ケモミミ食堂
親愛なる君へ
やぁ、先日は退院祝いをありがとう。君が音楽好きとは知らなかった。いただいた演奏会のチケットは友人を誘っていこうと思う。
ヘリオス=ターレットだ。略すならかっこよく略して欲しいものだ。略さなくていいんですよ?
さて、先日のケモミミ歌手だが、彼女はその後とある劇団にスカウトされて歌手としてデビューしてしまい、遠い所に行ってしまった。私の手の届かない所へ。
けれど、彼女が成功したのは間違いないのだろうから、一ファンとして彼女を応援していこうと思う。
ところで、彼女の最後の路上での歌を遠目から聞いた後、私はなんとなくお酒が飲みたいと思って、近くの店に入ったのだ。
そこで私は運命の出会いをしてしまった。
私の失恋ソングを吹き飛ばすような、すごい出会いだった。
私が入ったのは何とかのスプーンとかいう食堂で、そこでは沢山のケモミミが働いていたのだ。
その中に、一見少年と見間違うようなボーイッシュな雰囲気で誰より一層働いていたのが、彼女だ。
以前の喫茶室での彼女をを彷彿とさせる働き方であるが、顔は似ていないし、種族も違う。けれど、一生懸命に働いている姿は胸を打つものがあった。
三角の耳にふさふさの毛、加護のある獣の血が濃いのか、長い髭が両頬に3本ずつでていて、鼻も獣に近いが、それですら彼女の美少女っぷりを引き立てるものであった。
しかも――
「お客様! 何名ですにゃ!?」
一瞬私は偽者なのではないかと疑ってしまった。だって、私が知る限りケモミミは語尾に自分の加護の動物の鳴き声をつけたりしないからだ。
けれど、彼女はそれを語尾につける。
いや、彼女だけではなく周りの店員達もまた、ワンだのぴょんだのつけて話していた。
ぴょんって鳴き声ですらないだろう。
けれど、彼女の耳も尻尾もピコピコと動いているし、何より、私の勘と目が本物だと告げているのだから、彼女らは間違いなく本物のケモミミである。
それにしても、何と言うのだろう。私は最初は「にゃん」だの「わん」だの「ぴょん」だのを語尾につけるのは邪道だと思っていた。
思っていた、のだが、そういう風に語尾をつけられると、何故だか、心地が良い。
彼女らの可愛さがより引き立たされたような気がして、その食堂で働く皆が皆輝いて見えたのだ。
邪道だと決め付けていた自分が恥ずかしい。なんて愚かだったんだ。
私は、その食堂で出されたハートマークの絵が描かれたオムライスを食べながら、心に決めた。
この店を買い取って、私の屋敷に併設しよう、と。
そして、私はにゃんわんぴょんの皆々と楽しい食堂ライフを送るのだ。
この国では幸い一夫多妻が認められているから、法律上の問題はない。世界初のケモミミハーレムができあがるのだ。もちろん私は皆を平等に愛する自身がある。しかも熱烈に、だ。
さて、これから食堂とハーレムの建設計画を立てなければなるまい。
これから忙しくなるからしばらく手紙を送ることはできないだろうが、君にも私の、いや私達のイチャラブハーレムの完成を祝福して欲しい。
それでは、また
ヘリオス=ターレットより