表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/27

エルフの姫

親愛なる君へ


 やぁ、酒は飲みすぎるとよくない、君の言うとおりだった。種類がたくさんあるからと、飲み比べているうちにいつの間にか朝だし、頭は痛いし……


 ヘリオス=ターレットだ。私の略称については言うまでもないだろう。私の兄だが、彼は名前をマーヴィン=ターレットという。略してマタレ、だ。常に人を待たせていそうだろう?

 まぁ、何だか侮辱的な響きになる私の略称よりはましだがね。


 先日のお酒の店だが……あれは止めにしたよ。私自身がお酒に強くないのもあるが、法律がややこしいらしくて、屋敷内といえど作るのは難しいということだった。

 加えてあの店で問題が起きたらしく、閉店してしまって、彼女の行方もそれっきりだ。

 絶対彼女は私と気が会うと思っていたのに、残念だ。


 その後、私は登城の仕事で王城へと行って来たのだが……少しばかり困った事になって、また君の助言が欲しくて筆を取った次第だ。


 実は登城の際にエルフの娘と出会ったのだが、それが問題でな。

 彼女はエルフの姫君であったのだが、彼女は私を見るなりツカツカと歩み寄ってきて、


「この女たらし!」


と叫んだのだ。


 まるで意味がわからない。私は女性をたらしこんだ事など一度たりとてないし、むしろその逆で、すれ違いやあと一歩の所で残念な事になっているばかりだ。それは君も良く知っていることだろうけれど。


 憎憎しげに語る彼女に、私は思わず、


「すみません、人違いでは?」


と言ったのだが、名前を確認され、やはり


「女たらし!」


というのだ。


 流石に王城でそういう侮辱は大変不名誉だし、けれど身に覚えがないので私は困ってしまった。

弁解すべき事も言い訳すべき事も何もないから、何も言わずに睨んでくるエルフの姫君を見つめる事しかできない。

 やがて彼女は顔を真っ赤にするほど怒りを表して、それから何も言わずにそっぽをむいてまたツカツカと歩いていってしまった。従者らしき何人かの娘が私に頭を下げて彼女を追いかけていったが、一体なんだったんだろう?


 少し変わった姫なのかもしれない。

 私の甘いマスクが女たらしに見えるのだろか?


 国王も周りの貴族も別段彼女のいう事を気にすることもなく笑っていたのだが、とにもかくにも謎は深まるばかり。


 かといって、あのまま「女たらし」と吹聴されては流石に風評被害になることもある。

 私の運命の人が、運命とは知らずに風評だけで離れていってしまうかもしれない。


 それは非常に困る。


 この場合、彼女のご機嫌をとるべきなのだろうか?

 それとも、彼女のいうように、彼女をたらしこむべきなのだろうか。なんていっても私にはそんな話術も技術もないから一体どうしたものか……


 騒動を聞きつけた父上から、謹慎を言い渡されたので、しばらく手紙を送ることはできないだろうが、君も私の誤解が、いや私の誤解と風評被害が収まるよう祈っていて欲しい。


 それでは、また


ヘリオス=ターレットより

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ