四十二巻目 ・・・働けば、いいのかな?
「うるせいやぁ」
とても小さな声で、藤吉郎は呟いた。
「ん? 何を言ったんだ?」
ジェルマンは、その呟きをはっきりと聞き取ることができず、疑問形で聞き返す。
藤吉郎は、どうやらジェルマンが疑問形で聞き返したことに腹が立ったらしく、「ちっ」と舌打ちをした。
ジェルマンも、藤吉郎が舌打ちをしたことに苛立ちを覚えたようだ。
「おい、俺に舌打ちをするとはいい度胸じゃねぇか」
かなり低めの声で、ジェルマンは藤吉郎に言う。
「なんだと、この野郎!」
藤吉郎もまた、ジェルマンに言い返す。
二人はどちらも、にらみを利かせて相手を見ている。
数分間のにらみ合いをした後、二人ともなぜか口元にゆるみが出た。
「ふふ・・・」
「はははっ!」
ゆるみが出た後、思わず二人は笑い声が漏れてしまった。
「おい、未来人」
藤吉郎は、ほほえみながら言う。
「なんだよ」
ジェルマンも、ほほえみながら答える。
「お前、なかなかいい目をしているな」
「そんなの、昔のRPGでしか聞いたことがないセリフですね」
二人ともどうやら、打ち解けたらしい。
※※※※
「とりあえず言っておきますが、お金は貸しませんからね」
「だれも、金を貸してくれとは言っていないだろ」
「いや、あとで言いそうなので・・・」
「金を借りるなんて、そんなまね俺がすると思うか?」
「思いますね」
全く。ジョンはいったい俺を何だと思っているんだ。俺ほどの人間が、金を他人から借りる思うか? 普通。もう、訳が分からねぇよ。
でも、まぁ、ジョンの言う通り、俺は今金を借りるとかそういうことをしなければならない状況だ。贈り物をするなら金が必要。その金を手に入れるには、金を借りるのか・・・ん?
「またまた、どうしましたか? ノブ」
「いやさぁ・・・」
なんでこんなことをすぐに考え付かなかったんだろうか。ちょっとボケてしまっていたのかもしれないな・・・やばいな。金を借りるとかそういうこと以前に、俺はこの行動をすれば金を得られるではないか!
「・・・働けば、いいのかな?」
そうさ、働けばいいのさ。働けば金が手に入るはずだ。 なんで俺はそんなことに早く気づかなかったんだろうか・・・・・・。
「なぜ気づかなかったか」
ジョンが突然しゃべり始めた。また俺に心をのぞいたらしく、俺が心で思っていた疑問に対して答えを導こうとしている。今回は、心をのぞいたことは水に流して、ジョンの答えを聞いてみたいと思う。たまにはこういうことをしなくてはな。
俺はとりあえず、ジョンが言ったことをオウム返しした。
するとジョンは、にんやりとした顔になり、こう続けた。




