六十六巻目 哀・戦国ロリポップを舞台裏で支えるスタッフ
仕事を始めてからというもの、その仕事を全うするために日々奔走している。時には怒られることもあり、時には褒められることもあり、時にはやけに太った客から「さすがだぜ、ここのスタッフは」と握手を求められることもある。とてつもなくべたべただけれども、嫌な気はしない。
俺は、人の下で働くということに対して今のところとてつもない満足感が心を占めていて、この満足感が日々の仕事の原動力となっているのだ。今まで人の上に立つことの方が多かったから、こういうのはとても新鮮身があって面白いね。最初は人の下で働くということだから、ちょっとだけ嫌悪感はあったけれども結局は仕事っていうのは慣れなんだよねぇ~。
慣れて来たら仕事なんて同じ作業の繰り返しだから楽で楽で、それでいて美希の近くで一緒に働いている奴らも面白いやつだから、楽しくて楽しくて、仕方がないよ!
それで、今日はその仕事を一カ月続けられたということで凛様主催のパーティーが開催されることになった。そのパーティーには俺たちのように哀・戦国ロリポップを舞台裏で支えるスタッフと、美希がリーダーをしている哀・戦国ロリポップ本体、そしてビルのオーナーである米宮さんを招いてある。パーティーという名の凛様がガンガン酒を飲むための会合だというのは言わない約束だ。
秋葉原という特殊な地域で働いているせいか、俺は少しばかり一般人とは違った感覚を持つようになってきている。アニメのキャラクターを見たとしてもそんなに驚かなくなったし、メイドを見ても何も興奮はしなくなった。むしろ“にわか”という存在を知ってからは、“にわか”に対していらだちを覚えることがある。もちろん、俺がいろんなことに対して、この時代のにわかだということは、俺が一番理解できているから言わないでほしい。
最初は美希に贈り物をしたいから始めた仕事だったが、今のところ美希に贈り物はしていい無い。別に忘れているわけでは無いんだけれども、ただ、まだ、ちょっと、美希が欲しい物が分からないだけだ。だから今は金が有り余っているわけだから、その使い道に今は困っているわけだ。
いやはや、どうすればいいのかな・・・。
「あっ、そうだ生贄君」
「はい、何ですか監督」
監督というのは凛様のことで、この仕事をやる上ではこの名前を使うのが絶対だ。使わないと、凛様に「だからダメなんだよね~」とくどくどと説教をされてしまうのだ。それだけは絶対に避けたいので、監督と呼ぶことを徹底しているのだ。一度説教を始めると長いからねぇ・・・。
「じょんじょんも呼びたいけどさ、連絡がつかないからさ、今日酒盛り会をやるってことを伝えてくれんかねぇ~?」
ジョンと連絡がつかない? 今日の朝まであんなに元気だったのに、連絡がつかないとはいったいどういうことだろうか。それに、なぜか凛様の言葉に“さ”が多い気がする。取ってつもなく、とぎれとぎれでしゃべっている。いったい凛様もどうしたというのだろうか。
「わかりました、一度家に帰って連絡しておきますね」
「おぉ、そうしてくれると助かるよぉ~」
一度、家に戻ってからパーティーへ行くとしよう。さっき凛様はパーティーとは言わずに、酒盛り会と言ってたけど、そこらへんは気にしちゃダメだ。




