五巻目 遠まわしな言い方は、無駄な心配を作るだけ
「簡潔に言いますと、現代には新しい文化としてオタク文化というものがあります」
「おたく?」 なんだ? おたくって。
「そのオタク文化というのは、日本のみならず、世界に向けて発信されていて、今ではクールジャパンという対外文化宣伝、輸出政策の一つとしてさらに注目されています」
「く、くーる?」
ど、どういうことなんだ。訳が分からないぜ。硫黄とか、銀とかそういうのはどうしたんだ? そんなのはあんまり輸出しなくなっちまったのか? まさか、今の日本は・・・ものすごい物資不足で・・・絵しか売るものしかないのか?
俺が死んでから、俺がこの時代に戻ってくるまでに何があったんだよ。どんだけ日本は沈んじゃったんだよ・・・。
「ノブ、そんな暗い顔をしてどうしたんですか?」
自分では気づかなかったけれども、どうやら俺は結構落ち込んでいたらしい。すごいショックだったしね・・・仕方ないよ。
「だってさ、日本、絵しか売るものなくなっちゃったんだろ?」
「?」 ジョンは「こいつ何言ってんだ?」みたいな感じの表情をしている。だけれども俺はそんなことを気にすることなく続けた。
「俺はきっと、この沈んだ日本を立て直すために、この日本にすむ日本人の意識を統一させて日本を世界一の国に生まれ変わらせるために使わされたんだろうな・・・」
しみじみとしながら、そして涙をうっすらと浮かべてみた。結構その時の表情は様になっていたと思う。
まぁ、だからといってジョンが共感することもなく、というかジョンは何でも知ってるくせに、なぜか遠まわしに行ってくるんだ。あれだけは、ジョンの悪い癖だな。
案の定、ジョンはようやく俺が知りたかったことを説明し始めた。
「とりあえず日本は現在世界でも三番目ぐらいの経済国ですし、いくら不況とはいえ行政機関も安定していますし、生活はしていけますのでノブが立ち上がる必要性はないと思います」
「うん」 この部分までは蛇足になっているので悪しからず。
「このノブが女体化した絵のことですが、これは現代人が楽しむために作ったり、読んでいるものです。それが、派生して政治的な利用をしているのですよ」
「ほぉーん」 説明が少なすぎる気がするけれども、俺の混乱している頭にはちょうどいい量だった。
「あなた以外にも女体化している武将たちはいますよ」
「まじで!?」 なんだよ.・・・俺だけ特別じゃないのかよ・・・。
「それに、BL本というものもありますしね・・・」
「BL?」
「ノブが好きそうな内容の本ですよ」
「?」
「今度貸してあげますよ」
「お、おう」
現代人、なかなか奥が深いことをやっているな・・・。