七十一巻目 メモっといてもいいからね
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まったく、信長を困らせるとは・・・ジョンもなかなかいい根性をしてるじゃないか。褒めているわけでは無いからね? むしろ怒っているぐらいだ。
なんの事情があるかどうかは知らないけれども、どこかに行くんだったら一言ぐらい声をかけるべきだ。信長様関連であればなおさらだ。
今回の不幸中の幸いと言えば、信長様が昔の信長様じゃなくなっていたということだ。昔の信長様だったら、ジョンが帰ってきたと同時にジョンは死んでしまっていただろう。あの人は気に喰わないことがあったらすぐに消してしまう人だからなぁ・・・本当に怖い人だよ。
だけれども、今の信長様はなんというか、その、簡単に言ってしまうとただの人なんだ。この時代の、どこにでもいる一般人の中の一人。それが、今の信長様なんだ。
威厳も、怖さも何もあったりはしない。ただ人の下で働いて、金を稼いで、あんな小さな部屋で寝たりして暮らしてりしている。もしかしたら、一般人よりも下の生活をしているのかもしれないな・・・。
まったく・・・もう。早く帰ってきてあげなさいよ・・・、ジョン。
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ここで一つ発見があった。
シャワーから出た後俺はいつもとは違い、台所に直行した。今日はコンビニでかったある飲み物があるのだ。キンキンに冷えたとても美味しい(美味しくない)ものだ。
シュワシュワとした、あの口の中で爆発を起こしているような感覚・・・あれは素晴らしいものだ。人類史上最高の作品だ。神が直接作りだしたに決まっている。
気分爽快な俺は、台所でただ一つだけ堂々とした存在感を放つ白い箱(冷蔵庫)をまじまじと眺め、そして封印されしその扉を開くのだった。
「涼しい・・・」
扉を開くと同時に、その箱の中から冷気が流れ出てきて俺の体を包みこんでいく。
それと同時に、箱の中に鎮座している様々な食品の悪魔的な香りが、俺の嗅覚を刺激し、食欲をわかせる。しかし、俺はそんなものには目もくれずただ一つ、円柱状の銀色(缶)のものを手に取るのだった。
手から伝わる温度、冷たい。箱から流れ出る冷気と、この銀色のものから伝わる冷たさで、熱いシャワーに入った俺をどんどんと癒していく。
あぁ、熱いシャワーに入ってよかった。こんなことを思いっきり実感することが出来る。うれしいことだ。
テレビのところに缶を持って行き、テレビをつける。テレビの内容はつまらないものだが、そんなものはどうでもいいのだ。
ただ、これを味わうことが出来れば。ただこれを飲むことができれば、それだけで十分だ。
・・・今、俺かっこいいこと言ったよね? メモっといてもいいからね。




