ファーストブリーフィング/造船を始めよう 5 / ドラゴンの覚醒
***** エルフ国・エルフ村近くの海岸 *****
ワシじゃ、ジージじゃ。今 転移魔法で魔法界に戻ってきたところじゃ
4体のドラゴンは絶賛魔力増加中じゃから とても危険な状態なんじゃよ
平賀殿は やはり魔力の検知が出来ないようじゃから 危機を察しておらん
まずは『あれここはどこですか?』状態の平賀殿を ドラゴン達から引き離す
「ヒラガ殿っ こっちじゃ。シルや 防御の準備じゃ」
ドラゴン達を残し 一同、海岸から内陸へと走り始める
「うん」と シル
「一体何がどうなっているんですか?」と、平賀殿
「説明は後じゃ 今はドラゴン達の暴走を止めなくてはな。」
「ドラゴン?」と、平賀殿
「そろそろかの」と ワシ
ワシはドラゴン達を指差し 釣られて平賀殿が後ろを振り向く
魔力の高まりは やがて内向的な物から 外見的な物へと変わり
ドラゴン達は 擬態犬からドラゴンへ戻り その外見は巨大な物
クラーケンを上回る大きさへと 一気に成長した
いやはや 危なかったのう。もうちょっと遅かったら踏み潰されとったわい
平賀殿は 驚くこと しきりじゃ
ドラゴン達から離れる事 300メートル
岩場があったので ワシらは その物陰に隠れる事にした
全員が物陰に入ったところで
「シルや 防御じゃ。魔力を放出するだけで良いぞ」
「うん」
シルが魔力を放つため 構える。
『魔力』とは『魔法』の源じゃ
通常じゃと魔法の杖を介して魔法を放つのじゃが シルは魔力が桁違いに多く
並みの杖じゃと耐えられず 崩壊してしまうんじゃ
じゃが杖を使わずに高威力の魔法を使おうとすると まだ子供のシルでは
体に負担が掛かり過ぎて危険なんじゃ。
じゃから単なる魔力の放出で乗り切ろうと・・・そういう訳じゃよ
もっとも、この世界には並みの杖しか無いから 並みじゃない杖があるなら
言い値で買うから売って欲しいもんじゃわい
シルが魔力を放出して 周囲を高密度の魔力で満たす
その頃 ドラゴン達は
「「「「ギャオオオオオーーーーーー」」」」
始まったのう。
自らの魔力の高まりに苦しみ、我を失っておる
そして4体のドラゴン達が放つ 高威力の魔力が
魔法として発動していないにも関わらず
周囲に放出・拡散され暴風雨が吹き荒れるような有様で
海は時化 砂煙が舞い 木々が飛び 強風が吹き荒れ
1キロメートルは離れているであろう 森の木々を易々と なぎ倒す
流石はSクラスのドラゴンと言ったところかのう。単なる魔力押しでコレか
ワシらの周囲も 大きな岩ですらゴロゴロと転がり 危険な状態じゃ
この事態を いち早く収束させねばな。何とかしてドラゴン達を気絶させねば・・・
ワシとバーヤの魔力量では この高密度の魔力が満ちた空間では
遠くまで魔法が届かない。ここはシル 一人しか対処できない
「シルや そこら辺の大岩を ドラゴン達に投げてみなさい」
「うん」
そう言ってシルは片手では 魔力を周囲に充満させつつ防御をし
もう片方の手で これまた魔力だけで 牛よりも大きな岩を浮かせ、
ドラゴン達に向かって放り投げる
魔力だけで大岩が投げられるとか 我が孫ながら 相変わらず規格外じゃな
まずは一個目。赤いドラゴンへ命中するが 返って怒らせただけかのう
口を こちらへ向けて開けたと思ったら
ゴゴゴゴーーーーーー
爆炎がこちらへ放たれた
「万物の聖霊よ我らを守り給え。防御っ」と バーヤが魔法を発動する
魔力は魔力で対抗できるが 魔法や物理攻撃は さすがに魔力を満たしただけでは
防げないので ワシとバーヤとで対処する
魔法障壁に阻まれ 炎が霧散する。
本来 Sランクの魔獣から攻撃を受けた場合、とても一人の魔法使いだけでは
対処できるモノではないが、
攻撃に理性が伴わないのか
どこかで理性が働いてブレーキが掛かっておるのかは分からんが
信じられないくらいの低威力じゃ。
ワシは初見で低威力と見抜いておったぞ。ホントじゃぞ。
それまで驚くだけで 推移を見守っていた平賀殿が口を開いた
「皆さんは あのドラゴンを倒したいのではない・・・という事で合ってますか?」
***** 同刻・イギリス/スコットランドヤード(ロンドン警視庁) *****
「人が消えた? 何をバカバカしい」
「ホントだぞ」
「俺も観たぞ~」
「俺達は忙しいんだ 帰った帰った」
ちょっとした騒ぎが起きていたが 相手にされる訳も無く
男達は しぶしぶ窓口を後にした
「なんでえ まったく 話を聞きやしない」
「まあいいや ちょっと早いが酒でも飲もうや」
「その話 面白そうですね。私が奢りますので いかがです?」
建物を出たところで 一人の男が話かけてきた
「おっ兄さん話が分かるね」
「おう 飲もう飲もう」
男達は スコットランドヤードを後にした
***** 再びエルフ村の海岸 *****
俺事、平賀 譲は とても信じられない事態に巻き込まれた
目の前でドラゴンが 苦しそうに暴れ 台風でも来たかのように物が宙を舞う
まったくもって おとぎ話の世界にでも放り込まれた気分だ
しかし目の前の光景は『白昼夢』と 一言で片づけてしまうには現実味が有り過ぎる
一体どんな仕組みかは良く分からないが この事態を収拾する一助になればと考えた
まずはジージ殿に尋ねる
「あなた方は あのドラゴンを倒すのではなく無力化したいのですね?」
「ああそうじゃ あのドラゴンは敵性なものじゃないのじゃよ
シルが昔から飼っておっての、今は魔力の暴走で我を失っておるだけじゃから
何とかして気絶させることが出来れば 正気に戻るはずなんじゃよ」
ドラゴンを犬や猫のように飼っているのだろうか?
ひとまず そういった疑問は後回しにしよう
「そうですか・・・ではドラゴンの外皮は どの程度の堅さでしょうか?」
ジージ殿に聞いたつもりだったが 代わりにオヤジと名乗る人物が答えた
「ワシらドワーフ族が造った鉄製の斧でも ドラゴンの鱗相手じゃあ
すぐに刃こぼれしてしまうわい」
ドワーフ?
非常時とはいえ これまた神話とかでしか聞いた事が無い種族名に関心が行った
確かにオヤジさん達は 腰まである髭に短く太い手足という特徴を備えている
そちらへ関心が行きそうになるのを グッと堪え
「えっ あ はい。そうですか・・・・・」
冶金技術の程度は分からないな。
斧の現物を確認してみないと何とも言えないが
それでも斧が刃こぼれするレベルだと ドラゴンの鱗は
戦艦の装甲並みと考えておくのが妥当か・・・
気絶させる程度なら 小石を超高速で頭蓋へ目掛けて飛ばし
殺す訳では無いから 軽く接触させ 脳震盪を起こさせればあるいは
そう考えると あとは実現性だな。ドラゴンまで目測で 300メートルくらいか
音速だと1秒で到達出来る距離だが これより速い速度が目安だな
ジージ殿に相談してみる
「ここから小石を 『いち』と数え終わるよりも速く
ドラゴンの頭に目掛けて 投げる事は出来ませんか?」
普通に考えれば 常人には精々 時速100キロメートルを超えられれば御の字だろう
しかしこの世界には 信じがたい事だが魔法があるようだ
ならば通常なら不可能な事でも出来るのではないか・・・・・
「そんなに速く?
ワシやバーヤには 周囲の魔力密度が高過ぎて無理じゃが
孫のシルならば あるいは やってくれるかもしれんの」
言われてシルちゃんの方を見てみると『やらせて』という顔をしていた
俺は努めて分かりやすく説明する事にした
「いいかい シルちゃん。
ドラゴンまでの距離を『いち』と数え終わる前に届くように速く
投げて欲しいんだけど出来るかな?」
コクッと 少女は頷いた
「じゃあね。シルちゃんの拳程度の大きさの小石で良いんだ
その小石をドラゴンの頭、頭のてっぺんに掠るように投げて欲しいんだ
ただドラゴンは動き回っているから 目や耳に当てないように
動きを良く読んで当てて欲しいんだ。
うまくいけばドラゴンを気絶させる事が出来るよ。やってくれるかい?」
説明し終わり、少女の目を見てみた。少女の目はキラキラと輝いていた
「うん、わたしやってみる」
少女は明るい声で そう答えた。
少女は右手を 右下方向へ突き出した。
そして何かを持ち上げるような仕草をした
気が付けば 岩陰の外で 小石が宙に浮いている
周囲には暴風が吹き荒れ 静止しているのは岩陰にある物しかないような状態で
その小石は まるで空間に打ち付けられているかのようにソコへ静止していた
今度は 右腕を大きく振り 何かを投げるかのような動作をした
小石は もうそこには無く どこかへ消えていった。と 同時に
「ギャオオオオオオーーーー」
どれかのドラゴンに命中したのだろうか?
咆哮と同時に 青い色をしたドラゴンが こちらへ大きな口を向け
大量の水を放つ
大量の水がこちらへ押し寄せてきたが
「防御っ」と ジージ殿が叫ぶ
どういう理屈かは分からないが 大量の水で我々が沈む事は無く
しばらくして 水はどこかへ消えてしまった。
当たっては いるようだから 後は威力の問題だな
俺はシルちゃんに言う
「シルちゃん。当たっているけど威力が足りないみたいだ
もう少し 速い速度で投げてくれるかい」
少女はまた コクッと頷いてくれた
先ほどと同じように 小石が宙に浮き そしてまた消える
「ギャオオオオオーーーーー」
当たったようだが 気絶には至らないか?
今度は 空が一瞬 瞬いた
「ピシャン・・ゴゴゴゴーーーーー」
焦げ臭い?
俺の横を見ると 煙が立ち上っている。もしかして雷が落ちたのか?
危ない危ない もう少しズレていたら 俺は感電死していたかもしれない
俺は またしても彼女に言う
「シルちゃん。今度は 最初の2倍くらいの速度でお願いできるかな?」
三度 少女は頷く
小石が浮き また消える。
「ギャオオオオーーーーー」
今度は緑色のドラゴンに当たったようだ。
冗談じゃない 予定通り音速の2倍の速度なら 最新式の小銃並みの初速だ
破壊力で言えば 8倍程度には なってるはず。それが効かないとか嘘だろ!?
今度は何だ。どんな攻撃が来る?
そう構えていると、周囲の暴風が更に激しさを増した。
その威力で 我々が隠れている岩場が 信じがたい事に揺れ始めた
どれだけの威力なんだと感心するやら呆れるやら・・・・・
揺れる岩から小石が ポロリ・・・と
コンッ・・・
シルちゃんの頭を直撃した。気絶する程では無いが 最悪コブは出来ただろうか
シルちゃんの目には涙が浮かんでいる。
「ム~~~」
そんな泣き声とも掛け声とも付かない声を 少女が発したと思ったら
周囲に直径30センチはあろうかという石が4つ 浮かんでいた
いやちょっと待て。そんな戦艦三笠の主砲並みの物を・・・
そう思った次の瞬間。4つの石、いや 砲弾は消えていた
「「「「ギョエエエエエーーー」」」」
断末魔とも思える咆哮が複数聞こえる
まさか4つ同時に命中させたのか?
魔法とかそう言った物を別にして 一種の才能を感じる
咆哮が止むと 4体のドラゴンは 轟音を周囲に響かせ 倒れた。
「死んだか?」
俺は無意識に そんな事を口にした
ジージ殿が言う
「大丈夫じゃ 大量の魔力放出は止んだが魔力自体は感じられる。死んではおらんよ
と、いうより あのクラスのドラゴンは まず『死ねない』んじゃよ 」
そう笑顔で答えてくれた
「そう言う物ですか・・・」
そう言うのがやっとで 俺の中の常識が全否定され 何だか頭が痛くなってきた。
危険は無いと ジージ殿が言うので その場にいる全員で
ピクリとも動かないドラゴン達に 歩いて近づいてみた。
そのうちの一体に近づき観察してみる
鼻の辺りで規則的な空気の動きがみられる。呼吸しているという事か?
なるほど確かに死んではいないようだ
しかし すなわちコレ危険が無い・・・とはまた話が違う訳で
シルちゃんを見てみると
何やら木の枝でドラゴンを突いたりしている。何とも子供らしい行動か
そしてシルちゃんが ドラゴンの鼻の辺りに近づくと 急にドラゴンの息が荒くなる
シルちゃんの匂いに反応したのだろうか?
シルちゃんは 大きく息を吸い そして叫ぶ
「みんな起きるのーーー」
そんな少女の絶叫から3秒後くらいだろうか、4体のドラゴンが突然消えた。
あの巨体が どこにも無いのである
代わりに4人の少年少女が突然現れ シルちゃんの周りに集まってくる。
そして 座り込んだと思ったら
「「「「ゴメンナサイ」」」」
なんと4人の少年少女は土下座をして シルちゃんに謝っている
日本以外の国、いや異世界だろうか。そんな所で土下座が見られるとは思わなかったな
シルちゃんは その言葉を聞いて満足したのか
4人の少年少女の頭を撫でている
「みんな良い子良い子」
シルちゃんは満足気である
話の流れからすると この4人は ドラゴンの変化した姿なのか?
唯一、問題点を指摘するとすれば
「4人とも 取り合えず服を着ようか」
4人の少年少女は全裸である。
大日本帝国の軍人として それだけはどうしても許せなかった
当なろう小説は実在の人物・団体とは一切関係が御座いません。
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更新情報 4/2
>そう思った次の瞬間。4つの石、いや 岩は消えていた
『岩』を『砲弾』に変更




