七十六巻目 ラジオ会館のことですよ
「あぁ、どうも。大倉さん」
彼の名前は大倉。哀・戦国ロリポップの公式有料ファンクラブ『ストロベリーズ』の会員の一人で、俺が興味ない盛り上げ役のアッキー(秋草結)が好きらしい。女子の趣向に関しては一生分かり合えない俺と彼だが、人間関係としては非常に良好で、いつもスタッフに差し入れを持ってきてくれたり、個人的に酒を飲みあったりしたりしている。あと、ジョンの知り合いの一人だ。
彼は非常に明るい性格をしていて様々な話題を持っており、話し好きでどんな話でも面白くしてしまう天才だ。もし、昔の時代に彼のような人物がいたら真っ先に手下にしたいぐらいだ。まぁ、話し好きが災いして味方の情報を敵にばらしてしまわないかが一番怖いところだけれどもね。
「生贄さんがこんなぐちゃぐちゃなところを歩いているなんて珍しい。いったい、何があったんですか? 仕事の買い出しですか?」
彼はジョンとはまた違う笑顔でそう聞いてくる。ジョンは心に苛立ちを覚える笑顔だが、彼の笑顔はどこか、安らぎの心を待たせてくれるのだ。ありがたい。
どちらかというと、彼は大仏のような人間なのかもしれないな。俺は大仏は嫌いだが、彼のような大仏ならば長時間見ていられるだろう。
「いや、今日はちょっと、まぁ、秋葉原を見回ってみようかなぁと思いましてね」
「ほぅ~なるほど~」
「むふむふ」と言いながら、彼はにやにやと笑っている。やっぱり大仏に見える。
「町をぶらついているというわけですな、生贄さん」
「まぁ、そんな感じになりますね」
「むふぅ~ん・・・」
また、にやつき始めた。だけれども、ジョンのようなイラつきは覚えない。なぜ人が変わるだけで、こんなにも心の使い方が変わるのだろうか・・・。
※※※※
「お疲れさまでーす」
「お疲れさまです」
ふぅ・・・一回目のステージがようやく終わった。とてつもなく疲れて、のども痛くなるけれども、ステージに立っているときは楽しいし人前で歌うのはストレス発散にもなって、最高だ。
その最高の気分を得るための代償として、大量の汗をかくことになるけれどもタオルで拭けば大丈夫だ。だけれども、置いたタオルがどこかへ消えてしまうのはなぜなんだろう?
※※※※
「まずは、ラジ館でも行きますかね?」
「ラジ館?」
「ラジオ会館のことですよ」
どうしよう。本当に秋葉原が全く分からない。彼が、何を言っているのか全く分からないよ。
彼が「ついてきてください!」と自信気に言うので、とりあえず彼に従おうと思う。やはりこういう局面であれば、知っている人についてい




