七十九巻目 可愛い天使
「みきぃ~、そろそろ私のこともかまってよ!」
さっきから私の周りをわさわさ動き回っていて私がそれをずーっと無視をし続けていたのだが、どうやら業を煮やして話しかけてきた。
頬をぷくーっと膨らまして、私の事を見てくる。ものすごく、訴えかける目で見てくるのだ。
さすがの私も、こんな目をされてしまっては無視するのも気まずくなってしまう。
だから一言だけ、「なに?」と彼女に聞くことにした。
すると彼女は声量を大きくして「かまって!」といってくるじゃないか。
まったく、とんだかまってちゃんだ。
※※※※
「お待たせいたしました! カレーライスでございます」
「待ってました!」
可愛い女の子(メイドと呼ばれる生命体)が、奥からカレーライスをこのむさい男二人が待つ机に運んできてくれた。彼はカレーが来た時に、普通以上の「待ってました!」という声を出して、可愛い女の子を驚かせていた。
「では、ごゆっくりお過ごしください!」
カレーを机に置いて、可愛い天使は奥へと帰って行った。
「生贄殿」
彼が俺の名を呼ぶ。
「どうです、カレーの香りがすごいでしょう?」
彼が、カレーの香りに関して同意を求めてきた。しかし、俺自身カレーというものをあまり食べたことがなかったので、これがいい香りなのかどうかが分からなかった。ただ、一つだけわかったのはカレーらしい香りだなということだけだった。
「さっ、早速食べようじゃないですか!」
そういうと彼は「いただきますぅ」と言葉の最後をにごして、カレーを食べ始めた。
じゃあ、俺も食べるとするか。
※※※※
「とにかく教えてほしいのは、なぜ俺がこんなところにいるかだ。早いとこ教えてくれんかね、南蛮人達よ」
男は、ジョンを睨むのをやめ、腕を組み足を組み、悩む様子で目を閉じて白人たち二人に尋ねた。
ジョンは、男のその様子を見て一瞬何かを言いたそうな表情をしたが、表情をぐっと固めて「残念ながら、詳しいことはお話できないんですよ」と男に答えた。
「どうして、詳しいことを言えないんだ。私はさっさと戻って、今後の織田家の行く末を見守らなければならんのだぞ?」
「おい、まだあんた自分の立場を理解していないのか?」
男が険しい顔をして、早く戻りたいということを言うと、これまた険しい顔をして白人が男に対して言葉を投げかけるのだった。
「立場だと?」
「あぁ、立場だよ」
ジョンはまた、二人が言い争っているのを見てニヤニヤし始めてしまった。
「本当に、この二人は相性がいい。やはり、この二人でコンビを組ませたのは正解でしたね」ジョンは、小さくつぶやく。二人に聞こえないぐらいの小ささだ。
「――――すべては、定められた時間のために。これで、間に合いますね」




