三十九巻目 ははは!
「どうですか、ノブ。調べものができたことに驚きすぎて、声も出ませんか?」
ようやくジョンがいつものうざい顔になった。だけれども、そんな顔なんてどうでもいい。どうでもいいんだ。
触りたい、調べたい、調べた結果を見てみたい!
俺は今、あの小さな黒い箱でどんなものでもいいから調べたいという欲望にかられている。
すごいな。あんなものを見るだけで、こんなにも心が興奮することができるだなんて・・・。
自分ではあまり意識してはいなかったが、結構ウキウキしていたらしい。鼻息も荒く、誰が見ても、「こいつ、興奮しているな」と思ってしまうほどの姿だったらしい。
そんな姿を見てジョンは、またにやにやして俺にこういった。
「調べてみますか? ノブも調べてみたいでしょうに」
すげーぇにやにやしながら、こいつは言うもんだ。くそ・・・・・・でも、調べたいのは本当だから言い返すこともできない。
ジョンはこの前俺が少し怒ったことを覚えているようで、にやにや顔の中にもすこし焦りが見えていた。
まぁ、俺もやりたくないわけではないからな。
「・・・調べる」
思いっきり「調べる!」っと言ったら何か負けた気がするから、とりあえず控えめに、小さく言ってやった。
「分かりました!」
ここぞとばかりに、ジョンは大きく答えた。
※※※※
「ごめん・・・・・・話が長すぎてあんまり聞いてなかったわ」
「そんな・・・」
男はうっすらと涙を浮かべるが、女の言った通り本当に本当に長い話だった。
話をしている間に、女は「飲んでみるか」とつぶやきながらコーヒーを恐る恐る飲み、「うまい!」とつぶやいて笑顔になっていた。
「長かったからさ、短くまとめたらどうなるの?」
女が男に尋ねる。女は、先ほどまでのイライラとは打って変わって非常に落ち着いた顔つき、声色で尋ねている。
男はそんな女の表情に安心したようで、一度「ほっ」っとため息をつき答えた。
「ようは、今のあなたは偽物のあなたであり、本物のあなたであるということですよ」
男は自信気にそれを言い放ったが、女は
「わけわからないわよ」 と答えた。 まぁ、無理もないだろう。
「いい加減、あなたもその姿と言葉遣いが一致してきたみたいですね」
男はにやりと笑った。
※※※※
「そうです。それをそうやって、こうやって、そうすると・・・そうです!」
「なるほどな」
今、俺がやっているのはキーボードをフリックして、文字を入力するというものだ。最初は初めての体験で、興奮の陰に若干ながらなれない操作に不安もあったが、今では簡単に操作できるようになった。人間、慣れてしまえばいいものなんだなぁ、と実感してしまうほどだ。
「それにしても、ノブは本当にこういう興味のあるものに関しては上達が異常なまで二速いですね」
ジョンが俺をほめているのか、はたまた嫌みを言っているのかは分からない。だけれども、ジョンにそこまでのことを言わせるようになったのは、自己満足であるがとてもすごいことなんだと思う。やったぜ!
「まぁ、当然さ。俺ぐらいの人間が、これぐらいの事を短時間で習得できなければ、下のものに申し訳が付かないからなぁ」
ニヤニヤと、俺はジョンに言ってみる。
「ノブ」
ジョンは、俺の名前を呼ぶ。
「そのにやけ顔、うざいですよ」
ははは! お前だけには言われたくなかったよ!




