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 通話の後、氷華からすぐに送られてきたメールに添付されてきた位置情報は、彼らのいるところから割と近かった。というか、ほとんど目の前だった。


「一応、先輩の瞬間移動テレポートは使えますけど、あんまり目立つのも良くないですし、この距離なら徒歩で行けますよね」


 外には、まばらに人がいる。美女と美男子という、些か注目を集める二人なだけに(はる子は周りからは見えていない)、突然消えるというのは、いくら魔法使用の許可が下りたとはいえあままりよろしくない。

 秘都美も周平の意見に賛成し、都合良く起きたはる子と手をつなぐと、周平は目的地の方へと歩き出した。

 といっても、一番近い入り口から建物の中へと入り、左に折れて数十メートル歩けば目的地である。

 こんなもんで良いのか?

 何か起こるのではないか?

 なんていう心配事を余所に、彼らはすんなりと目的地に着いてしまった。

 行き先は、アパレルショップの試着室から繋がっている隠し通路から入ることのできる喫茶店だった。こんな見つけにくいところにこんなものを作ってどうするんだ? と思う周平だったが、意外にも店内には幾つかの人影があった。


「なんか大人っぽい店だね」

「そうっすね。先輩のはちょっと早いかも」

「そ、そんなこと無いわよ!!私は大人なんだもん!!」

「そうでしたね。俺よりひとつだけお姉さんですもんね〜」

「そういう風に言われると逆にお姉さんって言わせてる気がしてなんかむかつく……」


 そんなことを言いながら、周平と秘都美とはる子はあいていた四人席に腰を下ろした。店内の客はいると言っても少なく、普通に見れば二人組の周平たちが四人組のところに座っても、特に気にされることはなかった。


「ご注文はいかがいたしますか?」


 ウェスタ―の女性が近づいてきて、メニューを渡す。ザッと目を通してから、周平と秘都美は注文を取った。


「アイスコーヒーで」

「じゃあ、私はオレンジジュースで」


 ウェスタ―の女性は、かしこまりました。と言うと、メニューを持ってカウンターの方へ帰って行く。


「なかなかの美人」

「シュウくん?」

「分かってるって。秘都美が俺にとっては先輩がいちばんですよ~?」

「そうじゃなくって、向こうの人」


 そう言った、秘都美の目線の先には、若い女性と、青年の姿があった。女性の方が、目配せをしてにっこりと笑うと、二人は席を立ってこちら側に歩いてきた。


「どうも。天白家の傍流、雨城うじょう家の長女、雨城うじょう百合子ももこです。同席してもよろしいですか?」


 雨城と名乗った女性は、にっこりと笑ってそう言った。

 その顔と、位置情報とともに送られてきた、天白家の手のものという顔写真が一致していることを確かめて、少年は彼女と、そしてもう一人の青年の同席を許した。秘都美を自分の横に座らせて、目の前の二人に見えているのかどうか分からないが、はる子を秘都美の膝の上に座らせた。


「天白家傍流、米雲よねぐも家の次男。米雲よねぐも善助ぜんすけだ。よしろしく」


 頭を下げる米雲に、周平と秘都美はつられて頭を下げた。


「久しぶりね秘都美ちゃん」

「お久しぶりです、百合子さん。半年月ぶりでしょうか」

「そうねぇ。この間会ったのが冬の五師八弟の会議だったから、そのくらいになるかしら」

「お元気そうで何よりです。それより、お座りください」


 と、対面の挨拶はこれで終わる。


「単刀直入に言わせていただきますと、私たちの任務は、聡音はる子の保護、及びあなた方二名の保護です」

「それについては了解しています。私と周平くんは、以後、天白家の保護を受け入れ、雨城さんに従います」

「わかりました。周平くんもよろしいですか」

「…………了解です」

「それでは、避難経路についっ!!!!!」


 カランコロンと、周平たちにとっては映画の中でしか聞いたことの無い音がして、しかし、ただそのだけで、音雨城が話半ばで、言葉を切った理由には大いになりえた。なにしろ、卵くらいの鉄の塊は、この喫茶店中を破壊するのに十分な威力を持っているのだから。


「守って!!!!!!」


 雨城の声が響き、店内は光と爆音が放たれた。





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