ファーストブリーフィング/造船を始めよう 6
***** 西暦1906年2月10日/ドワーフ村 *****
俺、平賀 譲は ホームステイ先に『友人宅に泊まってくる』と言い訳をし
現在、ドワーフ村のドワーフオヤジ邸に来ている
今日は土曜日で 明日の日曜まで納得いくまで事情を聴くつもりでいた
例の人間に化けたと思われる 4人の少年少女もバーヤ殿に服を着せて貰い
ポーツマスに居た面々で揃って夕食と相成った訳だ。
「ジージ殿。事情は聴かせて頂けますよね?」
「ああ もちろんじゃとも」
食事を取りながらと 若干行儀が悪いとは思ったが ここは時間を優先させて貰った
曰く、
ここは魔法が使える魔法世界である事
4人の少年少女はドラゴンである事
ドラゴン達の食料を確保するため 大型の船が欲しい事
但し 大規模な製鉄技術からして無い事
等の事情を聴き出せた
そして 夜も更けて来たのか シルちゃんとアーネちゃんはお眠のようだ
バーヤさんが寝室へ連れて行ったので これ以降は大人だけの話になった
「そうですか・・・」
ここまで聞いて ひとまず考えを整理する事にした
造船を始めると言っても まず造船所からして無いし製鉄所も無い
鉄は鎧や盾 斧を作る程度の量しか作ってこなかったし
数千トンや数万トンなんて量を作るとしたら何年掛かるか想像も付かない
ほぼ無い無い尽くしと言っていい状況。これまで魔法があれば事足りていたとはいえ
ここまで何も無いと何から手を付ければ良いやら・・・・・
そもそも自分は造船官志望なのであって製鉄は専門外だが
ドワーフオヤジ殿から話を聞く限り 原始的な『塊鉄炉』で鉄を作っているようで
とてもじゃないが造船に耐えうる鉄ではない
高炉や転炉、造船所を作ってもらうにしても言葉だけでは不十分だな・・・・よしっ!
「では明日 皆さんとで色々見て回りましょう」
こうして明日の日曜日は 造船に関係した施設を見学して回る事になった
**** 同じころ/イギリス某所・魔法組合 組合長室 *****
「それで何か分かったかね?」
組合長が訪ね、中年男性が答える
「はい、本日 ポーツマスで
男性4人と初老の女性に少年と少女の合計7人と4匹の犬が突如、消えたようです
この男性4人ですが、ドワーフの特徴を持った物が2名、
初老の男性は人種の特定が難しいのですが 残る一人は東洋人かと思われます」
「ほう、東洋人とな?」
「はい 20歳くらいの若者と聞いております」
「ドワーフと東洋人に謎の人種か・・・
まあ転移魔法が使える時点でエルフに違いなかろうて
しかし なかなか奇妙な組み合わせじゃのう
東洋人は ひとまず置いとくとして
仲の悪いエルフとドワーフが 一緒に行動するという点が分からんなあ」
「目的については不明です」
「そして『犬』じゃな・・・これも犬と決めつけてかかるのは早いかもしれんな
魔法界では犬や狼を飼うメリットが無いしな・・・
もしかすると『神レベル』の魔力を出しておったのはコレかもしれんな」
紅茶を一口飲み、組合長は続けた
「まて、場所は『ポーツマス』と言ったか?」
「はい、『ポーツマス造船所』付近です
当日は新造戦艦の進水式でしたので それらを見に来たというのが
有力な見方でしょう。」
「ふむ。軍艦並みの攻撃力が欲しいなら複数名の魔法使いが居れば良いじゃろうに
単純に船が欲しいのじゃろうか?
それとも ポーツマスに居たのは単なる偶然かのう」
ここで思考は煮詰まってしまい 組合長は首を傾げている
***** 翌日/ロンドンから北北西180km・ダービー地方 *****
俺、平賀 譲は ジージさん、ドワーフオヤジさん、ドワーフ息子さん、
アーネちゃんにドラゴン達と ダービー地方に来ていた。
しかし 『転移魔法で すぐ』とは行かず、そこまで転移魔法は万能ではなく
一度行った事のある場所の近辺でないと難しいらしい
そこで一旦 夜も明けきらないうちに ポーツマスへ転移し、
ドラゴン達に運んでもらうという なかなか貴重な体験をさせて貰った。
夜明け前に移動を済ませたのは やはり こちらの世界でドラゴンを目撃されるのは
具合が悪いという事で 真っ暗な暗闇の中をドラゴンの掌につかまれ
上空を飛んで来たという次第だ。他人に自慢できないのが大変残念ではある。
「あれが『高炉』という物だよ」
「へえ~」
「人間共はスゲエな」
「・・・・・」
今、製鉄業を含む工業全般が盛んな『ダービー』と呼ばれる地方の
製鉄所らしい建物の近くに来ている
この地方では18世紀後半から コークス(石炭を蒸し焼きにした物)を使った
近代的な製鉄業が始まっており 船を作れるくらい大量で均質の鉄を作るなら
どうにかして この方法を真似るしか方法が無い。
まあ 細かいノウハウはともかく 10年以上前からの技術だし
特許は切れてるよな?
真似して良いはずだが 果たして いつ頃再現できるだろう・・・
「あの構造物の中身ですが おおよそ こうなっていまして・・・・・」
「ほう~」
「へえ~」
「・・・」
地面に略図を描いて説明するも どこまで 分かってもらえただろうか
ドワーフオヤジさん達は 羊皮紙だろうか? 略図を描き写し 何やら気づいた事を
丹念に記入していた。
そして、人化したドラゴン達を見ると
少女二人は退屈そうにしているが 少年二人はそれなりに見入っている
特にトドロキ君は マバタキすらせず 食い入るように見ている
俺は二人に声を掛けてみた
「どうだい 二人とも。何か分ったかい?」
「うん 分かった。出来そう」とは トドロキ君だ
「おう。燃やすなら 任せろっ!!」とは ユラメキ君だ
酸化鉄から酸素を分離したい訳だから単純に燃やす訳では無いのだが
まさか魔法でどうにかなるとか言い出すのか?
そして 帰りにポーツマス造船所を見学して その日はお開きとなった
***** 同日/魔法組合・組合長室 *****
例によって中年男性から組合長が報告を聞いている
「ポーツマスで張り込みをしていたところ再度、ドワーフ達が現れました」
「ほう・・・続けてくれ」
「前回とはややメンバーに違いは見られますが
大きく異なる点としては 犬では無く大型のドラゴンが4体おりまして
このドラゴン達を使って どこかへ出掛けたようですが こちらは現在調査中です
次に同行している東洋人が分かりました。『ニホン人』です」
「ニホン人? はて、何かが引っ掛かるな」
「『トーゴー』の国ですよ。組合長」
「おお おお 『アドミラル・トーゴー』の国か そうか。そうであったな」
アドミラル・トーゴー。東郷平八郎元帥その人である
ロシアのバルチック艦隊を破ったその手腕は 遠くイギリスにも届いていた
「はい それでその日本人の特定も出来ております
ユズル・ヒラガ。軍人で現在、グリニッジ王立海軍大学で学んでおります」
「で、その者は海軍大学で何を学んでおるのだ?」
「はい『造船科』へ通っております」
「ほほう ヒラガなる人物と出会ったのは偶然かのう。
しかし益々分からんな。神レベルのドラゴンが4体も居れば
大抵の無茶は効くであろうに・・・・・そうか食料か。
船を作って遠くまで食料を調達しようと・・・そう言う事か。フォッフォッフォ」
「組合長、ドラゴンなら空を飛んで遠くに行けるのではないですか?」
「そう そこじゃよ。そう思いがちじゃが 考えてもみなさい
最近この世界でも飛行機が出来てきたが 消費する燃料は莫大じゃ
ましてドラゴンは鳥とは違い 飛行する事に特化した生き物では無いのじゃ
ドラゴンが空を飛ぶと それなりに体力を消耗 すなわち腹が減るという事じゃ」
「そうですか。しかし そうなると」
「そうなると なんじゃ?」
「はい、どうやら一般市民にもドラゴンの目撃情報があり
現在揉み消すのに苦労しておりまして」
「そうじゃのう こちらの空を飛び回られるのも困ったものじゃのう
仕方がない 連中が欲しがっておる物があれば それとなく提供しなさい」
「はい、しかし目撃情報は いかがいたしましょうか」
「そうじゃのう どこかで恐竜が出たとか情報を流せ」
「はい」
その後、ロンドンから北北西 700kmにあるネス湖で未確認動物
いわゆる『ネッシー』の目撃情報が急増した、が
この魔法組合の関与については不明である
当なろう小説は実在の人物・団体とは一切関係御座いません
投稿が遅れた割には短いですがご容赦を。




