六巻目 にーと
「ここが本能寺か・・・」
ここに立っていた建物は、すでになくなって今は炭とか灰になっている。その炭とか灰になっている所には、多分焼け跡から金目の物を探そうと乞食達が・・・いや、乞食達以外にも普通に生活している市民までそこでいろいろなものを探していた。
権六はその風景を見ながら、織田家の当主が本当に死んでしまったのかという事をしっかりと捉えようとしていた。しかし捉えるには大きすぎたため、心はすでに放心状態だった。
『見つかった!』
市民か乞食かどっちか分からないような人間が叫んだ。どうやら金目の物を見つけたようだ。権六は放心状態だったため、権六の下の者がそいつらからそのものを没収した。
「権六様しっかりしてください。どうやら秀吉様は、山崎にて光秀を打ち取ったとのことですよ! 権六様がしっかりしなくては、この先の織田家は安泰に恵まれませんぞ!」
下の者はそう熱血に語りかけるが、権六の反応は「うん」とか「すん」しかなかった。
結局、下の者がとった金目の物らしきものは、権六に渡すことができずに、下の者が権六が放心状態からとけるまで預かることになった。
「・・・しかし、なんというものだろうか。私はこのようなものは見たことがない」
預かっている物をまじまじと見ていると、「さすが、私が知らないような茶器を信長様を持っているのだなぁ」という風な言葉が心に出てきてしまった。別に欲しいわけではないけれども、とてつもなく変わっている形をしているので、ちょっとだけ興味があったのだと彼は、のちに信長に話すことになる。
平成27年12月20日
ジョンと会って三日がたった。人間、三日もあれば環境に適応できるらしい。ジョンはなぜかわからないが俺の住民票というものを取得してくれていて、住むところも手配してくれていた。
「なんで、ここまで準備がいいんだ?」
「うーん・・・まぁ、一応はあれですしね」
「あれ?」
深くは聞かなかったが、ジョンは変わっている奴なので仕方がない。
三日目の今日もゆったりと、この現代社会を満喫したと思う。というか昨日初めて、すまーとほんっていうのを触ったんだよ。あれ、すごいな! 指で触るだけで、絵が動くんだぜ! すごいよ、現代。ほーむ画面は俺の女体化画像にしといたし、これでどこをどう見ても現代人にしか見えないだろう。
あっ、そうそう現代人の食生活には恐れ入るよ。結構なもんを食ってるんだよねーまたこれがすごく脂ぎっている物で・・・また、それが美味しいんだけれどもね!
当面、お金はジョンが用意してくれるらしい。ジョンは今の俺のことをにーとだと言っていたが、ジョン曰く「今のあなたにお似合いの言葉ですよ」だそうだ。(後々、俺はその意味を知ってジョンをしばいたよ)
だけれども、この現代の日本は、しほんしゅぎけいざいこくなので、にんげんどうしがきょうそうしてお金を手に入れないといけないと、ジョンが延々と語っていたので、とにもかくにも仕事を見つけて、働かなくてはいけないらしい。だからジョンに、「ジョンも働いてるの?」と聞いてみたんだが、あいつは「僕はいずれ働きますから」といってきた。どうやら今の俺と同類のにーとらしい。
てれびというのもジョンはくれた、れいぞうこ、でんしれんじ、せんたくき・・・使い方は分からないがジョンは便利なものとして僕に渡してくれた。やったぜ!
まぁ、その当時の俺はバカだったんだよね。だから、うつけ者とか言われてたんだろうな・・・自他ともに認める天然ちゃんだったしさ。