七巻目 放送協会からの刺客
にーと生活も三日ほど過ぎた我が屋敷に、謎の訪問者が現れた。
ピンポーン
耳慣れない音が我が屋敷に鳴り響く。その音は何度も何度も、繰り返し繰り返しなっては響いていくのだ。
「これは、新手の曲者か?」
ジョンは今ここにはいない。今ジョンは大切な用事があるらしく、三日間全国を回っているらしいのだ。初めてジョンに「全国を回ってくるんですよ」って言われた時は、長旅になるんだね! と、言ってしまったがその後にジョンは俺を連れて電車というものに乗せてくれた。あれは、早いし椅子はふかふかだし日差しの書くどもちょうどよくて、素晴らしいね。もし、俺が過去に戻れたら電車は絶対に作りたいと思う。
しかし、今はそんなことはどうでもいいのだ。新手の曲者がどこかにいるんだ。
とりあえず俺は、ジョンが用意してくれた包丁を後ろに忍ばせて玄関の方へと向かった。玄関からなにやら物音がするからな。
ドンドンドン
「――!?」
なぜだ。なぜそこまで堂々と私に対してアピールしてくるんだ。訳が分からない。私がどんな奴か知らない、無知な曲者なのか? いや、まさか現代人でそんなことはありえないだろう。
「織田さん、いらっしゃいませんか?」
・・・なぜ名前を知っているんだ。玄関の扉の向こうから私を呼ぶ声がする。その声はどこか冷たいさを、だけれどもそれとして温かさも感じる。何とも言えない空気感を漂わせている声だ。だけれどもなぜ俺の名前を知っているのだろうか。
俺は、守ることばかり考えていた。しかし曲者は断固として逃げては行かない。むしろ堂々と俺と戦おうとしているのだ。だって名指しで話しかけられたもん。
籠城なんて俺が一番嫌だったことをなぜ今俺はやっているんだ・・・。思い出せ、今が輪のことを! 思い出せ、桶狭間のことを!!!!
・・・よし、大丈夫だ。今まさに決意は固まり、戦いに備えての体力もようやく戻ってきた。これで、曲者を倒せばこちらのものだ!
俺は意気揚々と雄たけびを上げながら玄関先のカギを開けた。そして、勢いよく扉を開けたのだ!
そして、大きな声で
「何奴だ!!!!」 って叫んでみた。
すると曲者は非常に冷静な声で、
「放送協会のものです」といってきたよ。
何だよ、放送協会って。新手のテロ組織か何かか?
「引っ越しが完了されたそうなので、受信設備もとっと乗っているのでテレビ放送契約の方をさしていただきたいのですが、織田信長様でよろしいでしょうか?」
こいつは、何語をしゃべっているのだろうか。日本語に近いようだが、ちと難しすぎる。てれびほうそうけいやくとは何だね。そんなことを玄関先で口走られても、俺はどう対応をすればいいんだ? 「うるさい!」とかいって包丁で叩ききればいいのかな? だけれどもジョンは「絶対に人を殺さない! 後が面倒くさいですから、これだけは守ってくださいよ」って言ってたし、とりあえず叩き切ることだけはやめておくか。
「すまんが何を言っているのかさっぱりわからないのだが」
素直になることは、相手に思いを正確に伝えるために必要なことだ。だから進んで素直になることを心がけている。こっちの世界に来てからね。
「あぁ、申し訳ございません。こちらにパンフレットと、契約用紙を置いていくので、しっかりとご覧になったうえで、また後日来ますのでその時に契約しましょう」
と、なんか勝手に曲者は締めに入ってしまった。
「え・・・え?」
動揺する俺を目だけは笑わずに口元だけ笑い、「失礼します」といって俺の玄関の扉を勝手に閉めた。その後、曲者がどこに行ってしまったかは分からないが、とりあえず俺に書物を渡してくれた。もしかしたら、この書物が過去へと帰るヒントになるかもしれない。
・・・とか、そんな淡い期待は速攻で裏切られ書物に書かれていたのは変な絵と、たくさんの固まった字しかなかった。残念だが、この書物は捨てることにしよう。
しかし、放送協会。いったい何なんだろうか?