第二百三十七巻目 清州城
理解できないことが何個も続いていくなんて、俺の人生も本当に不思議な人生だ。自分の夢をかなえるために、親父の意思を継ぐために天下統一をしようとした。あと一歩、王手まで進んだのにみっつーに燃やされる。死んだと思えば、未来2015年に飛ばされて変なアメリカ人に出会ってアルバイトをすることになる。それで普通に生活していたら、いきなり今度はもっと未来の2115年に飛ばされた。もう、訳が分からない。もし神様が俺の人生をいじっているんだったら、少し発想が突飛過ぎやしないだろうか。もう少し慎重な神様に人生というものを預けたいものだ。
どちらにせよこのメールを詳細に理解することが出来ないので、とりあえずメールのことを一度忘れることにした。
忘れるためにしたこと。それとは、アルバイトをするまでは2015年の時にはやっていたことで、アルバイトをしてからは買ってきたはいいもののやっていなかったこと。時間もかかり、集中する必要もある。かといって集中しすぎると失敗してしまう。
つまり、俺が今からやろうとしているのはプラモデルの製作だ。これほど非生産的な、生産行為はないはずだ。そして、頭の中をリセットすることが出来る。頭の中は全部作っているプラモデルのことだけになり、いずれは素敵な素敵なプラモデルが出来上がることだろう。うれしい限りだ。
プラモデルが置いてある場所は、俺の部屋の押し入れでここに来てからの感じで言うとあると思われる。俺は立ち上がり、少しに奴いた顔で押し入れの前に立ち扉を開いた。
「やっぱり埃をかぶっているけれども、きれいに残っているな」
腐食することなく、カビることもなくきれいにプラモデルのキットが入っている箱が山のように積み重なっていた。
俺は一番上のプラモデルを手に取り、ほこりを払ってニヤッと笑う。
「まったく、どこでこんなものを見つけたんだか」
手にしたプラモデルは日本の城シリーズ清州城。少し違う感じもするが、現代風にアレンジされていて中々いいんじゃないだろうか。
早速俺は、家においてあった新聞紙をリビングに広げその上に座りキットを広げた。そして、俺は「よし」と一声出して、製作を始めた。
―――
どれくらい時間が経っただろうか。自分の集中力の高さには本当に恐れ入るものがある。これほどの集中力があったのだから、火災が起きたらすぐに分かるとかそういう能力があれば最強だったのになぁ。
だけれどもその集中力のおかげで、結構綺麗な作品が出来上がって俺はかなり感動している。ちょっと涙が出そうだし、日々の疲れが取れた気もする。いやぁ、本当にいい気分だ。
「これはぜひ、いいところに飾っておきたいな」
そんな欲望が俺の心を支配して、そして俺は行動を始めてしまった。一番これを飾って生える場所は少し高い、だけれどもそれと言って高すぎない場所。つまりは、低い位置のタンスの上が一番いい。だけれども、今その場所には招き猫の置物が置いてあるので、まずそれをどけることにする。
「うっしょっ……と」
小さい割にはなかなか重たい置物だ。玄関の方に置こうと思うのだが……なぜだか右手で持っている方に違和感を感じた。何だかこのまま押しこめるような感じがして……。
「押してみようか」
せっかくなので俺は、招き猫の押せそうな部分を押し込んでみることにしてみた。今の俺には好奇心が最優先になっている。つまり自制心なんてものは機能してはいなかった。




