五十七巻目 私自身が変な奴なのかな?
動揺する美希をよそ目に、凛は冷静に自分の言いたいことを言い始めた。
「さすがに、ただの知り合いはその彼氏さんに失礼じゃないかな?」
「・・・」
凛がものすごく冷静に、とてつもなくごもっともなことを言ってきたので美希がちょっとむっすとして静まってしまった。
「彼氏さん」
今度は凛が俺に話しかけてきた。
「な、何ですか?」
また突然凛が名前を呼んだ。今度は俺の名前を呼んだものだから、びっくりしてしまった。思わず敬語になってしまったよ・・・。
凛がずっと俺のほうを黙って、じーっと見つめてくる。美希とはまた違った可愛さというか、色気があり少しドキドキしてしまう。も、もちろん俺は、美希のほうが好きだ。
俺も美希に対抗するようにじーっと見つめてみた。ちょっと照れくさいな。
俺に見つめられると、凛はちょっとだけニヤッとして数秒立った瞬間ドハッ! と、笑い始めてしまった。
「えっ、えっ?」
美希はさっきのむっすとした状況が今の今まで続いていたらしく、とつぜん凛が笑い始めたことによりそれに対して驚き、動揺してしまった。
俺自身も、声を出すほどではなかったが少し、少しだけ動揺してしまった。
凛は何秒間か笑い続けた。そして、笑い終わった後一瞬だけ凛は冷静な顔になり、すぐににやっとした表情になった。
やけに明るい声で、俺にこう言ってきた。
「彼氏さん、美希はこんな子だけど根は真面目で信用できるやつだから、かわいがってあげてね!」
・・・・・・。そんなこと言われなくても、かわいがりますとも。絶対に愛でて愛でて、目でまくりますよ。
※※※※
「彼氏さん、美希はこんな子だけど根は真面目で信用できるやつだから、かわいがってあげてね!」
な、何が彼氏さんよ! さっきから信長様はただの知り合いって言ってるじゃない!
私が今どれだけ信長様にばれないように気を使っているかこいつに教えたいぐらいだわ。
こいつにあってから私は身も心もすべて女に変えられてしまった。もちろん女になっていたのはこの時代に来てからのことだからもう文句は言わないけれども、それにしたってここまで女らしくなってしまうとは自分でも思わなかった。
それに、今じゃあ信長様が私の彼氏扱いを受けているじゃないの!
信長様もそこははっきりと、「違う」って言ってくれればいいのに、まんざらでもないような顔をして・・・なんで私の周りっていうのはこうも変な奴ばっかりなんだろうな・・・・・・。
私自身が変な奴なのかな?




