四十巻目 うぐぅう・・・
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短時間で俺は、様々なことを覚えることができた。文字の出し方、現代の文章の書き方、絵文字、ネットスラングなどなど・・・。
すまーとほんではなくて、スマートフォンという発音だということも、しっかりと学んだ。スマートフォンのことを勉強していたと思ったら、いつの間にかこの時代のことをすっかりと学んでしまった。
本当にいろいろなことを調べたさ。最初は、俺が調べたいと思っていた、現代の女(今ではしっかりと女性とよぶようにしてるさ)に贈る贈り物。その後は、俺のことを調べてみたり、俺が元々いた時代についても調べてみた。この時代では、俺がもともといた時代のことを戦国時代というらしい。名前だけ聞いてもおどろおどろしいものを感じるが、実際にそんな感じだった。この名前は、この時代にあっているといえる。あとは、本能寺のことが終わってからの俺の家臣たちの動きとか、誰が天下を取ったのかを調べたりした。
まさかとは思ったけれども、猿がとっていたとはねぇ・・・天下を猿がとるとはね・・・・・・・驚きだよ。みっつーは、落ち武者狩りにあって死んじゃったらしいね。まったく、俺を倒せたんだから、もう少し頑張ってくれればよかったのに・・・。
まったく、嫌になっちゃうね。知りたかったことを知ると、こんなにも、もやもやとした気持ちになるんだね。誰にぶつけたらいいのかわからない怒りとかは生まれない。だけれども、誰かに分かったほしいんだよね、俺が今思っているこの気持ちをさ。ジョンだけには教えたくないけれども。
ちょっとばかり、ジョンのほうを見てみる。すでに俺は、スマートフォンをジョンに返却して自分の気持ちの整理をしている。ジョンは、俺が返したスマートフォンの画面をずーっと見つめたまま、表情が固まったまま静止していた。
「どうしたんだ、ジョン?」
少し心配になったから、ジョンに聞いてみた。
それなのに、ジョンは言葉を返してこなかった。なぜだろうか。
「おい、ジョン? 大丈夫か?」
再度ジョンに問いかける。そうするとジョンは、「うぐぅう・・・」と声をもらした。
「なんだよ?」
疑問だ。謎すぎる声だ。
するとジョンはようやく重い口を開いた。
「・・・何をしてるんですかノブ」
ものすごく、ためてから言葉を発した。
「何してるって・・・何のことだよ?」
何のことなんだろうか。
するとジョンは、スマートフォンを滑り落として深呼吸をした。
「な、なんで深呼吸をする必要があるんだよ・・・」
もう、困惑する以外にできることがない。
ジョンは、なんというか絶望した顔、と言ったほうが一番いいような顔でこういってきた。
「どれだけ調べれば気が済むんですか! あなたのせいで、私もう、制限がかかって・・・動画が、もう、見れないじゃないですか・・・」
これを言った後、ジョンはちょっと泣いていた。
なぜ、泣いていたのかはよくわからなかったけれども、ジョンが悲しそうなのはちょっとだけ伝わった。なんだか、いけないないことをしたな。良く分からないけれども。




