総統閣下と手帳 (20170815改訂版)
当なろう小説は 実在する個人・団体等とは一切関係御座いません
※閲覧注意※
胸クソと暴力シーンがあります
更新情報: 3/14
大幅に加筆修正しておりますが、3人称と1人称が混在しております
読みにくいかとは存じますが予めご了承下さい
更新情報: 8/15
フランケンシュタイン城のエピソードを追加しました
ドイツ側の設定が少ないので順次追加しております
気が向きましたら 再度修正が入るかと思います
***** 1889年4月20日・オーストリア/ブラウナウ *****
「オギャーーオギャーー」
「生まれましたよ 元気な男の子」
この日、アロイス・ヒトラーとクララ・ヒトラーの間に四男として男の子が誕生した
アドルフ・ヒトラー である
***** 1899年・ドイツ南東部/パッサウ *****
アドルフは10歳になり 小学校もそろそろ卒業と言う時期、
今日も父の書庫から『普仏戦争』の本を持ち出して読もうとした ある日の事
「ええと普仏戦争の本、普仏戦争の本・・・・・」
アドルフは普仏戦争、プロイセン王国(ドイツの前身)とフランスの戦争を
書いた本を読むのが大変好きであった。
この日も その本を読むべく書庫を漁っていたのだが
「あれ これは何だろ?」
アドルフは 一冊の古びた手帳に興味を示し
手に取って パラパラっと ページをめくってみた
「あはははっ、魔法だって? バカバカしい
・・・・いやまて、そんなバカバカしい物を父が大事に持っているだろうか?
あの父が あり得ない。・・・だったら」
アドルフは その古びた手帳を服の下に隠し、そして外へ持ち出した。
「ハァハァ・・・・ここまで来ればいいよな。
ええと なになに こう手を構えて『火の玉』と唱える?
なんだいコレ 馬鹿らしい。こんなのポイだ」
そう言って アドルフは手帳を投げ捨てた。
***** その日の夜 *****
「おいアドルフ ここにあった手帳を知らないかい?」
「ん 知らないよ 父さん」
「そうか ならいいんだ」
そこでアドルフは はたと考え込む
どうでも良い物を 父が必至で探し回るだろうか・・・と
***** 翌日 *****
「ええと 確かここら辺で投げ捨てたよな・・ああチクショウ」
数分後、アドルフは探す事に飽き 草むらに座り込んでしまう
「あーやってられるかー
『魔法の書』ってんなら 自力で戻って来いってんだ『戻れ!』・・・
なーーんちゃってな。アッハッハ」
数秒後、アドルフの右手に 手帳が握られていた。驚愕するアドルフ
驚愕は 次第に歓喜へと変わった
「はっ、ははは。俺 魔法使いになっちゃったよ」
そして改めて 昨日読んだ内容を実践してみる
「構えて・・・『火の玉!』」
何も起きない
「おかしいなぁ よしっ もう一度、『火の玉!』」
またしても何も起きない
アドルフの無力さを嘲笑うかのように 鳥たちが囀っていた
「くそーー『火の玉!』『火の玉!』『火の玉!』」
そんな様子を 一人の男が静かに見守っていた。
***** その日の夜・ヒトラー家 *****
「アドルフっ 嘘をついたな この馬鹿者めっ」
「『もういい』って言ったじゃないかっ 父さん」
「ええい 屁理屈をっ。今後持ち出しは許さん!」
「父さーーん」
父親から折檻を受け ベッドで泣くアドルフ。
「ぐすっ ぐすっ・・・俺は 魔法使いに選ばれたんだいっ。ぐすっ ぐすっ」
ここでアドルフは 閃く
だったら魔法で取り戻せばいいじゃないかと
「『手帳よ戻れ!』」
昼間やった時と同じように 右手には また手帳は有った
「そうか・・・クックックッ」
時は流れ、父と母とも死別し さらに時は流れ 西暦1916年
第一次世界大戦の最中、アドルフは伝令兵として従軍していた
そんなある日の夜、
「普段から気に入らないんだよ」
「オラオラ 自慢の魔法とやらで俺達を退治してみろっ ギャハハ」
「やっ やめ やめろっ」
酒に酔った勢いなのか 確信犯なのか。
それとも 中世の魔女裁判ごっこの つもりだろうか?
アドルフは 同僚二人に 殴る蹴るの暴力を受けていた
「アハハ これが自慢の手帳か?」
「かっ 返せっ・・・」
「ほーら 悔しかったら 取り返してみなよ ギャハハハ」
「・・・『戻れ!』」
同僚の一人が持っていた手帳が消え、アドルフの手に手帳が握られた
アドルフにとっては いつもの事だが 同僚二人は慌てた
そして驚愕の目で アドルフを見る
「ばっ、化け物」
「いっ、いや 手品かなんかだろ?」
怒りに燃える アドルフ。
怒りに我を忘れて 手帳を握りしめたまま呪文を唱えた
「その男を燃やせ 『火の玉!』 」
なんと、手帳を介して魔法は発動した
「やっ、あっ、あつっ、ギャアアアアアーーーッ」
火は炎と化し 男を包んだかと思うと ものの数秒で灰燼に帰した。
骨すら残らなかった
「ば、化け物っ!」
その光景を見た もう一人の男は 一目散に逃げた が、
「逃がさん 『火の玉!』」
全速力で逃げる男。しかし無情にも火の玉は追いつき この男も灰になる
周囲には静けさが戻った。
アドルフは しばし茫然と立ち尽くすが やがて笑い出す
「はっ・・・はっ、・・・・・アハハハハハハ」
今まで 何をやっても発動しなかった魔法
分かってみれば えてして原因は単純な事だったりするが
アドルフは それが馬鹿らしく そして 嬉しかったのだ
二人の同僚が失われた事など微塵も気にせず アドルフは夜の闇の中へ消えていった
***** 西暦1934年 秋 *****
***** ドイツ・フランクフルトから南へ 35km *****
***** フランケンシュタイン城 *****
ナチス党が政権の座に着いてから1年
「探せ~っ! 壁でも床でも 天井でも 怪しそうな所は全て調べろ」
老SS大佐の怒号が響き渡る
「おい ここだ 手伝ってくれ」
「こっちにも誰か来てくれ~」
「うわっ ネズミが いっぱいだ~」
大量に雪崩れ込んで来た 親衛隊隊員たちが
城のありとあらゆる所を、ある者は穴を掘り ある者は壁を叩き
また ある者は ひたすらウロウロと歩き回る
そして 2,3時間の時が過ぎ
「大佐殿、こちらへ」
「なんだ 何か見つかったか?」
「はっ かなり古く 白骨化した遺体が見つかりました
そこで妙な物を発見しました」
「分った 行こう」
老大佐と将校は 城の一角に掘られた穴へと向かう
「これは・・・」
深さ2m程度に掘られた穴から 棺が出てきており
棺の中には当然 遺体が横たわっているが
その棺の主の手には 何やら 本のような物が握られていた
その本は 何故か古さを感じさせず『たった今ここへ置いた』ような真新しさがった
それを見た 老大佐は
「ふむ どれどれ」
普通は躊躇するところであろうが、そこは年期の差だろうか
そこらのテーブルの上の物を取るような感覚で 遺体の手から それを奪い取った
そして おもむろにページを捲ると 途端に表情が明るくなった。
「ふっふっふっ これだ。これを探していたんだ
これで魔法の研究が捗るだろう。総統閣下もお喜びになるぞ」
そこには老大佐の歓喜の声が響き渡っていた
***** 西暦1938年、フランケンシュタイン城へと続く道 *****
アドルフ・ヒトラーは ドイツにおいて最高権力者として君臨していた
そんな ある日、ドイツのある場所へ 視察に訪れようとしていた
「アドルフ 私の手帳を知らないか?」
・・・誰だ。
「アドルフ 私の手帳を返してくれないか?」
・・・うるさい。ワシは眠いのだ
「アドルフ さあ お父さんに返しておくれ」
・・・ワシに指図するなっ
「アドルフ・・・アドルフ・・・」
「総統・・・総統閣下、お疲れのところ恐れ入ります」
ん!? ワシとした事が 寝ていたか。
「あ、ああ 済まない」
「間もなく視察先に到着します」
ここは移動中の車内。隣にゲッベルスが座り
助手席と運転席にSS(親衛隊)隊員が居る
助手席に座るSS隊員が 居眠りなど無かったかのように
柔和な笑顔で予定を告げる
「総統閣下 居眠りできる乗り心地は 我がドイツの誇りですぞ」
隣に座る 宣伝相・ゲッベルスが
空気を読んでか読まずか そんな事を言ってくる
どういうつもりかは分らんが とにかく目は覚めた。
少々バカバカしく思ったが
「ああそうだな」
と、気のない返事を返す
そんなやり取りをしていると 車が減速し、停まる
目的地についたようだ
助手席のSS隊員が 後部座席の扉を開ける
「足元にお気を付け下さい」
ゲッベルスが降り ワシも降りる
改めて 視察する施設を見上げる
見た目は没落貴族の廃屋敷。
しかし崩壊した城壁は修復され 屋内施設も徐々に復旧されつつあった
なるほど 一見したくらいでは研究施設に見えないな
SSの一人に案内され 両開きの扉のある部屋の前まで案内される
「済まないが ここから先はワシと研究者達だけだ SSとゲッベルス君は待機だ」
ゲッベルスは不満そうな表情を一瞬だけ見せたが すぐに納得したようだ。
ワシを先頭に 黒魔術的な衣装を纏った数名が 扉の前へ並び終わった
いよいよだな。
ワシはドアノブを回し 勢いよく扉を開け、中へ入った。
しばらく真っ暗な空間を歩く
手を前に出し 触角を頼りに 障害物の有無を確認する
踏みしめる足も 床の感触を確認しながら 一歩一歩前へ進む
「おやっ」
ある時から 堅い床の感覚から 小石の転がる地面へと 感触が変わっていた
警戒しながら 更に進むと 光が見えてきた
自分でも興奮を抑えきれない
「ワシはこの日を・・・長年この日を待ったのだ」
目の前が突然明るくなった。余りの明るさに目を閉じる
暗闇から突然明るいところへ出た関係だろう
閉じてしまった瞼を 恐る恐る ゆっくり開けてみる
緑いっぱいの風景が広がっていた。
どこにでもある森の風景・・・いや違う ここは地球ではない
感じる、感じるぞ 力がみなぎってくる
右手を真っすぐ前に伸ばし
『火の玉!』
呪文を唱えみたが 何も起きなかった
手帳が無いとダメなのか
再度試してみる
『火の玉!』
ダメなようだ。
そうだな・・・この世界にある物で 手帳の代替になりそうな物
「おっ そうだコレでいい」
手近にあった 木の枝を指揮棒のように構えてみる
手帳とは紙、紙は木材から作られる。ならばこの世界の樹木なら・・・
『火の玉!』
ボワッ
ほんの一瞬、それは光ったのだ。いや わずかだが燃えたのだ
後ろに控えている研究者達から どよめきが上がる。
ワシは震えた 心底震えた
父の手帳ほどでは無いが この世界の樹木を使えば確かに魔法は発動する
恐らくは【世界樹】なる物を使えば より大きな成果が得られよう
「やったぞ。大変な躍進だ」
研究者たちへ向き直ると ワシは言う
「研究を継続せよ さすれば 世界は我らの物となる」
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翌年の 西暦1939年9月1日。ドイツはポーランドへ侵攻し
第二次世界大戦が幕を開けた
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