三十二巻目 素晴らしいね、ラブコメって!
一つ目は、ジョンがこのでーぶいでーに対してのかなり熱い思いがあるということだ。
見ている目線が熱く、まるで目から炎を放っているようだ。こっちまで熱気が伝わってきて、暑くて暑くて仕方がない。まったく、もう何なんだよこいつは。
二つ目は、このでーぶいでーに登場する絵についてだ。
・・・これって絵じゃないんだな。びっくりだよ。これって本当の人間をキャメラっていう道具を使ってさつえい(絵を勝手に描いてくれること)してるんだな。そのことを知った瞬間に俺の体に、ビリビリッてなんか衝撃が走ったんだよ! すごいよな、だってキャメラって道具はなんでも絵を描けるんだぜ! この道具を使えば夢の内容さえも絵にできるんじゃないのかな・・・一度使ってみたいものだよ。
三つ目は、登場してきた人物についてだ。このでーぶいでーは、らいぶでーぶいでーって言って、らいぶって言うものをやっているときに、その様子をキャメラで直接とったものを円盤化?したものらしい。正直、“円盤化”という言葉はわからないから後々勉強したいと思うが、多分でーぶいでーにすることをそういう風に言うんだろうな。うん、絶対そうだ。
それでだ、そのでーぶいでーに映っていた人物たち。女が大半だったが、その中でも特に、特に輝いていた人物、女がいたのだ。
あんなに輝いている人物・・・ほかにも先にも一人しか見たことがない。そう、あの人物は、あの人物は・・・!
四つ目は、この部屋(家)についてだ。この家は、ジョンが俺にくれた?とされている家だ。台所、居間、雪隠(洋式?)、棚でこの家は構成されているが、これだけ部屋があるのになぜこんなにも部屋が小さいのだろうか? 思った以上に小さい。外をのぞいてみると、高さ的に言うと結構な高さだが、その高さ、それ全部が俺の家ということもない。俺の器が大きいから絶対に「この野郎! ふざけんなよ!」とは言わないが、器が小さいやつだったら絶対にジョンのことを殺しているはずだ。ジョンよ、本当に俺に感謝しろよ? もし俺の心をにやにやしながらのぞいていて俺に感謝する気があるんだったら、「はい! わかりました信長様!」と、言うんだ。
それが、俺に対しての一番の感謝の行動になるからなぁ。
「ふ~ん、ふ~ん!」
・・・鼻歌を歌っているようだから、心をのぞいていないようだ。まぁ、本当に心をのぞかれていたら「心がちいせぇ奴だな」と思ってしまうかもしれない内容だったから、俺にとっては今心をのぞかれなかったのは、幸いといえよう。元々、心をみないのが当たり前なんだけれどもそこら辺は忘れることにしよう。
そして最後五つ目。これはもう、なんで気づかなかったんだろうか、っていう話なんだけれども、気付いたらいたんだよ。
「信長さん。お茶、できましたよ!」
かわいい笑顔で、お茶を出してくれた。マグカップといわれるものには取っ手がついていて、熱くても持てるようになっている。このマグカップでお茶を出してくれたのも、彼女の優しさといえよう。
彼女のやさしさをいっぺんに受け取ることはできないが、これだけ言っておきたい。
「おいしいよ、このお茶」
「ありがとうございます」
今にでも恋が始まりそうだな。こういうのは現代のらぶこめ文学の定番なんだろ? なら、俺もラブコメ文学にあやかりたいと思う。素晴らしいね、ラブコメって!
彼女の存在に気付いたのは、そんなことを考え終わった時だった。彼女は風のようにこの部屋の中に入り、お湯を沸かし、乾燥した茶葉にお湯をかけお茶を作った。
この一連の工程を俺は、目視することなく、らいぶでーぶいでーに集中していたのだった。あの、かわいらしい彼女に気付かずにらいぶでーぶいでーを見ていたんだぞ! そんな、カノジョに失礼なことを・・・してしまうなんて・・・。
「あっ、これ私のDVDじゃないですか!」
カノジョが突然声を上げた。彼女の手には、先ほどまで見ていたでーぶいでーの箱があった。
「へっ?」
あまりにも突然で、思わず声が出てしまった。びっくりだよ。
その間にも、でーぶいでーの箱の角でジョンの頭を、何かぼそぼそと言いながらたたきつけている。ジョンは痛みを感じないかのようににこやかに整形を続けている。
まったく、ジョンは神経が図太いのだろうか?
それにしても、これで一つ確信をもって一つ言えることがある。
あのらいぶでーぶいでーに出ていたのはやっぱり・・・
「やっぱり君だったのか」




