三十六巻目 サン・ジェルマン
そうか、贈り物か・・・。贈り物を考えることをするならば確かに、この心残りを解消することができるかもしれない。
贈り物か・・・・・・そういえば、みっつーは八重桜を大切にしてくれてるのかなぁ・・・。
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「本当に、いなくなっちゃうの?」
「仕方ないだろ、お前は天下を取ったんだから。気分的には最高だろ?」
「そうだけどもさ・・・」
秀吉とジェルマンは、少し静かな場所で話をしている。いつもの二人ならば、うるさい話をしているが、今は少し低いトーンで話をしている。
その原因というのも、ジェルマンが「帰るから」と言ったところから始まったのだ。
秀吉は、ちょっとだけ悲しい表情でジェルマンを見ている。
ジェルマンは、そんな顔を見て「はぁ・・・」とため息をついた。
「いいか? 前にも言ったと思うが、俺は未来人なんだよ」
「そんなの信じられるわけ」
「信じろよ」
ジェルマンは、秀吉の言葉にかぶせるように答えた。結構低い声でね。
ジェルマンは顔を真っ赤にして、こう続けた。
「俺は未来人で、この時代にあった時空道のずれを観測するためにここに来たんだよ。お前にあれこれ言っていたのは、それが歴史的にそう設定されていたから言っていたわけなんだよ。別に俺はお前と仲良くしたいわけでも、友達になりたいわけでもないからな! むしろお前みたいな無能は、本当だったらこの時代死んじまってるんだからな!」
ジェルマンは言い終えた後、上を向いた。
「・・・」
秀吉は、無言でジェルマンを見つめる。潤みつつも、まっすぐとした目で。
そして、上を向いてるジェルマンは「グフゥ・・・」と声を漏らし目から涙を流した。
「・・・しっかりやれよ、豊太閤様」
「うん・・・ジェルマンも元気でね」
「おう」
翌日、ジェルマンはこの時代から姿を消した。
そして、時間はまた元に戻る。
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暗い森の中に、一人の男が一人の男を捕まえ、話しかけ始めた。
「よう、お前が・・・豊臣秀吉なのか?」
「だ・・・誰だ! 俺の名前は藤吉郎ってんだよ!」
藤吉郎と名乗る男は、捕まえられた男に対して激しくにらむ目をしている。
「・・・やっぱり、豊臣秀吉か。前の秀吉とは、えらく違った性格だなぁ・・・」
南蛮風情の顔立ちをした男は、藤吉郎のそんな表情など気にも留めず自分の考えが正解していたことに関して、納得していた。
「だ、だ、だから、お前はいったい誰なんだよ! 人間なのか?」
今度はおびえた表情で藤吉郎は聞いている。
そうすると男は、藤吉郎の頭を撫で、「まぁ、落ち着け。お前はいずれ天下を取る男なんだから」と言い、続けてこういった。
「俺の名前は、サン・ジェルマン。こう見えても未来人だから、よろしくな」
「・・・未来人?」
藤吉郎は、ジェルマンの言葉に激しく疑問を抱いていた。
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