五十四巻目 ほんと~に彼氏じゃないの?
「殴るとは、ひどいじゃないですか・・・」
「なんか・・・ウザかったから」
私が思いっきり気持ちを込めた拳は意外にもジョンの頬にいい感じに入り、ジョンに大ダメージを与えることができた。そしてダメージを与えた後、ジョンは頬を抑え私のほうをじーっと見つめた。訴えかける目だったが、そもそもはウザすぎるジョンが悪いのだからそんな目で私を見られても困るのだがね・・・。
「それにしても・・・」
「?」
私が話を切り出してみた。ジョンも私が話を切り出すとは思っていなかったようで。私の声を聞くとさっきまでのじと目から、きょとんとした顔になった。その顔も、非常に癇に障るものだったけれども今回に限っては聞きたいことがあるから、何もしないでおこう。
私は一度大きく深呼吸をして、冷静になってから聞くことにする。そうしないといけないと思ったからだ。
「すぅ・・・」
「?」
ジョンは、私が深呼吸しているところもきょとんとした顔で覗いていた。
一度深呼吸をして少し冷静になれた私は、はっきりした声で聞くことにした。
「なんで、私がこの時代に慣れる必要があるの?」 と。
※※※※
なぜだろうか・・・美希の顔が曇っている。というか、なんだか嫌そうな顔をしている。
だけれども、かわいいねぇ・・・うん、最高だね。こういった表情ができるのも、生まれながらの才能といったところだろう。彼女を育ててくれた親御さんには感謝をしきれない。でも、彼女には嫌そうな顔は似合わないと思う。彼女はやはり、ニコニコ可愛く笑っていたほうが合っていると思う。・・・早く、笑ってほしいな。
「なんで美希がこんなところに? ・・・というか、そちらの方は彼氏さんかな?」
凛という子が、美紀に聞く。凛の表情を見てみると、とてもイキイキとした表情だった。
美希はそれを聞いた後、顔を真っ赤にして焦りながらこういった。
「ち、ちちちっ違うし! 彼氏とかじゃないし! ただ歩いてるだけだし!」
ただ歩いているわけでは無いが、なんだかものすごく否定されていることだけは分かった。そこまで否定されると、ちょっと寂しいものがる。なんだかなぁ・・・。
「ほんと~に彼氏じゃないの?」
あぁ、なるほど。
「本当だよ!」
俺はしっかりと理解することができた。この凛という子からは、ジョンと同じ空気がある。同じ空気が漂っているのだ。だから、俺もこの子が少しばかり苦手になってきた。良くは知らないけれどもね。
「なぁ~んだ、残念だな」
凛は、少し落胆したようだった。




