五十五巻目 さっさとこの場から去りたい
ここで一つ俺は疑問に思ったことがある。それは、凛の落胆についてだ。
俺は今、猛烈に落胆をしている。ものすごく落ち込んでいるし、ものすごく悲しんでいるし、物すごく辛いし、ものすごく・・・・・・。
だけれども凛がなぜ落胆しているのかが、落ち込んでいるのかが訳が分からないんだ。
だって凛が落胆する必要性が全くないし、むしろ落胆されると俺もちょっと困ってしまうんだ。だって俺が今ちょっと落ち込んでいる理由というのは、美希が俺のことをはっきりとそれも、しっかりとした声で彼氏じゃないと言ったことだ。そんなはっきりと言わなくてもいいじゃないかと思うぐらい、はっきりと言われたからちょっとだけ傷ついてしまったよ、心が。ちょっとばかりは俺だって期待してたんだよ? もちろん絶対にありえないとは思っていたけれども、少しばかりは信じていたかったんだよ、それなのに・・・・・・あんなはっきりと言われて・・・うっ・・・ちょっと涙が出てしまったよ・・・まったく・・・・・・・・・
俺は少しだけ美希に期待していて、その期待が逆よりもさらに逆のマイナスの方向に行ってしまったから悲しくなって、落ち込んで、落胆しているんだ。
それなのに、なんで凛が落胆しているんだろうか?
もしかしたら凛が、本当に俺と美希が付き合っていると思っていてそれが美希から違うと聞いて、落胆したのかもしれないが、それを考えるとどれだけ凛が俺と美希のことを考えているのかとか、どれだけ付き合っていると思っていたのだろうか心配になってしまう。それだけ思っていたんであれば、なんだか申し訳ない気もする。別に俺が悪いわけもないのになぜこんなにも申し訳ない気持ちになってしまうのだろうか・・・不思議なものだ。
申し訳ないという気持ちが芽生えただけ、俺も少しは人間としてこの時代に来て成長したということだろう。この時代に来てからいろいろと良いことづくめだ。いろいろなことも知れたし、美希とも会えたし、人間としても成長した。昔の俺だったら、力づくでも美希を自分のものしていたと思う。そんなことを考えないようになっただけ、偉いと自分でも思う。さすがだぜ。
まぁ、本当のところは力づくでも美希を自分のものにしたいんだけれどもね。
・・・いろいろと考えていたけれども、意外なことにその考え達は一瞬にして考え付いたものだった。だからこそ、思考停止することなく会話を続けようとした。
美希に話しかけようとすると、美希の顔はさっきまでの真っ赤な顔とは違いいつものような白い肌の顔になっていた。だけれども、口元の表情ちょっとばかり震えている笑顔だった。そして、俺が見ていることに気が付くと美希は、俺に何かを訴えるような表情を取った。
決して声は聞こえないけれども、なぜだか声は聞こえる。
「さっさとこの場から去りたい」
不思議なことに、俺も美希と同じ考えだった




