六十一巻目 チャオチャオ!
「決まりましたね!」
「そうだね!」
全く分からない状況の中、二人は決まったことを確認した。そして、二人は自信気に私のほうを見てくる。私には何が決まったか教えられていない。これほど怖いことは、今まで体験したことがない。今まで体験してきた恐怖というのは、想像しやすい恐怖だ。だけれども、これほど後のことが想像できない恐怖というのは今まで生きてきた中でも、初めてのことだ。決して死ぬわけでは無いことは十二分に理解できている。死ぬかもしれない状況よりかは、全く怖くないのかもしれない。だけれども、知らない世界、未来に突然来て、それでここまでわけの分からない話をされて、勝手に納得、決定されて、自信気に二人は私のほうを見てくるのだ。これほど怖いことがあるだろうか? いや、絶対にないはずだ。
「という事でですね・・・」
ジョンが、話を始める。冷静に、そしてにやにやと。
ふと、りんりんの方を見てみるとものすごく納得したような顔をしてジョンのほうを向いている。時より頷きもしている。
そして、もう一度ジョンのほうを向いたとき、ジョンは私の目を見てこう言った。
「あなたは今から、りんりんがプロデュースしているアイドル『哀・戦国ロリポップ』に所属することになったのです!」
大きな声でいった。とっても大きな声で。とっても自信にあふれた声で言った。
りんりんも「いいぞ!」とか「ひゅーっ!」とか、なんかジョンの言葉を煽りまくっていた。
とりあえず状況を飲みこめずにいるとりんりんが私の肩をたたいた。
りんりんの方を向くとなんか人差し指が準備してあって、ちょうどその人差し指が私の頬を刺激した。
ぐりぐりぐりと、人差し指で私の頬をもてあそんだ後りんりんは笑顔でこう言った。
「明日からはあなたがセンターやで! 一緒に頑張ってこーな!」
笑顔。だけれども、安心ができない。むしろ恐怖感が私の体を支配していった。
言いたいことを言い終えたりんりんは「じゃあ、私そろそろ行くよ! 持ち帰りもできたらしいし」と、会計の方を指さして言った。
これで、一時的であるけれどもこの二人の会話から解放されると思うと、恐怖感が少しだけ解消された。
だけれども、りんりんは去るときにこんなことを言った。
「明日の12時ぐらいにここで待ち合わせだお! チャオ、じょんじょん!」
「チャオチャオ!」
・・・なにが、「チャオチャオ!」だ。
※※※※
凛は立ち去った。俺に少しばかりの勇気をくれて立ち去ってくれた。
もしかしたら、ジョンとはまた違ったうざさの持ち主かもしれない。もしかしたら、ものすごくいい人なのかもしれない。今更いろいろと詮索するのは、いけないと思うので詮索はしないでおくが、いずれまた会ったときはもっと凛のことを詳しく知りたいと思う。
それにしてもだ。なぜあそこまで美希は、凛に怯えていたのだろうか。不思議で仕方がない。




