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ケモミミウェイトレス

親愛なる君へ


 やぁ、ヘリオス=ターレットだ。


 先日は真摯な君の意見をありがとう。


 実は彼女は亜人の婚約者がいたらしくて、残念ながら婚姻を結ぶ事はできなかったよ。

 政治的な事も絡むからね、仕方ないね。


 でも、彼女はきっと私を好いていてくれたと思う。無邪気な振る舞いにそれがにじみ出ていたのだろう。

 その気持ちだけでも嬉しいと私は思う。


 さて、それはさておき、先日の事だが、姫に婚約者がいる事がわかって落ち込んでいた私を気遣って友人が新しく出来た喫茶室なる市井の施設へ誘ってくれたので、そこへ足を運んだのだ。


 そこで私は運命の出会いをしてしまった。


 その喫茶室では亜人の娘が多く働いていたのだが、私の給仕に来てくれた褐色肌の娘が、その運命だった。


 こざっぱりとしたショートカットの種族特有の赤い髪に、つぶらな瞳。そして整った形の耳と長くふさふさな尻尾。

 三角のその耳はとてもキュートで、愛らしいの一言に尽きる。


「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」


 どうみても二人しかいないのだが、改めて確認してくる慎重さ。


「こちらへどうぞ、ご注文はいかがなさいますか?」


 緊張した面持ちで私を見つめてくるその瞳には、真摯さが窺える。

 

「オーダー繰り返します」


 すこし慎重すぎやしないか、とも思うが、それだけ失礼の無いようにしていると言う事なのだろう。


「ごゆっくりどうぞ」


 音を立てないようにテーブルの上に置かれたティーカップ。実に優雅でかつ気遣いの出来る素晴らしい女性だ。


 私が彼女の顔を見上げると、ニコリと好意に満ち満ちた笑顔をしてくれた。


 これは、彼女にとっても青天の霹靂、運命の出会いだったのだろう。


 それから私は彼女の一挙一動に釘付けだった。


 銀のトレイを持って店内を駆け回る彼女。小動物のようにキビキビと動くさまは、とても仕事熱心に見えてとても好感が持てる。給仕が一段落して壁際で他の給仕と笑顔で会話する彼女は時折、私の方をちらちらと見ながら気になっている様子だった。


 友人は「エプロンドレスの制服なんて珍しい」と言っていた。そう、フリルのついたエプロンのようなコスチュームで、一見我が屋敷にもいるメイドにもみえるのだが、形が少し違うため違和感を覚えていた。これはこれで給仕専門の仕立て屋がいるらしい。

 彼女の活発な雰囲気と、エプロンドレスの組み合わせは、清楚と活発が同居してとてもとてもまぶしい感じがした。褐色の肌がよりその活力の高さをうかがわせてやまない。


 彼女を嫁にもらい、南方の暑いところでのんびり過ごすのはどうだろうか?


 友人は苦笑していたが、私は彼女を呼び、勘定と南へのお誘いをしたのだが、


「お客様、困ります」


 と言われてしまった。

 けれど、その頬は紅潮していたし、手応えを感じた私は、身分と名前を名乗り、彼女を南ではなく改めて食事に誘った。


「えと……すみません」


 彼女は困ったような、けれど笑顔で断りを入れてきたが、私の名前を書いた紙を渡しておいたので、間もなく連絡が来るのは間違いないだろう。


 まずは食事先の手配をしなければ。国でも一番のところに連れて行こう。

 食事をして、それから彼女に求婚をしなければ。

 彼女は間違いなく受けれいれてくれるだろう。私はケモミミの気遣いのできる素晴らしい嫁をもらう事になるのだ。


 これから忙しくなるからしばらく手紙を送ることはできないだろうが、君にも私の、いや私達の幸せを祝福してもらいたい。


 それでは、また


ヘリオス=ターレットより

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