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信長さん  作者: はいむまいむ
第二章 信長、人の下で働く
30/358

二十八巻目 ちっちっちっ

※※※※

パシッ!


「はっ! ・・・ノブ、落ち着いてください」

両手でとられるとは・・・。渾身の一振りだった。力を加減せずに振ってやったのに、手で取られるとは本当に不覚だった。これ以上の力を出すことはできないが・・・


「次は、少し技を加えて振ってやるよ。大丈夫だ、一発で仕留めてやるから」

「ヘイヘイ、ノブ! 落ち着いて、落ち着いて。深呼吸! 深呼吸をして!」

ジョンは、俺を拝みながら泣きながら俺に懇願している。


「大丈夫だよ、俺は無慈悲な第六天魔王様だから」

そりゃあ、静かな口調で言ってやったさ。あの時の俺は、ものすご~く腹が立ってたからな。全部、ジョンのせいだから仕方がないだろう。悪いのはジョンだ!

だけどもその口調のせいで、本当にジョンが泣きだしてしまって。


「マジすいません! マジで、悪かったと思ってます!」

「しらねーな」

「調子に乗りすぎました! 本当に、しゅいましぇん・・・」

ヤバイよ、涙、鼻水をボロボロ流してるんだから。そりゃあ俺がもし、相手をいじめるのが好きな奴だったらとても気分がいいだろうが、俺はこう見えても正々堂々として。人に対しては優しくありたい人間だからなぁ・・・。ちょっとだけ、やりすぎちゃったかなと反省をしてみたりしてみた。


「・・・」

「のびゅにゃがさま?」

ここまで泣かれるとは思わなかったからな。泣く前に仕留めるつもりだったしな・・・。


「・・・もう、いいよ」

「ふぇっ?」

俺が、もう終わりにしよう宣言をすると、ジョンはものすごく驚いた表情をして、泣くのをやめた。


「ちょっとだけやりすぎた。お前が九割方悪いが、俺も少し反省している」

「・・・ちょっとだけじゃないですよ」

「やっぱし、つぶしてやろうか?」

「嘘です! 本当に許していただいて、ありがとうございます!」

「よろしい」

とりあえず、俺は笑ってやった。ジョンは引きつった笑顔で、それに答えた。

こんなジョンの笑顔を見るのは、初めてだ。少し、征服した感じがあっていい気分だ。



――――



包丁をかたずけて、俺はジョンの前に座り、こう言った。


「とりあえず、“いいもの”って何だよ?」

今回の争いのきっかけである、“いいもの”とは何なんだろうか? それが一番の疑問だった。


「・・・やっぱり、見たいですか?」

ジョンは、すごーく反省した顔で聞いてくる。


「当たり前だろ」

「そうですか・・・」

ジョンは、今度はまたすごーく悩んだ表情をしている。


「なんだよ、だめなのか?」

「だめじゃないんですけれども・・・う~ん・・・・・・」

「いいから、見せろよ!」

ちょっとだけ大きな声を出してみた。するとジョンはビクッ!としてこっちのほうを見てきた。

そして、震えた声でいってきた。

「今すぐに! 今すぐにお見せいたします!!」


―――


ジョンはてれび、というものに何かを差し込んでいく。この光景は、何度か見たことがある。

「“いいもの”っていうのは、でーぶいでーのことなのか?」

この光景は、いつもジョンが見たい(見せたい)でーぶいでーを再生?するためにする光景だ。でーぶいでーは確かに面白いだって絵が動いたり、音が鳴ったり、本当に面白いものだ。だけれども、いつものでーぶいでーならジョンは、普通に、こんな回りくどいことをせずに見せてくるはずだ。


俺が聞いてみると、ジョンは「ちっちっちっ」と言って、指を振っているではないか。


「なんだよ、その動きは?」

非常に気になる動きだ。非常に気になり、腹が立つ動きだ。深呼吸、深呼吸・・・。


「まったく、ものを知らないとは本当に恥ずかしいことですね」

その意見には同感だが、もしその言葉を俺に言っているのであれば、俺はそれ相応の対応を取らなければいけなくなるだろう。

「じょ、冗談ですよ!」

「自然に俺の心を読み取るなよ」

「すいません」


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