五十二巻目 バカだな、馬鹿だなぁ
今日は、短めにかいて見ました。
話が思い浮かばないわけじゃないですから!
だけれども、信長様のこんな思いつめた表情なんて見たことがないな。あの頃はいつも、まぁ、勇ましくはなかったしどちらかと言えば、頼りがいがなかった。だけれども、誰からも尊敬されていて、したわれていて、それでいて嫌われていて・・・ほんとに不思議な人だった。だからこそ、信長様には特別な力がある、信長様はすごいと思っていた。だけれども今の信長様は、ただの人じゃないか。どこにでも居そうな、いたって普通の人だ。
ドスンと構えていればいいのに、なぜ自分から仕事を探し始めてしまったんだろう。信長様は、そういう器の人じゃないはずだ。それなのに、なんで、なんでこうなってしまったんだ。性格が変わったってことか? それは、ありえないと思うけれども・・・。
※※※※
「信長さん」
美希が俺の名前を呼ぶ。
「何だい?」
俺は、答える。
美希は、俺と同じような浮かない顔をして聞いてきた。
「どうして、働きたいんですか?」 と。
「どうして・・・」
いや、それは美希にお礼をしたいから働きたいんだけれども、それを言ってしまっては何だかつまらなくなってしまうし、それ以外の理由がないとも言えない。
お金がたまれば、いろいろなことができるようになると思うし、俺をモチーフとした作品もたくさん集められるはずだ。だけれども、それを理由として言ってしまうと、「こいつ、自分好きのやばいやつ」と思われてしまうかもしれない。
ここで何も答えないのもおかしいと思うし・・・なにかしら、理由を作って答えるか!
「ある人に、贈り物をしたいんだ」
「贈り物・・・ですか・・・・・・」
やばい、美希がすごく困った顔をしてる。やばい、贈り物って言っちゃった。ほとんど答えじゃないか。バカだな、馬鹿だなぁ・・・俺は。
「いや、まぁ、それ以外にもあるからあんまり気にしないでくれ」
「はっ・・・はい・・・」
このあと、美希と俺との会話の空気は静まり返ってしまい、もう、なんだか良く分からない雰囲気になってしまった。




