三十七巻目 絵がすごく動くやつ
贈り物を決めるとなると、贈る相手の気持ちを考えて決めなければならない。
戦っていたあの時は、良い戦績を挙げたものには領地や茶器を送っていたけれども、現代、それも女にはどのような贈り物をしたらいいのだろうか。
昔だったら調べ物をするには、調べたいことを知っている奴を呼んで聞いてみれば一発だったが、今はどうなんだろうか。
――――
「スマートフォンを使えばいいんじゃないですか?」
「すまーとほん・・・って、あの、絵がすごく動くやつのことか?」
すまーとほん。俺がこの時代に来て、彼女に出会ったこと以外で一番驚いたものだろう。あれは本当にすごいんだよ。この時代の力をすべてあの小さな箱に収められていると聞いたときには、「あぁ、人間っていうものは素晴らしく成長するものなんだなぁ」と実感することができた。今の時代の力を俺が元々いた時代に持っていけたら、即座に天下なんて言うちんけなものは簡単に取れるはずだ。
いつか、あの時代に戻れた時には必ずこの技術を持ち帰ってみんなをぎゃふんといわせてやろう!
・・・そんなことは今はどうでもいいんだ。今、一番の疑問なのはそのすまーとほんで調べものができるという点だ。
あの小さな箱に、一体何ができるというのだろうか。勿論、箱は素晴らしい。素晴らしすぎる。だけれども、知識人と同様の知識をそこに備えつけているとは、どうにも思えない。むしろ、今までのジョンの悪行を見てきた俺にはジョンが俺を一生懸命になって騙そうとしようとしてるようにしか思えない。日頃の行いというものは、こういう時に出てきてしまうものなんだなぁ・・・。
「・・・ノブ。私の事をどんな風に考えているかは分かりませんが、どちらにせよ私にはこれ以上の説明は難しいですよ。どうか、理解して下さい」
ジョンが音を挙げている。こんなジョンを見るのは初めてかもしれない。
「でも、理解しろと言われてもなぁ・・・」
ジョンが音を挙げてしまったとしても、俺にはジョンがなぜ音を挙げてしまったのかも分からないし、一方的に理解しろと言われてもかなり無理がある。
俺がそんな風に考えていることを、少しばかり想像できていたジョンは即座に次の提案を俺にした。
「なら、一度スマートフォンで調べ物をしてみたらいかがですか?」
いつものようなうざいにやけ顔ではない、高級感のある笑顔で俺に提案してくる。
ここまで提案をされたら俺としても、断る理由もない。答えは一つしかないな。
「なら、お言葉に甘えさせていただこう」
とりあえずは上位に立っていたいから、少しばかり上から目線で言ってやったぜ。




