三十八巻目 現代の技術
「――これで、調べますから」
ジョンは、黒光りする小さな箱を俺に見せてきた。この前に触った箱と同じものだ。
「本当に、調べることができるのか?」
俺は、ジョンを疑うことを決してやめない。だって、この小さな箱で調べ物ができるとは到底思えないからだ。
「時代と技術は一歩一歩進歩しているんですよ、ノブ。私からしたら、このスマートフォンでさえ物足りないぐらいですからね」
おいおい、物足りないってどういうことだよ。本当にこいつは物事を肥大化していうやつだな。それが、南蛮人らしいのかもしれないがな。
「ノブ。私はアメリカ人です。そこらへんはしっかりと理解してくれませんと困りますよ・・・」
アメリカ人・・・か。一度、アメリカでもどこでもいいから、海の向こう側に行ってみたいものだな。というか、アメリカっていうのは、国なのだろうかな?
――――――
ジョンは、黒い小さな箱の透明な部分(たぶん、操作するところ)を指で叩いたり、なぞったりしている。
まぁ、それくらいであれば俺も体験した。もうそれぐらいでは俺は驚かんよ。いくら今の技術がどれだけ高くとも、一度体験してしまえば初めて体験した時のような感動はどこかへ消え去ってしまう。ただ、今回に関してはこの小さな箱でいろいろなことが調べられるという事を知った。もし、本当に、本当にジョンが嘘をついていないのであれば、俺が小さな箱で調べるという行為を行った瞬間に、また新しい感動に出会うことができるだろう。そしたら、また驚いて「すごい! なにこれ、すごい!」と声を上げてしまうだろう。
さぁ、ジョン。私を、驚かせてくれたまえ・・・。
「ほら、できましたよ。ノブ」
「えっ?」
ん? 何ができたというのだろうか?
「ほら、調べ物ができましたよ。今回はピザの作り方を調べてみましたから、見てみてください」
調べ物ができた? ぴ、ぴざの作り方? おいおいおい・・・。いっぺんに言われても分かんないぜ。何の暗号を言って俺を騙そうとしているんだぁ~?
「どうしたんですか、ノブ? 額が汗でかなり濡れていますが、暑いですか?」
・・・暑かなんかないんだよ。この汗は冷や汗だよ。
「本当に、調べ物ができるんだな?」
確認の意味を込めて、しっかりと確認する。
「だから、それを実証するために調べ物をしたじゃないですか。認めてくださいよ」
ジョンはちょっとだけ面倒くさそうな表情をして、面倒くさそうに答える。
「・・・本当に、できるんだな?」
再度確認。しっかりと、間を少しおいて、確信を持つためにもう一度聞いた。
「だから本当ですから!」
さすがのジョンも、我慢ができなくなったらしい。大きな声で、本当だという事を俺に向かって言った。
「・・・」
大きな声を言われていつもだったら「うるさい!」と一喝したいところだが、今日のところはそういう訳にはいかない。あまりの驚きに、あまり考えられないようになってしまったのだ。あんな小さな箱で、本当に調べ物ができるなんて・・・すごすぎるだろ、現代の技術。




