四十八巻目 ワンピースだ
しかし、ジョンの言う通りもう少し楽に生きてみるのもいいかもしれない。現状ではかなり楽をしているつもりだが、これは俺基準で考えての楽だから、現代基準だったらまだまだ楽という部類にたっしていないのかもしれない。楽ということを強く考えるたびに、どんどんと苦になっていく。楽になるには、苦を背負わなければならないということだろうか。
と、まぁ俺はこんな小難しいことちょっとばかし考えてみた。俺だって、難しいことぐらい考えられるのさ。朝から難しいことを考えて何が悪いっていうんだ。俺は十分楽に、力を抜いて生きているんだよ。俺の人生で一回でも力をかけたものなんてない。誰かが、「いや、この時のかっこいい信長さんはものすごく力を入れていましたよ」といったとしても、当の本人が力を入れていないといっているのだから、その発言は俺によって、否定されるだろう。
俺はこれからも力を抜いて生活をしていこうと思う。
ただ、力を抜く代わりに物事にはしっかりと打ち込みたいと思う。例えば、今日の三時からの彼女と町を散策する事とかをだ。しっかりと、彼女を連れて、彼女を助けて助けられ、安心感のある散策をしたいと思う。
はぁ・・・早く。早く・・・・・・。
※※※※
「全く信長様も人騒がせな人だよ・・・」
綺麗に整頓されて、部屋はピンクを基調とした女子感があふれていた。まさしく王道の女子部屋といったところだろうか。
そして、その部屋の隅に置かれた鏡台はこの部屋に似つかわしくない、年季の入った鏡台だった。その鏡台の前で美希は長い髪を結っていたのであった(ツインテールに)
いつもであればポニーテールをしている彼女だが、今日は信長と会うから少しばかりおめかしをしているのだった。・・・というのは冗談で、いつもの恰好で街中に出かけてしまったら、彼女のことを知っている人に会ってしまう可能性があり、最悪とてつもなく面倒なことになってしまうからだ。彼女は、こう見えてもものすごく(一部に)人気なアイドルなのだ。だからこそ、こういった気配りが必要になってくるのだ。
「・・・まぁ、信長様にばれないようにして一日無事にすごそう!」
化粧をし終え、彼女は意気込みあらわにした。
そして、彼女は洋服を着替えを始めた。今日の洋服は、ワンピースだ。
※※※※
残り一時間を切った。ついに、一時間を切ったのだ。いいか信長、落ち着いて思い出せ。今回は、仕事を探すための時間なのだ。決して彼女と戯れる時間ではないのだ。しかし信長、こうも考えろよ。この時間は彼女と一緒に仕事を探せる貴重な時間だ。ならば、彼女と一緒にじっくりと仕事を探すのもまた大事なのだ。しっかりと、しっかりと考える・・・
「ノブ、やっぱり気持ち悪いですよ」
「う、うるさい!」
クソ・・・ちょっとばかり恥ずかしいじゃないか。




