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ドワーフの娘

親愛なる君へ。


 やぁ、よく私の居場所がわかったものだ。配達人というのは凄いのだな。守秘義務があると言っていたから場所が割れることもないだろうが、用心に越した事はない。君も気をつけてくれ。


 ヘリオス=ターレットだ。私が今いる場所なのだが、そこでは私の略称は神々しい、という意味らしい。どうでもいいね。


 さて、君が危惧していた通り、金の切れ目が縁の切れ目、冒険者は金にうるさい、ケモミミ冒険者の彼女はすでに私の下にいない。と思った?

 残念、まだいまーす。私が貴族の次男坊だとわかったら、帰ってから父上に談判するんだそうだ。


 まぁ、彼女を嫁にできるかできないかは、これからに掛かってるわけだな!


 ところで、私が今いるのはとある鉱山都市の宿屋だ。一応断っておくが、彼女と私は別の部屋だぞ。結婚前の男女が同じ部屋に寝るなど、実に嘆かわしい話だからな。向こうは気にしないといっていたのだが、これは私の矜持でもある。

 無論、経費として後で請求されるのだけれど。


 さて、今回逃避行中ながらも筆を取ったのは君に相談したい事があったからだ。

 ここ、鉱山都市はドワーフの本拠地でもあるのだが、そこで私は一人の少女に付き纏われている。


 ケモミミ冒険者の剣の手入れのためにとある鍛冶屋に行った時のことなのだが、そこで剣の打ち直しをまっていると、少女が一人私の傍にやってきて、服の裾を掴んで離してくれない。


「にいちゃん、気にいられたなぁ! いや、めずらしい」


 剣を打ち終えたドワーフの鍛冶師が顔をほころばせながらやってきてそういうのだが、私としてはまったく事態が飲み込めないでいる。


「いや、あのですね」

「そいつは俺の娘で、人見知りがはげしくてなぁ。そろそろ嫁に行く年頃だってのに、難しくてな」


豪快にドワーフのおっさんは笑う。なんとなく裾のつかみが強くなった気がする。


「いいぞぉ、兄ちゃんになら。なんせ娘が気に入った男だからな、がっはっは」


 いや、私の気持ちはどうなるんですかね。


 ドワーフの娘は、見た目は悪くない、というか亜人特有の美少女っぷりだ。背は低くて、顔も童顔だから子供のようにも見えるのだが、おっさんの話ではこれでも結婚適齢期なのだという。


 しかし、勿論彼女には、ぴこぴこ動くふっさふさの毛で覆われた耳もなければ尻尾もない。

 それに一緒にいるケモミミ冒険者、彼女に誤解されてもかなわない。


 私の採れる選択肢はただ一つである。


「あの」

「ちなみに断ったら殺すからな」

「えっ」


 選択肢は粉々に粉砕されてしまった。


 そんなわけで君の助言が欲しくて連絡したのだ。今も彼女は私の裾を掴んで、何を書いているの、という目で見ている。


 助けて。


 しばらく手紙を送ることができないかもしれないが、無事を祈っててくれ。助言お願いします。


たすけて


ヘリオス=ターレットより

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