三十一巻目 ドーナッツ大好きなんですよ
「いつも通りの行動か・・・」
余韻を楽しむ唯一の方法、“いつも通り”。これもまた考えると奥が深いもんだ。いつもやっていることを挙げてみるなら、てれびを見ることや食べること、寝たりすることだ。もちろん、これで余韻を楽しむこともできる。
しかし、ジョンと同じように余韻を楽しむのはちょっと・・・自分の自尊心を傷つけかねない行為だ。絶対にありえない事だ。
「しかし、どうすればいいのかな・・・」
ジョンは俺の独り言にも耳を貸さず、「ふ~ん、ふ~ん。ふ~~ん!」という感じで鼻歌を歌っている。俺が見る限りにはもうプラモデルはきれいに整形されていて、これ以上何が必要なのか? という疑問すら湧いてくる。だけれども、これは好都合だ。
余韻を楽しむ、余韻を楽しむ、余韻を楽しむ・・・・・・。今思ったが、俺の考えなんだか巡り巡って最初に戻ってきてないか? まぁ、いいか。
いつも通りだけれども、いつも通りじゃないこと。これが、今もっとも正解に近い答えだ。
この答えに、一番近い余韻の楽しみ方とは一体・・・・・・。
「ライブDVD、もう一回見ますか?」
ジョンの声が、部屋に響く。それは、本当に突然のことだった。
ライブでーぶいでー・・・確かに俺の答えに一番近い答えだ。確かに、いつも通りだけれども、いつも通りじゃない。ライブでーぶいでーはてれびで見れるけれども、いつものテレビでは見ることが出来ない。
これでいいのか? ジョンの提案に従ってもいいのか? 俺の自尊心は傷つかないのか?
・・・。まぁ、いいか!
「うん! もっかい見る!」
そりゃあ、明るい声で言ってやったさ。
とりあえず、従ってみよう。 それが、一番いい選択だろうな。また新しい発見があるかもしれないしな。
※※※※
「・・・っていうことは、ここが未来の世界だっていうの?」
「さすがですね。あなたは理解力が高い。だからこそ、人がついてきたのでしょうね」
カフェの中ではいろいろな人たちが楽しく飲み物や食べ物を食べながら、会話をしている。その中でただ一つ、とてつもなく冷たい空気が流れた席があった。冷たい空気を流しているのは、女のほうで男は頑張って空気を和ませようとしているが、どうにも女にはその気持ちが伝わっていないようだった。
男は、コーヒーを飲みドーナッツを食べ始めた。
「まぁ、すぐに理解することはできないでしょうからこのコーヒーを飲んで少し落ち着くといいでしょう。ドーナッツもありますから、食べたければ言ってくださいね。私、ここのドーナッツ大好きなんですよ!」
男は誰も聞きもしない情報を勝手に提供し続ける。きっとこれは、この空気を和ませようとしている行動の一つなのかもしれないが、はたから見ても非常にイラつく光景だった。特にあの笑顔、あの笑顔は本当にイラつくね。
「コーヒーを飲む気なんてさらさらないわ。この時代に関しては後で理解するとして・・・」
女は少しだけ言いかけて、水を飲んだ。
そして、水を飲みほした後のコップをドンッ!と机の上に置いた。
「も、ものを大切にしないとだめですよ!」
男は少しおびえた表情で指摘する。しかし女は、まるで戦国時代の武将のような表情でこう言い放った。
「だから、お前は誰なんだ? なんで私が女になっているんだ?」
※※※※
二回目。もう一度あのでーぶいでーを見て新たな発見をした。五個も発見したのだから、これはすごい収穫だろう。
一つ目は、ジョンがこのでーぶいでーに対してのかなり熱い思いがあるということだ。




