五十三巻目 分かればいいんですよ!
ただただ、沈黙。楽しい会話なんて、あったもんじゃない。俺の想像していた、街の散策(仕事探し)とは全く違うじゃないか。真逆だよ、真逆。
ぶっちゃけ、俺こういう空気を味わったことがなかったからちょっとばかり新鮮な気分なんだけれどもさ、ちょっとさ、あんまりこの空気を続けたくないなぁって思ってさ・・・だから、この空気を変えようと色々と話をしてみるけれどもどれもこれも長くは続かなくて・・・・・・。
あぁ・・・どうすればいいんだろうかな・・・・・・。
――――
「あれ? 美紀?」
冷めた空気が漂っていた空間をぶち壊すように、前の方から声がした。その声はとても明るい声で、とてもきれいな声だった。
そして、その声はどこかで聞いたことがある声だった。
「あぁ・・・凛」
美希は、その声の主に受け答えをした。
※※※※
「あれ? 美紀?」
少しばかり会話が途切れていたけれども、信長様は良くこういうことがある。信長様自身はそんなに意識していないようだけれども、いきなり黙ったり、いきなり変な顔をしてみたり本当に傍から見たら変な状況だけれども、慣れてくるとこういう状況のほうが落ち着くんだ。無駄に信長様がしゃべって、色々とこっちが考えさせられるよりかは楽だからね。
そんな楽な状況の中に、水を差す人が現れたのだ。いや、もう悪魔と言った方がいいだろう。
「あぁ・・・凛」
とりあえず小さく彼女の名前を呼んでみた。凛・・・この名前を言うだけでも虫唾が走る。
この世界に来てから、元々あった性格をすべて否定されすべての性格を彼女によって構築された。
すべての元凶は彼女、“凛” 凛のせいなのだ・・・・・・・・・。
※※※※
「あなたにはこの世界に慣れてほしいですからねぇ・・・」
ジョンが顎をポリポリとかいて、私のほうを見つめる。
「なんで、私がこの世界に慣れなきゃいけないんだ。私は早く元の時代に戻って、本当の事実を伝えなければいけないんだぞ!」
私は必死に訴えかける。だけれども、ジョンの顔は「何言ってんだ、こいつ?」みたいな顔をしている。
そして、ジョンがこう言った。
「そんなこと今言われても困りますよ・・・」
引き気味で言ってくるもんだから、言い返すこともできなかった。
だから私は、小さく「ごめん」と言った。
するとジョンは自信満々の顔をして、「分かればいいんですよ!」と言った。
その後私は、ジョンの顔を思いっきり殴った。もちろん本気を出さない程度に殴ったやったから、死ぬことはないだろう。うん。




