二十九巻目 うひゃっほぉぉいいぉいいっ!」
「さて、それでは始めましょう。夢の国へとお連れいたしますよ!」
意気揚々とジョンは、そう言った。
ようやく見ることができる事ができるのか、“あるもの”というものが・・・。
この時点で俺は、今までのジョンの行動から察するに「あぁ、“いいもの”というのはてれびで流す、いつもと同じでーぶいでーなんだなぁ」と思っていた。だからこそ、見たいという気持ちとは裏腹に、少し残念な気持ちになってしまった。
だって、いつもの同じ類のものをジョンが進めるとは、少しばかり残念だなぁと思ってしまったからだ。
だけども、その思いはジョンが再生ボタンを押すのと同時に打ち切られた。
だって、押すのと同時に始まった、始まった光景は・・・・・・
「うひゃっほぉぉいいぉいいっ!」
突然、ジョンが奇声を上げた。いつもとは違う、違う感じの奇声だ。
しかし、無理もないだろう。このような、こんな・・・こんな・・・
「これは凄いじゃないか、ジョン!」
「でしょ!?」
この思いを伝えるには、どうやらこの時代の道具を使ったとしても不可能だ。というか、この思いは永遠に伝わることができないだろう。
この時代の言葉、俺が知っている言葉でこの思いを表現するのであれば一番近いのは「素晴らしい、最高、楽しいぜ!」という言葉だけだろう。その言葉を使ってしまうと、子の気持ちが霞んでしまうかもしれないけれどもな。
てれびに出てくる絵は、今まで見たどのでーぶいでーの中には無い輝きを放っていて、目を閉じてしまうのも惜しいくらいだ。圧倒的なまでの音楽、圧倒的なまでの背景、そして圧倒的なまでの
「圧倒的なまでの容姿ですかね? ノブ?」
「あぁ、そうだよジョン」
心を読まれているのは気に喰わない。だけれどもそんなことがどうでも良くなってしまう。これは本当にいいものだ。これは、本当にいいものなんだ。
かわいらしい格好をした女たちが、踊ったり、歌を歌っている。超人離れした動きをすると思えば、また色っぽい声で歌ったりもする。どれも美しく、かわいらしく、愛おしい。
「ジョン」
少しばかり、低めの声でいってやった。だけどもその声には怒りを込めたりはしなかった。
その意図をしっかりとジョンはくみ取ってくれたようで、ただニヤッとして頷いただけだった。
この思いを理解するには、同じ思いにならなければならない。俺はそう確信した。
――――
「ふぅ・・・」
一度、落ち着こう。異常なまでに白熱をしてしまった。
「ノ、ノブ・・・良かったですね・・・」
「あぁ、そうだな・・・」
疲労感たっぷり。幸福感もたっぷり。もう、あれだね。幸せってこういうことを言うんだね・・・。
「とりあえず、水を飲みましょう。ライブDVDを見てからもう五時間たってますからね・・・汗だくだくですよ」
確かに、ジョンの言う通り汗がだくだく流れ出ている。外を見てみると、暗くなっていたので時間がかなり経過してしまっていることが理解できた。
「うん、早いこと水を飲んで落ち着こう・・・」
とりあえず、水を飲もう。余韻を楽しむのはそれからだ。




