八十九巻目 時空局の運用
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「みきぃ~」
カレーを食べ終わり、水を飲みながら一服(煙草は吸ったことないから、そういう意味じゃないよ)していると、犬がこれまた何とも言えないような声で私の名前を呼んできた。
「何よ?」
私は、少しだけ無愛想に言葉を返す。普通の人であればこんな風に無愛想に言葉を返されたら、少しだけ「なんだこいつ?」となるかもしれないが、犬に関してはこんな風に無愛想に返すと目をランランに輝かせるのだった。なんでだろうね?
犬は、自分が持っている携帯電話を操作して開いた画面を私に見せてきた。
「今日の午後のステージ中止だって! それで、今日の深夜にステージやるらしいよ!!」
犬はニコニコしながらそのことを伝えてきてくれた。ちょっとだけ犬がかわいいかもしれないと思った私は、やばいかもしれない。もしかしたら勝手に犬に洗脳をされているのかもしれないな。
「そうなの・・・」
犬はニコニコしていて、私としても休みが増えることはうれしかったけれどもこれから途方もないほどの時間をどういう風にして過ごそうか、ちょっとばかり考えてしまうとちょっとばかりため息なんかをついてしまうな。
「ねぇ、美希!」
また、犬が大きな声で私の名前を呼ぶ。ここは店の中なんだからもう少し自重してほしいものだ。
「なに?」 とりあえず、私は犬に聞き返す。
すると、犬は鼻息を荒くして異常なまでに自信気な顔をしてこう言った。
「デートしよう! 秋葉原を私と一緒に!!!!」
・・・さて、どこをどうツッコんだらいいんだろうな。私としては別にツッコまなくてもいいんだけれども、突っ込まないとなにか、人として大事なものを失ってしまう気がするんだ。
なにか・・・とても・・・大事なものをなくしてしまいそうだ。
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「都市伝説というくくりの中では、皆さんも一度は聞いたことがあると思います。多々ある都市伝説の中には、すでにタイムマシンは発明されているとか、運用されているとかそういう情報も出回っていますが、今までだったら私の立場であったらあっているとも、間違っているとも言えませんでした。しかし、いまだったらはっきり言えます。タイムマシンは事実発明されていて、運用されているのです」
うん、それはさっきも聞いた。さっきの言い方をちょっとばかり変えただけで、まだ本題には入っていなかった。
少し、いらいらしながら見ているとがたいのいいおとこは一呼吸おいて、一つ咳ばらいをしてようやく本題に入ったのだ。
「本日より、タイムマシンの開発と運用を規制するために国を中心とした施設、時空局の運用を始めさせていただきます」




