第二百三十八巻目 QRコード
ガチャッ
久々に聞く、機械の鈍い音。押し込む際に聞こえるあの音が、招き猫から聞こえてきた。
何かのロックが外れてそう言う音が鳴ったのだと思うけれども、招き猫の外見変わることなく少しがっかりした。何か変形して面白いことになると思っていたから、本当にがっかりだ。ただ、いつまでも持っているわけにもいかないので、とりあえず玄関に持っていきものが置けるスペースに招き猫を置くことにした。そしてその後空いたタンスの上に清州城を置いた。現代風にアレンジされているとはいえ中々かっこいい城だ。さすが俺の城といったところだろう。
その後俺は、その清州城のプラモデルを眺めながらプラモデルを入れていた押し入れの奥に隠していたとっておきの酒を取りだして一杯やってみた。これは中々おつなものだからたまにはやってみたいと思う。やはり好きなものを合わせてやるととても楽しくなってしまうな。ただ、楽しくなったとしてもこれからどうやって過ごす計画、メールの内容が理解できたとかそういう事を考える事は出来なかった。むしろどんどんとそう言う事を忘れていった。いや、楽しいことというのは恐ろしいことだ。
少し酔いが回って来て気分もよくなってきたので、とりあえず一つだけ考える事にしてみた。これ以上何も考えずただ心の気持ちよさだけに清州城を見ていると廃人になってしまいそうだったので、とりあえずメールの内容について考えてみることにしてみた。せっかくの時間なのだからじっくりと考えてやろうと思う。
まず、一つ目のメールである『トウキョウバンパク/タイムズエリアニテ/108ゴウキデマツ』という内容の文、これは一体どういうことなのか。いや、この分に関してはまだ理解ができる部分が多い。全てカタカナで記述されているから分かりにくくなっているだけで、とても単純な文章だ。トウキョウバンパクは、東京万博のことだろうし、タイムズエリアニテと言うのもきっと東京万博のタイムズエリアと言うところでと言う意味なはずだ。
問題は最後の部分である108ゴウキデマツだ。漢字に直して108号機で待つという感じだろうけれども、漢字に直したせいでさらに分からなくなる。
文を通して書くと東京万博のタイムズエリアの108号機で待つとなるが、それにしたって訳が分からない。とりあえず、これはしっかりと文に直せたと思うのでこれ以上は保留にしておく。
次に送られていた『スベテハ/チュウオウカガクケンキュウカブシキガイシャ/フジマキガモツ』は、漢字に直してもしっかりと意味が分かるが理解できない文である。きっと何かパーツが集まった時に理解ができるタイプのものだろう。上記もそのはずだ。
そしてメールの件名である『ライシュウノゲツヨウビマデニスベテヲアツメヨ』。いったい何を集めろと言うんだ?
さらによく分からなくしている物、それはこのメールの差出人だ。杉原さん……神様がなぜ、こんな時代に……? 過去から送られてきたものとしてもなぜこんな風にカタカナで書く必要があったのだろうか? まぁ、どちらにせよまだまだ理解することは難しいようだ。酔った状態でこんなことをしたのが間違いだったのかもしれない。
コトン……
玄関のところで何かが落ちる音が聞こえた。玄関に言ってみると、招き猫が持っていた小判が置いていた。
「全く……なんで小判だけが落ちてるんだ?」
今晩を元の場所に戻してやろうと小判を拾い上げた。玄関は暗いと不便なので明るくしておいた。ふと、招き猫の小判の裏側ってどんな感じなんだロウと言う不自然な考えが浮かび、俺は小判の裏側をのぞいた。
「ん?」
するとそこにはなぜか、白黒のQRコードが貼られていた。
やることがなく、とりあえずそれをスマートフォンで読み取ることにしてみた。
そして、読み取った先に出てきたのはテキストのみのページだった。そして、それを読んで分かったことがある。
「なるほどぉ……これはいいものだな」
これはどうやらジョンの置き土産だったらしい。俺でも理解できる感じで書いているなんて、奴にしては珍しい。さらに言うとこれはどうやら今のジョンではないらしい。




