ケモミミスナック
親愛なる君へ
やぁ、先日の本喜んでくれて嬉しいよ。笑顔の話ばかりで冒険譚が全く出てこない変な勇者の話ではあるが私も気に入っている。
ヘリオス=ターレットだ。もし仮に私が略称を許せるとすれば、未来の私のケモミミ嫁か君くらいだろう。でも出来れば略さないでくれると助かる。
何だか凄い事になったのだ。
先日の図書館にまた出かけたのだが、建物ごと忽然となくなっていた。まるでキツネに化かされたかと思って近隣住民の皆様に聞いたところ、なんでも大規模移転をしたらしい。我が屋敷に設置するはずだった小規模な図書館計画は水泡に帰してしまったが、彼女はかなりの本好きであるから、屋敷の小さな図書館よりは、あの図書館にいたほうがずっと輝いていただろう。ぐすん負け惜しみじゃないんだからね。
そうだ、君はお酒は嗜むのかね?
私はさほど強くもないし、本当に時々飲む程度なのだが、先日友人に連れられて行った酒を出す店で私は運命の出会いを果たす事になった。
ああ、誤解しないでくれたまえ、いかがわしい店ではなく、酒に酔っ払った客の話相手をしてくれる店員のいるお店だ。友人がおさわりとかなんとか言っていたけれど、私は触ってもいないし、そもそもそういう店ではないと看板に書いてあったから健全なお店だ。
まぁ、少々刺激的な服装の女性がたくさんいて、以前に行った事のあるケモミミアクセを実際につけて見せてくれた店に雰囲気が似ていた。
その中に、私の運命の人がいたのだ。
「はじめまして!」
笑顔で私達を迎えてくれたそのケモミミは、とても可愛い名前を名乗った。まさにその愛くるしい雰囲気にぴったりの名前だった。
私が彼女の毛並みを褒めると、「自慢の毛並みなんです!」 と嬉しそうに笑っていた。
長い黒髪に、情熱的な赤い瞳。黒髪とは対照的に銀色の毛に包まれたピンと直立した長い耳と丸い尻尾。あの姫と同じ種族のようだったが、こちらは落ち着いた大人の雰囲気と少女の無邪気さを併せ持った、そしてとても積極的な女性だった。
聞き上手でもあるし、話し上手でもあるから会話が途切れる事がない。
実に楽しい時間を凄したよ。
刺激的な服装については、
「こういう決まりなので」
と顔を赤らめていたから、好き好んで着ているという訳でもないようだ。仕事なら仕方ない。
それはともかく、私は決心をした。
これだけ長い時間途切れる事なく会話できる女性はそうはいないだろう。それだけ私と彼女の相性がいいのだ。
屋敷にこういう"すなっく”と呼ばれる小さな店を作り、私専属の店にしようと思う。
勿論店員は彼女だけ。
雰囲気のある店内で、私と彼女は酒を飲みながらいつまでもおしゃべりをするのだ。
やがてそれは店から飛び出して、いつでもどこでも私と楽しくおしゃべりをする彼女。
ああ、決して途切れる事のない楽しいおしゃべりの毎日、場所を選ばないいつでもどこでもしゃべる場!
早速お店建築の段取りを組まねばなるまい。酒の種類も出来るだけ豊富に。
これから忙しくなるからしばらく手紙を送ることはできないだろうが、君にも私の、いや私達のしゃべる場で是非おしゃべりをしていってほしい。
それでは、また
ヘリオス=ターレットより