三十四巻目 アメリカという国
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「あなたが女性になっている理由ですか・・・」
コーヒーを飲みつつ指で円を描きつつ、男は女の疑問に対しての答えを考えていた。
「うん、さすがに教えろよ。知ってるんだろ?」
女は、そんな男の行動を見て少し冷静さを取り戻したようで、少し落ち着いた口調でさらに男に詰め寄った。
そして、少々の時間がたったあと男がポン!と手を叩きようやく指で円を描くのをやめた。
「やっぱり、知ってるんだろ!?」
女は、取り戻した冷静さを一瞬にして失った。喰いかかるように男に尋ねたのだ。
「深い理由を説明することはできませんが、あなたがこの時代に来て女性になってしまった理由ならば答えられますけど・・・それでもいいですか?」
心の中では、「もしかしたら、私殺されるんじゃないのかな?」と男は内心思っていた。それほど、女の目、口調、表情は険しく、誰がどう見ても男を殺そうとしているのではないのだろうかと、疑問を持ってしまうぐらいのものだった。それゆえ男は、非常に臆病になりとてつもなく小さく、丁寧な口調で尋ねたのだった。
「別にいいから、早く教えろよ」
可愛らしい口調とは裏腹に、女の言葉にはどこか男らしさがあった。まるで、女の面をした男のようだ。
「そうですねぇ・・・どこから言っていけばいいのでしょうかね」
「ためなくていいから、早く言えや!」
「は、はひぃ!」
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なぜ、あなたがこの時代に来て女になったか。それは、とてつもな~く簡単な理由です。
あなたの今の姿は仮の姿、この時代でのみ使える“アバター”・・・あなたの時代でいうと頃のえぇ~と、“影武者”といったところでしょう。その影武者を利用するには、あなたの過去の記憶と、この時代の影武者との記憶を同期する必要性があります。だけれども、同期するさえには少しばかりリスク、えぇっとこれは危険な投資をしなければいけないんです。その危険な投資というのは、過去の自分を消して記憶だけをこちらの世界に飛ばして同期するというものなんです。それで、まぁあなたの過去の姿は消えて、あなたはこの世界で影武者を利用することができるんです。なぜ。影武者を利用しなければならないのか、というのはちょっとばかり、説明するのが現時点では難しいので、後々話したいと思います。もしかしたら、あなたの問いに対して、私はしっかりとしたことを説明できていないかもしれません。非常にわかりにくい説明で、色々と抜けているところもあって、今一瞬にして理解しろというのは無理がありますね。
だけれども、現時点で私が話せるあなたの質問に対して、一番詳しく、一番あっている答えはこんな感じですね。まぁ、私もまだまだ日本語を勉強している最中ですので良く分からない部分があったら、それのせいにしてください。あと、私は南蛮人じゃないですから! これでも立派な、アメリカ人ですから! そこらへんは、私厳しく言いますから。私は、これでもアメリカという国に誇りを持ってますから。素晴らしいですよ、アメリカという国は!
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