第二百四十八巻目A 他人の空似
今日から毎日投稿に戻します。
なので土曜日は特別編の日になります。
今後ともよろしくお願いします
その後私とジョンは監督に連れられて劇場の方に向かった。私が消えたこともあって今日のステージは中止になったらしい。ジョンがみんなを集めて説明をしている間、私は一日ぶりに会うロリポップのメンバーと談笑をしていた。
「みきぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・・」と鼻水をたらして泣きながら抱き着いてくるのは戸区で、「心配したよぉ」と言うのは吉見。私の顔を見ながら「お腹が空いてきた」と言うのは石見と村井だった。私は常識人でないと自負はするけれども、この四人は私以上に狂った連中で、このロリポップと言うのはアイドルグループの中でもかなり異質な存在なのかもしれない。これでも本番になればアイドルの顔を出来るのだから、やはり四人もプロのアイドルなんだろうな。
「昨日は本当にごめんね、いきなり休むことになっちゃって」
「別にみきみきが休みたくて休んだわけじゃないんでしょ? 仕方がないよそれは」
四人の中でもまだ常識人に近い村井はこう言う風に言って、私のことを肯定してくれる。こういうふうに優しくしてくれるのも、このメンバーだからこそなのかもしれない。
「だけれどもみきみき」
「なに?」
「昨日は本当に何をしてたの?」
村井は常識人に近いがゆえに、理由の核心的部分をついてしまうのだ。それ以外の三人は村井がこう質問するまでずっと私を料理するならどんな風に料理をしたいかについて話していた。戸区曰く、「やっぱりみきはシチューにした方がいいよ!」と言い二名は「確かにその通りだ」と納得をしていた。正直に頭がおかしいと思う。
「昨日は・・・・・・」
ここで私は言葉に詰まる。なぜなら私が本当に体験した事実を村井に伝えても村井は「訳が分からない。みき、頭大丈夫?」と返すに違いないからだ。
「……」
「どうしたの、みき?」
嘘が思いつかない。でもここで何か言っておかなくては……。
「えっと・・・・・・さっきジョンが言った通りジョンに使われていたというか・・・………そんな感じ」
とりあえず言葉を濁した。ここで時間をかけて嘘をつくよりかは言葉を濁して後でしっかりと説明をした方が私にっても村井にとってもいいはずだからだ。
「……分かった! じゃあ、とりあえず今日はお休みになったからさみんなで何か食べに行こうよ!」
村井は謎の切り替えが出来るから、そこはすごいと思う。例えば赤ちゃんの話をしていたと思えばいきなり死について語りだしたり、魚屋さんが熱心に「この魚はおいしいんですよ」と説明をしてくれているのに、その魚屋さんに対して「そうですよね・・・・・・牛肉って思考で素よねぇ」と訳の分からない返答をする。こう言うところが村井の頭のおかしいというのの所以だ。
兎にも角にも食事をすることになった私たちは、ジョンが熱心に説明している間四人は私服に着替え直し、私はその着替えるのを待っていた。
「みきぃいいーっ!」と一足先に着替え終わった戸区が私に抱き着いてきた。とりあえずよしよしと頭を撫でてやり「くぅーん」と言わせておいた。
「ねぇ、美希」
「なに?」
「今日来て帰ったお客さんが言ってたんだけれどもさ、何だか美希のことを昨日見たらしいよ?」
「えっ?」
昨日見たとか絶対にありえないはずなんだが・・・・・・。
「なんか近くの居酒屋で泡盛を飲み続ける美希の姿が見えたらしいよ」
「私・・・・・・泡盛なんか飲んだことないよ」
「だよね・・・・・・でも、あのお客さんが嘘をつくとは思えないから・・・・・・他人の空似なのかな?」
まったく、他人の空似とは恐ろしいものだ。私が泡盛を飲むはずがない。飲むとしても、芋焼酎ぐらいだ。
次回からはBに入ります。美希のパートから偽美希のパートになります。




