ケモミミを探して
親愛なる君へ
やぁ、初めまして。
私は、ヘリオス=ターレットという者だ。良く“ヘタレ”と略されるが、何だか侮辱されている気分になるので、出来れば略さないで欲しい。
ターレット伯爵家の次男にして、眉目秀麗、容姿端麗、成績優秀、ぶんぶん両道に違いない私は、人とは違う嗜好を持っている。
――亜人好き
亜人と一口に言っても、耳長族、や獣人族を初めとして、様々な種類がある。
彼らは我々人族と対等ではない。それよりも下、奴隷、とまでは行かないが、身分は低いものとされてきた。なぜならば、数十年前に起きた人間族と亜人の戦争で、亜人側は敗北し無条件降伏を行ったからだ。
その際の約定で、彼らはわが王国に数年置きに奉公という名の人質を贈る羽目になった。
彼らは憎しみと哀れみの目で人間達から見られ、買われ、こき使われていた。
虐待を受けているという話も聞いた事がある。
とにかく彼らに対する扱いはあまり良いものではない、とだけいっておこう。
けれど私はそんな亜人が大好きだった。
特に、獣人族の中で、人に姿が近いものの、耳や尾は獣のままの種族が大好きだ。
あのふさふさした獣の耳や尻尾、かつそれを持っているのは美少女だったり美男子だったりするのだ。
そう、亜人というのは人族から見た場合、非常に見目麗しい場合が多い。いや、不細工な亜人なんて見たことがない。亜人最強と呼ばれる鬼族ですら美男美女ぞろいだ。
とにかく彼らの中でこそ優劣はあるだろうが、人族から見たら全体的にまったくもってけしからん種族なのである。
色々と。
まぁ、そんな事は知っているだろうし、私が亜人好きだというのはわかってもらえたかと思う。
何故こんな話をするのかといえば、実はここからが君に相談したくて筆を取った次第なのだ。
実は先日、父上から召喚されたのだが、「お前もいい歳なんだから嫁を貰え」といくつもの肖像画を渡された。
どれも見目麗しい女性で、まぁ、肖像画だから何割か増しで描いてはいるだろうけれど、とにかく経歴や家柄もすばらしいものであった。
けれど、そのどれを見ても私は満足出来ない。
そう彼女らにはふさふさする耳も、愛らしく振り回す尻尾もないからだ。
ああ、異常者扱いなんかやめてくれよ、ここまで読んでくれた私と君の仲ではないか。
とにかく、私は獣の耳や尻尾を持った女性を嫁に迎えたいのだ。
けれど、それを正直に話してしまえば父上もお怒りになるだろう。何せ身分が違う。種族も違う。
もし、仮に嫁に迎えることができるとすれば、亜人の中でもかなり位の高い者になるだろうが、それは私としては嫌なのだ。
今わがままだと思ったんじゃないのかね?
そうではないのだ。身分の高い亜人はほぼ皇室に抑えられているし、はねっかえりも多いと聞く。
私としては、淑やかで、清楚で、でも時に情熱的で、時に従順で、そして聡明なケモミミの嫁が欲しいのだ。因みにケモミミというのは私が作った造語で獣の耳と略してケモミミ、獣の耳を持った種族全体の事を指している。
余りに要求が多いので、理想が高い! と君は辟易しているかもしれないな。
だから、私は決めたのだよ。
理想の嫁を探す旅に出る、と――
ヘリオス=ターレットより。