四十五巻目 ――馬鹿な人ですね
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「とりあえず、連絡をしておきますね」
腹立たしくなってからしばらく立った後、ジョンは彼女に連絡を取ってくれると言った。腹立たしいのはまだ解決されていないが、ここまでしてくれるとは、本当にありがたい。
「でも、制限がかかっているのに電話ができるのか?」
「安心してください。電話はできますから」
ジョンはにやりと笑った。それは、安心感のある笑いだった。
※※※※
上には青い空と白い雲が浮かんでいる。そんな美しい景色は、どこまでもどこまでも広がっていて、ここからではすべてを見渡すことはできない。
上以外には、白い塔が何本もたっていてとても不思議な感じだ。
「・・・一体、ここはどこなのだ」
この時代には、全く似合わない男がつぶやいた。髭をぼうぼうとはやし、ものすごく汚れた着物を着ていてすごく臭っている。そして、髪の毛をしっかりと結っておりいわゆる武士のようないでたちだった。
彼がこの言葉を呟くまでに、大体十分ぐらい時間がたっていた。最初は地面に寝転がっていたが、今は胡坐をかいて座っている。人通りの多い道なので、彼のことを道行く人はまじまじとみて、「ヤバイ」とか「おかしい人」と何度も口にしていた。しかし、彼はそんな言葉を気にすることなく、ただ「ここ、どこなんだろうな」と何度も口にしていた。
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どれくらい時間がたっただろうか。
彼は、まだ一歩も動くことなく同じ場所に胡坐をし続けていたのだ。ただ、じっとここがどこなのかを考えていたのだ。
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何十回も、何十回も、何十回も考えても答えは出なかった。
答えが出なかったことに彼は落胆し、絶望した。
そして、彼は寝転がってしまった。目を閉じ、眠りの体制に入ってしまったのだ。
しかし、眠ることはできなかった。不安感が心を完全に掌握しており、安心感が入り込む隙を与えないのだ。ここはどこなのだ、いったい俺はどんなところに来てしまったのだろうか・・・。何度も問いかけるが、答えは出てこない。それでも彼は、問いかける。自分自身に問いかける。自分自身に問いかけても意味がないことは彼が一番分かっている。しかし、彼は不器用な人間なのだ。己に問いかけることしか、方法を知らないのだ。
「――馬鹿な人ですね」
※※※※
「・・・・・・連絡、終わりました。明日の三時頃にここまで、彼女が来てくれるらしいですから、楽しみに待っていてくださいね」
「楽しみに待っていろって言われてもな・・・」
・・・全く、楽しみすぐるな! 明日の三時?まで待てるかどうか分からないけれども、しっかりとじっとしながら待っていることにするよ。
えへへへっ。またまた、笑いが止まらないよ・・・えへへへへっ・・・・・・。




