六十九巻目 俺はお前の意思を汲もう
まさに、青天の霹靂ってやつだ。
俺は元より、美希といい感じの仲になれたらいいなぁ~とは思っていたが(俺じゃなくとも、男なら誰しもこんなかわいい子はほってはおけないだろう)、まさかその美希自身から俺に対して、「ご飯を作りに行きましょうか?」と言ってきたのだ。すごいだろ?
もしかしたら、神は俺に何か美希に対して行動を起こせといっているのかもしれない。じゃなければ、美希の口からこんなことを発するとは思えないのだ。
昔の俺であれば、「分かったぞ、神よ・・・。俺はお前の意思を汲もう」とかなんとか何かと理由をつけて行動をしていたかもしれない。というか、無駄に行動力があって自分にものすごい自信があったからいろいろと無理なことを可能にしていたけれども、さすがに今、この時代に来てからはそんなことをしなくなってしまった。というか、この時代に合わせた行動力になり、この時代についていくためには自分が持っていた自信を無くしてしまったのだ。勿論、なくしてしまったことに対して何ら「悲しいなぁ」と思ったことはないし、むしろなくなったことによって「重たい荷物を取り除くことができた」と思うようになったぐらいだ。
まぁ、そういうことのせいで今の俺は行動をいろいろと制限するようになってしまったんだ。
悲しいことに、今のようなこういった状況でも俺の性格は変わらないままだ。
そう、そういうことだ。
「いや・・・いいよ。また今度作りに来てよ」
ちょっとだけ悲しい声で、情けない声で俺は美希に言う。本当に情けない・・・。
「そう・・・ですか・・・・・・」
美希は、少しだけ悲しそうな顔をした。
この時代に来てからいいことだけがたくさんあると思った。まさか、ジョンがいなくなったことで嫌な部分が見えてくるとは思わなかったよ。
「じゃあ、また明日」
「はい! 信長さん!」
俺は美希に今日の別れの挨拶をして家路につこうとした。
しかし俺が少し歩いたあと、美希が「あの!」と言ってきたのだ。
「ど、どうしたの?」
いつもながらだが、突然のことで俺は言葉がうまく出なかった。
美希は俺の問いかけに対して、少しだけもじもじしながら答えた。
「もし、今日ジョンが帰ってきていたら、明日私に教えてくれませんか?」
・・・こういうところもこの子の可愛さの一つといえるだろう。かわいすぎるぐらいだ。
それぐらいのことぐらいだったら、俺でも行動ができるだろう。
「もちろん! あいつが帰ってきたら必ず教えるよ」
「ありがとうございます!」
美希は笑顔になった。満面の笑みだ。
これだけのことでも、少し言葉だけで人を笑顔にできて、俺も幸せを感じている。
なんて素晴らしいんだろうか!




