五十九巻目 じょんじょんじゃん!
ジョンを殴った後、ちょっとばかりジョンの顔を見つめてみた。さっきのまんざらでもない顔からちょっとずつ変わってきていて、今は私に見つめられていることに気づいたようでそのことに関してにやにやしている。まったく・・・ちょっとうざいな。
とりあえず私は、ジョンのうざい顔を見てもやもやしている心の気持ちを落ち着けるために、机の上に置いてあったコーヒーを飲んだ。ちょっとした苦味が私の気持ちを落ち着かせる。ありがたい・・・。
しかし、すぐにまた今落ち着いている心の気持ちを乱れさせる自体が起きたのだった。
「あっ! じょんじょんじゃん!」
大きな声が店内に響く。馬鹿みたいにデカい、馬鹿みたいな声だ。というか馬鹿だろ。
「あぁ、りんりんじゃないですか!」
「そうだよ、りんりんだお!」
私を置いて、突然りんりんと呼ばれる人物とジョンの会話が始まってしまった。はぁ・・・。
「どうしてここに?」
ジョンは先ほどまでのにやにや顔とはちがう、自然の笑顔でりんりんに聞く。
「ちょいと休憩時間があったから、ドーナツを食べに来たんよ。じょんじょんは?」
なぜだかわからないが、りんりんは丈の合わない上着を着ていて丈の余っている袖の部分を無意識なのか、意識しているかは分からないが一定の速度で振っていた。はっきりと言って、やばい奴だ。
そんな私の気持ちをよそに、ジョンは普通に会話を続ける。ここから察するに、りんりんとジョンはちょっとした知り合い以上であるということが推測できる。・・・ここまで推測できるようになったんだから、私もちょっと冷静になれてきたな。
「私は、この子をこの時代に慣れさせようと説得しているところですよ」
「はっ?」
思わず声が出てしまった。だって、私をこの時代に慣れさせようとしているということを、りんりんに普通のトーンで言ったから、びっくりしちゃって・・・。いくら、この時代が私がいた時代より技術が進んでいたとしても、そんなことを信じるのは、奇術師か馬鹿ぐら・・・・・・・・・あっ、りんりん馬鹿だ・・・。じゃあ大丈夫か。
「あぁ、いつもの奴ね! なるほどなるほど・・・」
りんりんも納得している。良く分からないが丸く収まったようだ。良かった。
「あっ、そうだ!」
私がちょっとだけホッとした瞬間に、ジョンは手を叩き音を鳴らして、そんなことを言った。私はそれにびっくりして、「ひっく」と変な声を出してしまった。
「どうしたん? じょんじょん」
りんりんはびっくりしていないようだった。そして、普通にジョンに質問をしていた。この二人はやばい。こんなにも冷静に馬鹿みたいな会話ができるなんて・・・。
この時私は少し油断していた。この後、人生で、これからの人生で一番最悪の出来事に遭遇してしまうとは・・・。こんなことなら、あの時代でしっかりと死んでおけばよかったな・・・。




