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ケモミミ御者

親愛なる君へ


 やぁ、こないだは同意がもらえて嬉しかった。そう、運命は人の数だけあって、彼我の運命がかみ合えば出会うのさ。運命の女神の微笑と供に。


 ヘリオス=ターレットだ。最近よく私の略称を耳にするのだが、どうも私のことではないようではあるが、少々気になる。あちらこちらで私の略称が聞こえると、つい振り向いてしまうのだ。そこに私の運命があるのではないか、とね。


 先日の"ひしょ”だが、何でも鬼族の"じむしょ”の解散と共に実家に帰ったらしい事を聞いた。

 鬼族の解散も驚いたが、最近妙に田舎や実家に帰る亜人が多いような気がするのだ。身分が低いだけで奴隷ではないからそれくらいの自由はあるのかとも思うけど、どうにも多すぎる……


 おっと、そんな事は君には関係ないだろう、話がそれてしまってすまない。


 実は先日小旅行をしてね、城下から出たのは久しぶりで近くの湖畔まで行ってきたのだが、そこで私は運命の出会いを果たしたのだ。

 と、いっても湖畔で出会ったのではない。たまたま雇い入れた馬車の御者がケモミミ女子であったのだ。


 垂れたふさふさの耳に、馬の歩調に合わせるかのようなゆっくりとした話し方、私と話すたびにその目を輝かせて、尻尾をぶんぶんと振ってくれるから、私も話甲斐があって、実に楽しい旅行になった。


 旅先での出会いというのは、また格別に運命を感じるものだ。


 小旅行、だから日帰りではあったが、終始彼女とのおしゃべりに興じた。彼女は実に物知りで、観光案内に淀みがなく、こちらの質問にもすぐさま答えてくれる聡明な女性であった。

 それでいて、湖畔の由来を話す時などは情熱的で、ついそんな彼女を褒めると、恥じらいと共に、淑やかな面をみせてくれたりで、本当に楽しかった。

 別れ際には


「次も、是非是非! ウチを雇ってくださいね!」


と名前の書かれた紙まで渡してくれた。


 少しおっちょこちょいなのか、紙には名前しか書かれておらず、連絡先は書いていなかった。

 そんなおっちょこちょいなところも実に愛らしい。

 それにしても、少し変わった名前で、何か、どこぞの施設か商店のような名前だが、そういう名前もあるのだろう。


 まぁ、それはさておき、また小旅行を計画して彼女に会いにいき、今度は私の専属御者として雇い入れ、そしていつしか二人は愛の小旅行へと出かけるのだ。


 彼女と共に、馬車に揺られて、人生という壮大な旅を二人で歩んでいく、実に素晴らしい人生だとはおもわないかね?

 そうと決まれば、小旅行の準備をしなくては。


 これから忙しくなるからしばらく手紙を送ることはできないだろうが、君にも私の、いや私達の人生の小旅行を見送ってもらいたい。


 それでは、また


ヘリオス=ターレットより

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