EP:6 青年との出会い
——先刻の場所へ戻ると、鮮血で、深紅色に染まった草を食べようとする馬と、その馬に引かれる荷馬車の様なものに乗った一人の青年がいた。
「え、えぇ…なんでこんなに死体があるの…」
どうやら先程の叫び声は彼の様だ。しかし参った。今出て行くと下手に疑われかねない。ここは少し様子見とするか。
「こ、これじゃ通れないっすよぉー!」
そんなことを叫びながら青年がワタワタしていると、草を食んでいた馬が警戒する様にこちらをじーっと見つめてきた。
そろそろまずいか、適当にごまかしと近くの人里にでも案内してもらおう。
ガサガサと音を立てて青年の元へ出ようとすると青年は
「ひっ…」
と小さな悲鳴を上げ、こちらを見つめる。俺が姿を現すと、青年はなぜか安堵した様な表情を浮かべて、こちらへ歩いてきた。
「なんだ、冒険者の方ですか…」
…ん?冒険者?
「おい、なんだ冒険者って」
「へ?だって鎧と剣…」
どうやら俺を冒険者とやらと勘違いしている様だ。
「悪いが俺は冒険者じゃない。それよりこの死体を退かすから近くの町やら村まで案内してくれ」
さりげなく本題に入ってみた。
「あ、あぁ、それなら問題ないですけどこのサイズの死体を一人で…ですか?」
「勿論だ。」
おずおずと聞いてくる青年に少し苛立ちを感じながら俺は答えた。
「さ、さすがにそれは難しくないですか?冒険者ならともかく…できるんですか?」
「できる」
確証はないが、なんとなくできる気がする。いや、できる。だからできると答えた。
少しの間をおいて、青年が
「じ、じゃあお願いします。」
と言ってきた。
俺は黙って死体へ近づくと、そのまま、持ち上げる様に抱えた。次の瞬間
「フンッ!!」
という気合いとともに、その巨体を持ち上げる事に成功した。
ベチャベチャという様な気持ち悪い感覚に襲われながらも、俺はなんとかその巨体を退けた。
その様子を見ていた青年が驚きと尊敬の目を向け、こちらへ駆け寄ってきた。
「す、すごいです!!あんな巨体を退かすなんて!筋力値どれだけあるんですか!?」
ーー筋力値?聞き慣れない単語が出てきたがそれはまぁ、後でいいだろう。
正直、自分でもできるとは思わなかった。しかし、あの時湧いた謎の自信に突き動かされ、現状、俺は大ゴブリンの死体を退ける事に成功した訳である。
「そんなことより、早く案内してくれ、クタクタなんだ。」
「す、すみません、では馬車に乗ってください!」
若干の苛立ちを交えて、文句を言うと青年が肩を竦めて、申し訳なさそうに、謝罪をし、馬車の乗り口へ案内してもらった。
ああ、町に着いたらシャワー浴びたい…そんなことを考えながら、俺は馬車へ乗り込んだ。
いやぁー、会話文って難しいんですね(白目)