・・船倉も一杯になってきたし そろそろ帰ろうかしら
最後に 人間界の海にも行ってみようかしら
それっ、転移!!
*** 西暦1906年12月24日(月曜日・クリスマスイブ) ***
*** イギリス・ノーフォーク州・グレートヤーマス沖 ***
あら 雪っていうのが降ってるわね。シルちゃんが居なくて良かったわ。
今は平気だけど 人間化したら私も風邪ひいちゃうのかしらね
星明りはあるけど 暗いわね
ヒカリゴケさん達に魔力を注いで・・・・・うん 明るくなったわ
あれは人間界の港かしら?
へぇ~ 船ってヤツが沢山あるわね
あらあ こんな寒い夜に人間が・・・見られたらまずいかしら?
まっいいわ。このまま立ち去りましょう。
それにしても 人間界の魚は ちょっと変わった味だけど良いわね。
トドロキが喜びそうだわ
それっ 転移!!
***** 12月25日/ドワーフ村・造船所建設予定地 *****
あーー 帰って来たわ。トドロキ達が お腹を空かせて待ってるはずよ
って もう来たっ!
トドロキとユラメキが揃って ドラゴンの姿で 船まで飛んできたのよ
まっ わたしはシルちゃんに会いたいから このまま船を明け渡して
シルちゃんの所に着地。人間化してシルちゃんに近づいたの
そしたら 何故かシルちゃんが逃げるのよね・・・なんでぇ?
ねえねえ 1週間寂しかったんだから ちょっと抱かせてくれてもいいじゃない?
ねえったら・・・
「セセラギ お魚くさいのぉ~~」
追っかけっこの末、ようやくシルちゃんを捕まえて 抱きかかえる。
なんだかシルちゃんが ぐったりしてるけど 構わず ギュっと抱きしめる
う~ん しあわせ。
ジュワーーー バリバリバリッ
何の音かしら?
大きな音がするので 沖合の氷山船を見ると
船が溶けて あちこち穴が開き始めてるのよ
ユラメキの足元を見ると アイツの足元が どんどん溶けてる
そういや ユラメキって火属性よね。そりゃ溶けるわ
で、トドロキは・・・アイツ 船体の氷ごと食ってる!!
どんだけお腹すいてるのよっ
「こらーー 二人とも降りろーー あたしが降ろすから岸で待ってろーー」
ああ やっぱり船って鋼鉄じゃないとダメなのね。
***** その頃、イギリス・魔法組合では *****
「目撃者は 少年一人と思われ・・・・・」
「クリスマスくらい 大人しくしてくれんかのう」
儂、組合長は 部下の休みのやりくりを考えながら そう思った
ブクマ登録された方 ありがとうございます




