第二百五十八巻目B 脱線していく気持ち
外にうつるのは広い更地で、着いたといわれるところにはおよそ建物と呼ばれるものは存在していなかった。
「なんだ? ありあけありーなって言うのは?」
「東京オリンピックで使われる建物のことですよ……と、言っても今のところは計画段階何ですけれどもね」
「?」
はっきりと言って家入の話は訳が分からない。もちろん訳が分かったとしても、その深い意味を汲み取ることは出来ないと思う。
家入は私についてくるように言って車から降りた。私は家入の言葉に従い車を降りた。どうにもここは駐車するスペースでもないし、もっと言うと私は職場に向かうことは出来るのだろうか。すでに出勤時間はすぎているし、ここがどこかしっかりと認識も出来ていないし、というかなぜここに連れてこられたのかも分からない。いったい、何がどうなっているのだろう。本当に訳が分からないよ。
立ち入り禁止と書かれた柵の横にある扉に鍵を差し込みそれを開けた。そして笑いながら、「さぁ、行きましょう!」と言い家入は意気揚々とその更地の中に入っていった。
「なぁ……家入よ」
「なんですか、リーダー?」
「私は何でこんなところに連れてこられたんだ?」
「……さっき言ったじゃないですか、秋葉原でのあの状況の説明をするために来たんですよ」
「何もないこんな更地で、何を説明するというんだ?」
「何もない……ははっ! まぁ、もう少し歩けば分かりますよ」
もう少し歩けばわかる? 全く持って不思議な話だ。
――――
「ほら、あそこにありますでしょ?」
「……本当だ」
家入は指をさして私に言ってくる。確かにそこには入り口というには少々殺風としているが、階段と言うべきものが用意されていた。その階段は下るためのもので、下にも道が続いているようだった。
「とりあえず、まだしっかりと整備をしていませんから気をつけて歩いてください」
家入が言う感じとすれば、私はここを下るらしい。ここを下って何になるというのだろうか。




