第二百五十一巻目B 酒の魔力
人混みの中に手を振る男の姿があった。顔を認識してみるが誰だか分からない。
「リーダー!」
男は大きな声で私を読んでいるようだが、どうにも私はその人物に心当たりが・・・・・・あっ。
私が今思い出したのは昨日の記憶だ。昨日の夜、私は沖縄料理店で飲んでいた。そうすると、杉原と鈴木がやってきて三人でチャンプルなるものをつまみながら泡盛を呑んでいた。一時間ぐらいたった後、三人の和気あいあいとした空気に突如として客人がやってきたのだった。
「あっ、鈴木さん!」
「……ん?」
ほろ酔い調子の鈴木は、声の方に向いた。私と杉原もその声の主の顔を確認した。当たり前だが私は知らない顔だった。杉原もそんな感じだ。
ただ、鈴木はどうやら知っているらしく顔を見るたび「おぉ! 久しぶり。君がこんなところにいるなんて珍しい」と言葉を掛けた。
「いやいや、鈴木さんこそここで何をやってるんですか?」 男は半笑いで聞いた。
「私は今、他の男たちに夢を届ける仕事をしているよ。君こそ、今は東北で教鞭をとっているのでは?」
「私の任期は昨日で終了しまして、今日は母校に立ち寄り遊んできたというわけです」
ニコニコと会話は弾んでいき、鈴木さんが「この人もこの席で呑ませてもいいだろうか?」と聞いてきた。もちろん私と杉原教授は断る理由もなかったので「どうぞどうぞ」と言って、四人での飲み会の始まりとなった。やはり、酒というのは大勢で呑んだ方が味が引き立つ。
席につき、仕切り直しにびーるを注文して乾杯の音頭をとる。そして、見ず知らずの相手と会話は弾んでいき鈴木さんが「あっ!」と言って、会話を一時中断させたのだった。
「そう言えば彼の紹介をしていなかったね」
紹介していないのに、なぜ会話が弾むのか。それこそ酒の魔力と言えるだろう。




